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シェア型書店「猫の本棚」
170の棚それぞれが主張する個性に触れる

猫の本棚の店内画像1

日本を、いや、世界を代表する“本の街”である東京神田神保町。100年を超える歴史を持つこの地には、200店舗近い書店・古書店が軒を連ねている。それぞれの店に特徴があり、他では手に入らない珍しい本に出会える機会も多いことから、東京やその近郊だけでなく、全国から本好きが集まってくるスポットだ。

そんな神保町に、今年1月20日、一風変わった書店が新たに加わった。それが今回紹介する「猫の本棚」。本好き、映画好き、猫好きのオーナーが運営する、まるで隠れ家のようなこぢんまりとした店だ。店内は国内外のアンティークなどで装飾されており、オーナーのこだわりとセンスの良さがうかがわれる。

猫の本棚の外観・看板の画像

シャンデリアや欄間など西洋・東洋のアンティークが飾られたシックな店内には縦が約35cm、横約30cmの本棚がずらりと170並んでいる。そのひとつひとつが、それぞれ別の書店。実は「猫の本棚」はシェア型書店であり、170の書棚を棚主(店主)に貸し出し、棚主はそこに好きな本(CDやレコード、DVDやビデオなどの音楽・映像メディア、自作のアート作品なども可)を並べて自分なりの書店を開くというシステムなのだ。

猫の本棚の店内画像2

活字離れが進み、“街の本屋さん”が減りつつある昨今だが、「猫の本棚」にある170の書棚の多くはすでに稼働中である。もしかすると「昔から書店経営に興味があった」という人が少なくないのかもしれない。35×30cmのスペースそれぞれは、借主が営む小さな書店のようなものだ。棚の上部に自分で命名した「店名カード」を、下部には棚の特徴を説明する「解説カード」が飾れるよう、スタンドを常備。さらに工夫を凝らした独自のPOPなどで棚を彩ることもできる。個性的な書店がずらりと並ぶ様子は圧巻だ。ネット書店全盛となっても、実際に本を手に取ったり、装幀を眺めたりするリアルな体験は何ものにも変えがたいもの。本好きが集まるエリアだけに、棚主と来店者、棚主同志、そして来店者同士の間で、きっと素敵な出会いもあるだろう。

わずかではあるが、現時点でも書棚の空きはある。必要なコストは、入会金11,000円(税込)と1棚あたりのレンタル料の月額4,400円(いずれも税込/レンタルは3ヶ月から)。本の街・神保町に自分の書店を開くという経験はそう簡単にできるものではない。興味がある方は、「猫の本棚」の公式サイトで詳細をチェックしてはいかがだろうか。

猫の本棚の店内画像3

オーナーの水野久美氏が大の猫好きだけあって、店内には猫にまつわるグッズ類がたくさん飾られている。また、猫の絵本、猫の絵ハガキから招き猫まで、猫をモチーフにした商品を販売。「猫の本棚」のオリジナルグッズ(トートバッグ、ハガキ、ステッカー)も揃っている。それらの売り上げの一部は、保護猫活動の支援のために使われるとのことだ。

猫の本棚に並ぶ猫グッズの画像

店内には「猫の本棚」オリジナルグッズも並ぶ

実は、「美術屋・百兵衛ONLINE」を運営している株式会社麗人社と「猫の本棚」には少なからぬ関わりがある。「猫の本棚」の共同プロデューサーを務める樋口尚文氏は、2013年に公開された「インターミッション」や、2019年公開の「葬式の名人」の映画監督でもある。「インターミッション」には劇中で重要な役割を果たす絵画が登場するが、それを描いたのはこの映画の作曲を担当した菅野祐悟氏。同氏が以前から麗人社の代表と面識があったことから、映画公開時に麗人社が経営するREIJINSHA GALLERYで個展を開催することになったのだ。また、この個展のイベントとして、樋口氏、菅野氏らによるトークショーも催されている。

猫の本棚のオリジナル・キャラクター画像

一方、看板などに使用されている「猫の本棚」のメインキャラクター(写真上)は、REIJINSHA GALLERYの取り扱い作家である川邊りえが描いたもの。以前、川邊作品に登場する猫を気に入った水野、樋口両氏は、その絵を購入している。今回「猫の本棚」を立ち上げるにあたって、水野氏の愛猫ドーラをモチーフにしたキャラクターを川邊に描いてほしいと、二人はあらためて依頼したという。

ちなみに麗人社は「猫の本棚」の棚主にもなっており、現在そのスペースではWebマガジンに移行する前の雑誌「美術屋・百兵衛」を見ることができる。

猫の本棚の店内(麗人社の棚)画像

麗人社の棚もあり、紙媒体時代の「美術屋・百兵衛」が並んでいる

文化的でスタイリッシュな「猫の本棚」の空間は、雑誌のインタビューなどの取材場所や配信番組の収録の場として利用することも可能だ(使用料は1時間7,700円/税込)。すでにBS局やYouTubeチャンネルの番組収録もおこなわれているので、目にしたことがある方もいるのではなかろうか。

モニターを通して雰囲気を感じることもできるが、やはり現地に足を運んで五感を使って「猫の本棚」を体験してほしい。特に本好きの方、猫好きの方であれば、170の棚それぞれが主張する個性の中で心地よい時間を過ごせるはずだ。

[information]
猫の本棚
・住所 東京都千代田区西神田2-2-6-102
・時間 13:00~18:00
・定休日 月・火・水曜日
・交通 JR「水道橋」駅より徒歩6分、東京メトロ「神保町」駅より徒歩5分
・URL https://nekohon.tokyo
※購入に際しては、クレジットカードもしくは電子マネーのキャッシュレス決済のみ対応

川邊りえの作品ページはこちら(REIJINSHA GALLERY公式サイト)
https://www.reijinshagallery.com/product-category/rie-kawabe/