アートを学ぶ

Glass-sana
QUATTRO VITE -4つの命-

 

美術作品には、アーティストがそれを完成させた瞬間に生命が吹き込まれます。つまり作品は生き物と同じく、アーティストによって1点ずつに生命が与えられるものであり、その生命は何らかの目的や使命を持っています。この「QUATTRO VITE(4つの命)」では、それぞれのアーティストによる作品4点の「命」に光を当て、イタリアの美術評論家パスクアーレ・ディ・マッテオ氏が各作品の魅力について解説します

 

Glass-sanaは非常に革新的で独創的なアーティストだ。彼女は伝統的な熟練の技と現代的な表現を組み合わせて、魅惑的でエレガント、かつ洗練された作品を創り上げる。

ヨーロッパの伝統的なコード刺繍技法であるソウタッシュと、自作のガラスやビーズなどさまざまな素材とを融合させるGlass-sana。その作品は抽象的な概念を三次元の芸術へと昇華させたものであり、鑑賞者に彼女のメッセージを伝えることに成功している。彼女は生命の誕生や人類の進化、肉体と精神の調和といった普遍的なテーマを扱う。その中で特別な注意を払っているのが、このアーティストにとって大きな興味の対象である動きだ。

Glass-sanaの芸術的な特徴は、作品に視覚的なアイデンティティーを与える能力にあるようだ。それは幽玄で、構造化され、計画的であると同時に、瞬間的に抱いた感情や感覚によって最終的に決定される。固定された形を持たないこうした作品は、色調や色彩の構造、素材が一体となって、生命のダイナミズムに関連する深遠で複雑な物語を語るもの。そして永遠に動き続ける世界へと鑑賞者をいざなうのだ。

アートとデザインの境界を軽々と超えるGlass-sanaの能力。それは作品を視覚的に魅力あるものにするだけではなく、テーマの深さゆえに鑑賞者の心を刺激するだろう。

 

VITA-1


birth

BEADS刺繍・BEADS織・ソウタッシュ:オリジナルガラスカボション(JEWELRYGLASS-sana®)、コード、ビーズ 40.0×40.0cm 2024

 

この作品は「誕生」をテーマとしており、ダンスの様式化を思わせる輝きのある構図で生命の誕生の瞬間を表現したものだ。また、宇宙を生み出した最初の爆発、いわゆるビッグバンをも思わせる。

刺繍によって丹念に作られたソウタッシュとそれと組み合わされたビーズなどが、刺激的な視覚効果を生んでいる。原初の生命体の動きや細胞分裂、あるいはが開いて成長することを私はイメージした。アーティスト自らが手掛けたガラスの使用は、この作品に透明性と光の屈折という次元を加えている。それははかなさを象徴すると同時に、この世に新たに誕生する生命の可能性を示すものだ。

弧を描くような構図は、宇宙のあらゆる要素が共存する一種の渦のような完全性を、さらに地球上の自然の絶え間ない循環を想起させる。

繊細でありながら生命力を感じさせる色調の勝利によって支配されている色彩は、創世の概念を強調するためにGlass-sanaが採用した手段なのかもしれない。一方、構造的な密度は豊かで重層的であるため、作品に深みを与え、鑑賞という行為をさまざまな感覚に訴える体験へと変化させるのだ。

 

VITA-2 


growth

BEADS刺繍・BEADS織・ソウタッシュ:オリジナルガラスカボション(JEWELRYGLASS-sana®)、コード、ビーズ 40.0×40.0cm 2024

 

この作品は、先述した『birth』のいわば続編であり、まさに進化を表現しているように思える。

ここでGlass-sanaは成長や生長、発展というテーマに沿って、原初の段階から具体的な成熟段階へと至る過程を取り上げている。成長というテーマがより複雑な視覚的構造によって表現され、まるで作品のあらゆる構成要素が独自の生命を持ち、それぞれに与えられた刺激に従って動いているのではないかと錯覚するほどだ。それらは、黒い背景の前で祝福されているかのような生長と発展の感覚を伝えている。

彼女はソウタッシュという刺繍技法をダイナミックに使用して、絡み合う線と曲線を作り出し、人間の成長の道筋や、この地球の生きとし生けるもの、自然界に存在するもの全てが絡み合う様子を表現している。刺繍部分の色彩には主に赤や黄など暖色が使われているが、有機的で調和の取れた変化を示唆する色の選択だといえるだろう。

Glass-sanaはこの作品で鑑賞者に細部への注意を促し、要素それぞれの動きに注目させる。作品の構成要素は、いわばパズルのピースのように他のピースを支え、増幅していく。それは、個々の人間が健康である時に成長を促す、周囲との協力関係や相互関係を象徴的に反映するものだ。

 

VITA-3 


fusion

BEADS刺繍・ソウタッシュ:オリジナルガラスカボション(JEWELRYGLASS-sana®)、コード、ビーズ 82.0×27.0cm 2024

 

『fusion』という作品でGlass-sanaは、生命にまつわるさまざまなテーマに焦点を当てた。例えばそれは、身体的および概念的な結合と統合の思考、夫婦の愛を通して生命を生み出す生活、精神的な進化と身体的成長・成熟におけるストイックさなどである。

作品の上部を支配する、二つの楕円形のコンポジションは、移動可能なマグネット構造を備え、Glass-sanaならではの芸術様式に魅惑的な双方向性を導入している。この技術的特徴は、柔軟性と変容、そして変化への開放性を暗示するもの。こうして彼女は「fusion」、つまり融合の概念における多くの基本的なテーマを復活させると同時に、紀元前にギリシアの哲学者ヘラクレイトスが説いたように「万物は流転する」がゆえに静的なものは何もないと教えてくれる。

ガラスやコード、ビーズなどの立体的な素材を用いることで、それぞれの部分が独自性を失うことなく他と融合し、非常に複雑な一体感が生まれている。強烈な光を放つ作品下部は、卵子を目指して昇る精子を形象化したかのようだ。未来へと前向きに進む、創世への明確なメッセージが投影されていると、私には思える。冬の夜の毛布が暖かさを提供してくれるように、密度や身体のイメージを与える赤い背景の前で、ここで説明した作品の構成要素が上へ上へと昇っていく。

この作品は、新たな可能性に向かう爆発しそうなまでの強いエネルギーを感じさせると同時に、生命が持つ永遠のサイクルを鑑賞者に想起させるものだ。

 

VITA-4 


dance

BEADS刺繍・ソウタッシュ:オリジナルガラスカボション(JEWELRYGLASS-sana®)、コード、ビーズ 82.0×27.0cm 2024

 

今回紹介するGlass-sana作品の最後のテーマは「dance」。ダンスとは、動きと喜びに対する賛辞である。

実際に我々は元気な時、幸せの瞬間、そして心の中に住む人々との親密さを楽しむことができる時に踊る。一方でダンスはカタルシスでもあり、人生が我々の眼前に突きつける問題や課題を忘れさせてくれる。

この作品でGlass-sanaは、ダンスの美しさや調和を表現するだけでなく、舞いや踊りが伝えることのできる多くの比喩的なメッセージをも表している。

Glass-sanaは、きらめく色彩のダイナミックな爆発の中で、空間を漂うしなやかな曲線や円形のパターンを駆使して、物体の運動によるエネルギーが脈動するコンポジションを作り出している。動きの本質を捉える刺繍の要素は、作品の表面から外へと飛び出さんばかりだ。左右対称ではないそのレイアウトはダンスの即興性を示唆しており、制作の際にこのアーティストが、いかに場の即興性に導かれたかを物語っている。

この作品は表現の自由に対する賛辞であるとともに、充実した人生の美しさを示すメタファーでもあるのだ。

 

ここで紹介した4点の作品は、エレガントで洗練されていると同時に独創的である。歴史と伝統を忘れることなく現代的な要素を取り入れ、生命と人類の進化に関する深遠な概念を表現できるGlass-sanaは、現在のアートシーンにおける最も独創的な芸術家の一人であるといえるだろう。

 

評:パスクアーレ・ディ・マッテオ氏

 

[Profile]
Glass-sana
ガラス造形を専門とする。オリジナルガラスを通じてライフスタイルにおける宝飾品、装飾品の提案を行う。1989年(現)京都芸術大学卒業。2018~2024年個展開催。2017年より国内、海外のアートコンペにて多数受賞。2022年QAF ArtAwardにてEncouragement Prize受賞。