展覧会

小磯良平展―幻の名作《日本髪の娘》

 

会場:神戸市立小磯記念美術館 会期:1/10(土)~3/22(日)

チケットプレゼント

展覧会ポスター
気品に満ちた女性像で知られる洋画家・小磯良平。
その幻の名作《日本髪の娘》に、神戸で出会う。

日本を代表する洋画家・小磯良平(1903~88)は、人物画とりわけ気品と静謐さに満ちた女性像で多くの人々に愛されてきた。そんな小磯の画業をたどる上で欠かすことのできない名作が《日本髪の娘》(韓国国立中央博物館蔵)である。この作品は、神戸の山本通にあった戦前の小磯のアトリエで描かれ、1935年の「第一回第二部会展」に出品されて注目を集めた。時をおかず、ソウルにあった李王家美術館(現・国立現代美術館別館 徳寿宮館)が購入。海を渡ったところまでは分かっているが、その後の消息は判然とせず、幻の作品と考えられていた。
2008年、韓国国立中央博物館が李王家美術館コレクションの洋画を特別展「日本近代西洋画」にて展示したことで、《日本髪の娘》が「再発見」されることになった。神戸市立小磯記念美術館ではそれ以降、《日本髪の娘》の里帰り展示を念願してきており、今回やっとそれが実現する。

《日本髪の娘》はモダンなデザインの訪問着をまとい、日本髪のかつらをつけて礼装した神戸の令嬢を描いた作品。当時32歳であった小磯は、大阪の百貨店・髙島屋が開催した着物の展示会「百選会」を訪れ、この着物と出会い、高価をいとわず自身で購入して制作に臨んだ。
この展覧会は、第二部会展以来、約90年ぶりに日本で展示される《日本髪の娘》と、神戸市立小磯記念美術館の所蔵品を中心に小磯良平の画業を振り返り、新たな視点で小磯芸術を捉え直す機会となる。また、李王家美術館の洋画コレクションを日本で紹介するという近代洋画研究にとっての画期となるはずだ。さらに2008年の報道以来、《日本髪の娘》に関心を寄せてきた小磯芸術の愛好者にとっては、大きな喜びとなるだろう。

小磯良平《日本髪の娘》画像

小磯良平《日本髪の娘》 1935年 韓国国立中央博物館蔵

展示構成(出品作品数:約100点)

第1章:小磯良平の画業
小磯良平の描く婦人像は「清らかで気品漂う」と形容されるが、その85年の生涯を振り返ると、常に古びずモダンであろうとした「アヒルの水かき」とも言える挑戦と研鑽のありようが見えてくる。神戸のハイカラ文化を体現するセンスと卓抜なデッサン力に裏打ちされた、暗い影を感じさせない純度の高い諸作は、常に高雅さを目指した努力によるものなのだ。小磯良平は大戦でアトリエと多くの作品を失ったが、戦後も次々に新しい表現を模索することで、具象絵画の雄であり続けた。この章では、彼の専門館である神戸市立小磯記念美術館ならではの切り口でその画業が紹介される。

小磯良平《青衣の女》画像

小磯良平《青衣の女》 1929年 神戸市立小磯記念美術館蔵

小磯良平《森》画像

小磯良平《森》 1965-74年 神戸市立小磯記念美術館蔵


第2章:小磯良平の和装婦人像

小磯良平が描いた和装婦人像は割合としては多くはない。和装婦人像には《日本髪の娘》を筆頭に、モデルと着物、ポーズの選択から細部の小物に至るまで小磯の美意識が強く現れている。小磯はモデルの容貌、姿態だけでなく、コスチュームとしての着物からその女性の年齢、気性、趣味さえも表現しようと試みたのだ。
戦後、小磯は1958年から60年代にかけて京都に通って舞妓を描いた。さらに川端康成作『古都』の新聞挿絵を担当したことから、和装の労働着をまとった大原女、白川女も制作している。

小磯良平《舞妓》画像

小磯良平《舞妓》 1961年 武田薬品工業株式会社蔵

小磯良平《大原女》画像

小磯良平《大原女》 制作年不詳 神戸市立小磯記念美術館蔵


第3章:《日本髪の娘》と第二部会

波乱の少ない小磯良平の画業の中で大きな画期といえるのは、1935年におこった「帝展改組」に反対して、帝展無鑑査の有志たちが結成した在野の「第二部会」に参加したこと。心静かに制作をしたいという、芸術家の創造の自由を希求するこの集まりは、小磯をふくむ「新制作派協会」の結成(1936年)につながっていく。《日本髪の娘》は、この第二部会に出品された節目となる作品である。
この章では第二部会展以来、およそ90年の時を経て里帰りした《日本髪の娘》が展観される。また、同じく第二部会展に出品された《踊り子》(武田薬品工業株式会社蔵)が《日本髪の娘》と約90年ぶりに再会を果たすのだ。

小磯良平《洋和服の二人》画像

小磯良平《洋和服の二人》 1933-34年頃 神戸市立小磯記念美術館蔵

小磯良平《踊り子》画像

小磯良平《踊り子》 1935年 武田薬品工業株式会社蔵

《日本髪の娘》について

斬新なデザインの着物をまとい、桃割れの鬘をつけた礼装の娘が、お太鼓を気づかうような姿勢で椅子に腰かけている。娘は左のてのひらに右手の指を立て、何か物思いにふけっているように見える。この着物は昭和10年(1935)の大阪・髙島屋「第五十三回 秋の百選会」に出品された「流線美式天象りゅうせんびしきてんしょう美光縮緬ちりめん訪問着」と名づけられた逸品で、展示会に小磯自身が出向いて高価をいとわず購入した。黒地に吹き流れるように上から下へ青、赤、緑、オレンジ、菊唐草文を施した白の帯が拡がっていく抽象性の高いデザインで、画面に清冽な印象を生み出し、娘の内面のセンスの証ともなっている。この《日本髪の娘》は、神戸港を見下ろす山本通にあった戦前の小磯のアトリエで描かれた。
モデルは上田種子たねこという小磯に絵を習いに来ていた神戸の令嬢で、知的なモダンガールとして小磯作品にしばしば和装で登場する。この作品は1935年、在野の「第一回第二部会展」に賛助出品された1点で、官展の美意識に新風を吹かせようとする意気込みが小磯にあったものと推測される。そして「第二部会展」から時をおかずに、李王家美術館のコレクションとなって海を渡った。発表当初から評価が高く、戦前の小磯良平の代表作と考えられていたが、所在の詳細が判然とせず「幻の作品」となっていた《日本髪の娘》。日本では、およそ90年ぶりの展示となる

千總《流線美式天象》画像

千總《流線美式天象》(復刻)  2014年 髙島屋史料館蔵

[information]
小磯良平展―幻の名作《日本髪の娘》
・会期 1月10日(土)~3月22日(日)
・会場 神戸市立小磯記念美術館
・住所 兵庫県神戸市東灘区向洋町中5-7
・時間 10:00〜17:00(入館の受付は16:30まで)
・休館日 月曜日(1月12日、2月23日は開館)、1月13日(火)、2月24日(火)
・入館料 一般1,200円、大学生600円、高校生以下無料(学生証、生徒手帳などの提示が必要)、神戸市在住の65歳以上600円(住所と年齢が証明できるものの提示が必要)
※障がい者手帳またはスマートフォンアプリ「ミライロID」等を提示の方は無料
・TEL 078-857-5880
・URL https://www.city.kobe.lg.jp/kanko/bunka/bunkashisetsu/koisogallery/index.html