コラム

心鏡 #17
2023年10月8日

文=小松美羽


光が問いかけてくる声に耳を澄ませる

生きとし生けるもの、霊性においては差別がなく平等だと思う。
優劣もなく、ただあなたの肉体時間においての生きた痕跡がそのままあなたの光になるし、あなたの闇にもなる。それは時に残酷だと捉えることもあるだろう。闇人の心を簡単に支配する。光はいつでもそこにあるのに人はすぐに光に慣れてしまうから、闇はいつでも後ろを追いかけてくる。誘惑も甘美な時間も脳がそう理解しているだけで、魂の喜びや悲しみに耳を貸そうとする人は少ないように感じる。

韓国でのライブペインティング画像

韓国ソウルにある奉恩寺での奉納ライブペインティング

あなたのその四肢も五感も脳も内臓も血液も本当にあなただけの所有物だと言えるだろうか。天から頂いたそれら全ては傲慢にもあなたの欲を満たす道具となっているかもしれない。私は現在、非常に傲慢な人間のままだ。自分の怠惰も、強欲も、死ぬまでには少しでも剥ぎ落としながら今の肉体の限界日を迎えたいと思っている。だからこそ、怒りを知るから、怒りの恐ろしさを知る。悲しみを知るから、悲しませたくない。苦しみを知るから、繰り返したくない。歓びを知るから、他者と前に向かっていきたい。

韓国の展覧会での小松美羽

Whitestone Gallery Seoulのオープニング展覧会「We Love Korea」にて

誰しも集団から学び、最後は孤独になる。孤独になった時に頼れるのは己の光のみ。光だけがあなたの所有物なのかもしれない。
宇宙へと天へと続く祈りが、道を踏み外すことなく真っ直ぐに届きますように。霊性の突き上げはきっと、人が年を取ることで純粋になっていく道標かもしれない。そんな経験の積み重ねが、愚かで罪深い私自身が感じる生きる希望だ。

2023年10月8日。世界遺産でもあることから世界中の観光客や参拝者が訪れる「東寺(教王護国寺)」にて、弘法大師空海が真言宗を開いて1200年にあたる法要が行われた。私は昨年の春に東寺の境内にある食堂じきどうにて制作した一対の「マンダラ」に最後の1筆の点を国宝の金堂にて描き、完成と奉納が無事に完了した。
慶讃大法会の模様

翌日の2023年10月9日からは、真言宗立教開宗1200記念の特別拝観「東寺のすべて」が始まった。ありがたいことに、その特別拝観の期間中に、私が制作させて頂いた「ネクストマンダラ―大調和」が境内にある灌頂院にて展示された。灌頂院という場所は普段は拝観ができない特別な場所である。初めて訪れた時には、空間から祈りの残り香が漂う神聖な場所だと感じた。この機会に少しでも多くの人に祈りと空間と絵画の交わっていくエネルギーの一片を感じ取ってもらえたら幸いだ。

小松美羽《ネクストマンダラ―大調和》画像

小松美羽《ネクストマンダラ―大調和》

空間に広がるエネルギーの多くは、きっとあなたの霊性とも繋がっていくかもしれない。その突き上げは、人も昆虫も魚も動物も見分けることなく作用していくのだろう。霊性において、私たちは同じ地平線の上で必死に生きている輝きの1つだからだ。
1200年という時代の流れを構築する多くの信念と信仰を感じることができたという意味は、あなたが役割を全うする日々の中で答えを頂けるのかもしれない。多くの経験の中で長い歴史を感じることができる今のあなたが何歳でも、それは魂においては一瞬のことなのに、その一瞬の出来事を経験したかしてないかでは、分岐する道のりは大きく変わっていく。
だから生きるしかない。生かされていくしかない。
あなたの光が今のあなたに問いかける声が、きっと聞こえてくるかもしれない。

真言宗立教開宗1200年記念法要の画像

真言宗立教開宗1200年記念法要の模様

真言宗立教開宗1200年記念
特別拝観「東寺のすべて」

国宝「風信帖」や現存最古の彩色曼荼羅で平安仏画の最高傑作として名高い国宝「両界曼荼羅図」など第一級の寺宝のほか、小松美羽が東寺食堂で制作した『ネクストマンダラ―大調和』などが公開されている。

会期:2023年10月9日(月・祝)~31日(火) ※会期中無休
会場:真言宗総本山 教王護国寺(東寺)
住所:京都市南区九条町1
時間:9:00~17:00 ※拝観受付は16:00まで
拝観料:一般2,000円、高校生1,500円、中学生以下1,000円
※スマートフォンで聴ける無料音声ガイド付き
TEL:075-691-3325(東寺)
URL:https://toji1200th.jp/index.html