3月26日(水)から京都芸術大学で開催中の展覧会「物質から再考する物語―教え、学び、表現する技法材料」。これは、同学大学院客員教授を務める青木芳昭の退任を記念した展覧会だ。
美術家であると同時に素材学の研究者でもある青木。画材や支持体をはじめとする素材に関する豊富な知識と経験に基づく知見は、学生のみならず多くのアーティストに影響を与えてきた。この「美術屋・百兵衛」でも、紙媒体時代から長きにわたって連載コラム「これだけは知っておきたい -画墨の基礎知識-」を執筆している。
そんな青木のゼミで育った卒業生・修了生らの作品も展示される本展では、青木が大切にしてきた技法材料が持つ特性や性質、色材が持つ歴史的ストーリーなどを通じて、作品コンセプトがどのように生まれるのかを一堂に鑑賞することができる。

墨や紙など日本画で知られる素材の研究を長年続けてきた青木だが、実は昔は油絵を描いていた。そんな青木の転機となったのが、パリ留学だったという。
芸術の都・パリで感じたのは、当時の日本のアートシーンとの大きなギャップ。画材店でキャンバスを購入しようとした際、何十種類もの中から「どのキャンバス地が良いか」と尋ねられ、驚いたのだそうだ。
作品のコンセプトを際立たせたり、耐久性を上げたりするなどといった視点で画材を選択する日本人画家が少なかった当時、国際的なアートフェアで耳にしたのは「日本人作家の作品は劣化しやすい」という評判。その理由は、当時の日本では、どんな素材を使えば作品のコンセプトが際立ち、耐久性が保たれるのかといった視点で画材を選ぶ画家が少なかったからだ。また、チューブ入り絵具の使用が一般的である一方、西洋で生まれた絵具が日本の気候に適していないという事実も学んだ。
こうした経験を経て、青木は地域に根付く自然の力や伝統的な技で作られた画材や支持体こそが、その地に最も理にかなった素材であるという結論に至った。

展示の様子
アーティストであると同時に素材学の研究者でもある青木は、「描きたいものがある。だから素材の研究をしなければならない」と語る。近年は素材学の未来についても近年は思考を巡らすことも増え、これまで収集してきた博物館級の膨大なコレクションの行方についても検討している。
「研究した成果を次に伝えていかなければならない」――そう力強く語った。

ぜひこの機会に、青木が育んできた技法材料学の魅力や、その学びから生まれた多様な表現を知っていただきたい。なお、会期中には2回のトークイベントが予定されている。詳細は下記をチェックしてほしい。
トークイベント
Vol.1「教え、学び、伝える技法材科学」
日時 3月29日(土)第1部 14:00〜15:00/第2部 16:00〜17:00
場所 京都芸術大学 ギャルリオーブ吹き抜け
内容 京都芸術大学にて技法材科学を牽引してきた青木芳昭教授と青木教授から技法材科を学んだ救貝や卒業生によるトークイベントです。
Vol.2「画材企業と歩む、青木芳昭の技法材科学」
日時 4月6日(日)13:00〜15:00
場所 京都芸術大学 ギャルリオーブ吹き抜け
内容 青木芳昭教授の技法材料学は常に画材企業との連携に独自性があり、発展してきました。ここでは画材業界のこれまでの歩みとこれからについて、画材企業と語っていきます。
[profile]
Yoshiaki Aoki 青木芳昭
1953年
茨城県那珂市に生まれる
1976年
パリ留学、ル・サロン名誉賞受賞
1977年
中央美術研究所主宰(2013年退職)
1983年
パリ留学(1984年まで)
1989年
安井賞展出品
1991年
東京セントラル美術館油絵大賞展出品
1996年
銀座資生堂ギャラリー個展
1997年
安井賞展出品
NHK ハート展出品
1999年
アカデミア・プラトニカ設立・代表
2007年
京都芸術大学客員教授
2011年
京都芸術大学教授「よくわかる今の絵画材料」出版(生活の友社)
京都技法材料研究会設立(画材メーカー11社参加)、
会長に就任(2023年解散)
2015年
21世紀鷹峯フォーラムモデレーター(~2018年)として「絶滅危惧の素材と道具」で害獣の鹿の皮から和膠の復刻毛から筆・刷毛の道筋を築く
長谷川等伯筆2点の発見から修理に関わる
寺田倉庫PIGMENT TOKYO 顧問(~2019年)
2016年
日本文化藝術財団 第8回「創造する伝統賞」受賞
2018年
「奈良墨」伝統的工芸品指定プレゼンテーター
2021年
季刊誌・美術屋「百兵衛」に「これだけは知っておきたい -画墨の基礎知識-」を連載中
2024年
やんばるアートフェスティバル出品
東福寺塔頭・光明院にて個展
[information]
物質から再考する物語―教え、学び、表現する技法材料
・会期 2025年3月26日(水)〜4月6日(日)
・会場 Galerie Aube(京都芸術大学 人間館1階)
・住所 京都市左京区北白川瓜生山2-116
・電話 075-752-5555(代表)
・時間 10:00~18:00(最終日は17:00まで)
・観覧料 無料
・URL https://www.kyoto-art.ac.jp/events/2638