聞き手・文/REIJINSHA GALLERYスタッフ

《間風景に在る》2024年
岩絵具、水干絵具、胡粉/石膏、寒冷紗、パネル 250.0×400.0cm
2月21日(金)からREIJINSHA GALLERYにて「TUAD ART-LINKS 2025 東脇佳菜 あの日に還る」が開催される。
東北芸術工科大学の卒業生支援プログラムとして10回目の節目を迎える今回が自身初の個展となる日本画家・東脇佳菜。どこか懐かしさを覚える情景と色合いに込められた想いを探るべく、同ギャラリースタッフが話を聞いた。
◆今、ここでしか描けないものを
── アートに興味を持たれたきっかけは何でしょうか?
物心ついた頃から絵を描くことが好きでした。「楽しいことは自分で見つけなさい」という両親の教えから、自分で見つけた「楽しい」が絵を描くことでした。その後、朝顔やペンから色を取って描く方法や混色などの様々な技法を両親や保育園の先生、絵画教室などで教わり、表現方法が増える楽しさと絵を褒めてもらえた時の嬉しさを知ったことで、アートに興味を持つようになりました。
── 大学入学時に日本画を専攻されたのはなぜですか?
小学生の頃に通っていた絵画教室の先生が日本画家だったことが日本画に興味を持ったきっかけです。その後、岩絵具をはじめとする天然の資源を由来とする画材の美しさに惹かれ、水や鉱物と対話しながら自分の感じている世界を展開させていく絵を描いてみたいと思い、日本画を専攻しました。
── 東北芸術工科大学はどんな場所ですか?

東北芸術工科大学周辺の様子
雄大な自然がすぐそばにあり、その地で描くことの意義や面白さ、表現の様々な可能性を感じられる場所です。また、私の所属していた日本画学科では「絵画制作の本質は自らの眼と手を使って本質に迫ろうとする姿勢を養い、技術の修得と共に自由で独自の多彩な表現を追求すること。対峙する対象や環境と真摯に向き合い、今ここでしか描くことのできない作品を探求していきましょう。」という教えのもと、先生方の手厚いご指導を受けながら写生を軸に自分の表現を追及することができました。
◆ 離れた場所で
── ご出身の神奈川から東北芸術工科大学のある山形へ移住されたことで、何か制作に影響を受けたことはありますか?
自然が織りなす偶然の美しさからインスピレーションを受ける環境で制作をすることで、使用する色の幅が増えたように思います。また、山形の皆さんのあたたかい応援に支えられて、私自身の活動の幅やアートに対する視野も広げることが出来ました。

「紅花道中プロジェクト 」ワークショップの様子
──現在は同大学の大学院芸術文化専攻複合芸術研究領域に在籍中とのことですが、ここではどんなことに取り組んでおられますか?
現在は、思考の過程や絵を描く楽しさを共有したいという想いのもと、自身の制作だけでなくワークショップを企画して開催しています。アートが好きな人や、アートに興味があるけれどどのように関わって良いのかわからないという方、絵を描いている人は制作をしている時に何考えているのだろうと不思議に思っている方など、様々な方々と一緒に何かを作ることでアートの可能性を追及したいと思っています。
◆繋がるために描く

《間風景に在る》制作風景
──制作をするうえで意識されていることはありますか?
作品が独りよがりのものにならないように意識しています。他者が入る隙を作るために、自分自身の作品の見え方に常に気を付けています。
制作は自分の内側の感情と付き合いながら、いかにその内側を外に広げていくかだと思います。自分の目で見てきたものや感情を他者に伝えることは難しいですが、少しでも伝わるように、また、見てくれる方の思いが作品に溶け込めるように制作をしていきたいと思います。
──影響を受けたアーティストはいますか?
奥村土牛とピーター・ドイグに影響を受けています。
奥村土牛は、小学校3年生の頃に絵画教室の先生と展示を見に行ったことが、日本画の世界に興味を持つきっかけとなったアーティストです。中でも『鳴門』を鮮明に覚えており、私もこの作品のように鑑賞者を惹きつける作品を描きたいと思いました。
また、ピーター・ドイグは、ミステリアスな世界観が好きです。見たことない景色のはずなのに、既視感を感じさせる彼の作品は、「ノスタルジー」や「郷愁」を表現したいと思ったきっかけにもなりました。
──今いただいたご回答や制作に関するこれまでのコメントを拝見すると、度々「ノスタルジー」がキーワードとして登場しますね。どんな理由があるのでしょうか?
目まぐるしく変わる日々が変化していく中で、ふいに郷里を懐かしむ感情が胸に湧くことがあります。人によってノスタルジーを感じる場所や時は異なるけれど、絵にして伝えることでその感覚を共有できるのではないかと考えています。誰も行ったことがないのにどこか懐かしさを覚える場所を描く。それが現在の制作の主軸です。
◆個展「あの日に還る」について

《小手島》2024年
岩絵具、水干絵具、胡粉/石膏、寒冷紗、パネル 116.7×116.7cm
──本展のテーマを教えてください。
日常的な帰宅を意味する「帰る」ではなく、本来の状態に戻ることを意味する「還る」を個展のタイトルにつけ、「あの日に還る」にしました。人によって還りたいと思う場所や状態は異なると思いますが、私の作品がいつでも還れる場所になれたらという想いでテーマを決めました。
──今回が初めての個展と伺いました。ご来場になる皆様にメッセージをお願いいたします。
この度REIJINSHA GALLERYにて、私にとって初となる個展を開催させていただける運びとなりました。
私の作品を一人でも多くの皆様に見ていただきたいという思いで、様々なサイズの作品に挑戦しました。生まれ育った神奈川県の他に、大学のある山形県、アーティスト・イン・レジデンスで訪れた香川県で出会った方々や思い出をモチーフに描いています。ぜひ会場に足を運んでいただけますと幸いです。私の心象風景や、そこに流れてきた様々な価値観と感性が響き合う様子をご覧ください。
──今後挑戦したいことはありますか?
私の作品を見ていただける機会を増やしていきたいです。また、制作をする過程での出会いを大切にしながら、私の目を通して見た景色や想いを伝えていきたいと思います。
生まれ育った地から離れ、雄大な自然の中で彼女が見つけたのは、還りたいいつかの風景だったのかもしれない。それは鑑賞する私たちをも温かく迎え入れてくれることだろう。
「TUAD ART-LINKS 2025 東脇佳菜 あの日に還る」は2月21日(金)から始まる。
[Profile]
東脇 佳菜 Kana Towaki
2000年
神奈川県生まれ
2021年
平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019(京都市京セラ美術館)
2022年
サンサンカクカク東北芸術工科大学日本画コース2年進級制作展最優秀賞受賞(東北芸術工科大学/山形)
東北画は可能か? -千景万色-(原爆の図丸木美術館/埼玉)
東北画は可能か? -生々世々-(Kaikai Kiki Gallery/東京)
紅花道中プロジェクト(勝因寺/山形)
物語は唐突に(悠創の丘/山形)
森とアートの推進事業 -木のネームプレート作り-(羽黒・芸術の森今井アートギャラリー/山形)
2023年
第84回河北美術展新人奨励賞受賞(東北福祉大学ギャラリーミニモリ/宮城)
みちのく現場考 -東北描キ巡リ、芸術想ヒ巡リ-(小津ギャラリー/東京)
梅津五郎芸術賞第4回全国絵画公募展白鷹町長賞受賞(白鷹町文化交流センターあゆーむ/山形)
2024年
東北芸術工科大学卒業・修了制作展[東京選抜](東京都美術館)
東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース卒業
第73回日本画新興展招待作品優秀賞受賞(東京都美術館)
dadacha展 東北芸術工科大学日本画4人展(銀座スルガ台画廊/東京)
HOTサンダルプロジェクト作品展覧会2024 未来の収穫祭(丸亀市生涯学習センター/香川)
三瀬夏之介 ゆらぐ絵画 -潜行、氾濫、上昇、斜行、迂回-(山形美術館)
2025年
個展「あの日に還る」(REIJINSHA GALLERY/東京)
東北芸術工科大学大学院芸術文化専攻複合芸術研究領域在籍中
現在、山形県にて制作
・Instagram towaki_kana
[出展予定]
-東北芸術工科大学卒業生による- 手跡 -東北から紡ぐリアル-
・会期 2025年2月24日(月)~3月1日(土)
・会場 美岳画廊
[Information]
TUAD ART-LINKS 2025 東脇佳菜 あの日に還る
・会期 2025年2月21日(金)~3月7日(金)
・会場 REIJINSHA GALLERY
・住所 東京都中央区日本橋本町3-4-6 ニューカワイビル 1F
・電話 03-5255-3030
・時間 12:00~19:00(最終日は17:00まで)
・休廊 日曜、月曜
・URL https://linktr.ee/reijinshagallery
