展覧会

山城知佳子 ベラウの花

会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 会期:3/21(火・祝)〜6/4(日)

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館では、山城知佳子(1976〜)の個展が開催中だ。彼女にとって、西日本では初めての大規模な個展である。
国際的に活躍する山城は、沖縄県出身の映像作家・美術家。生まれ育った沖縄という土地がもつ歴史や政治的な状況を鋭く捉えると同時に、複雑に絡み合うそれらの事象に向き合うことによって生まれる作品で高く評価されてきた。

複雑な現実を、彼女はあえて複雑なまま、写真と映像を制作の軸として発表している。そうすることで、現実とフィクションの境界を曖昧にし、豊かな物語性を纏った作品へと転換するのだ。

《彼方》 画像

《彼方》2022年 山城知佳子 ©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 

新作『ベラウの花』*では静かな眼差しに支えられた、現在と過去を往還するような映像を展開。その解釈は観る者へと委ねられるもの。私たちはどのような未来を作っていけるのだろうか——
本展では、現代に新たな意味を与える近作及び新作を中心に、初期の作品も参照しながら山城の作品世界を紹介される。複数の意味とイメージを鑑賞者に与えながら、現実に過度に縛られない強さとしなやかさを感じさせる山城知佳子の作品を深く味わってほしい。
*「ベラウ」とはパラオ共和国の言語であるパラオ語でパラオのこと

《墓庭エイサー》画像

《墓庭エイサー》2004年 山城知佳子 ©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

本展の見どころ

1. 初期の作品から新作まで18点を展観
2004年の「オキナワTOURIST」3部作から新作『ベラウの花』(2023年)までの18点を展観。彼女が何を眼差し、他者の声にどのように応答しながら制作してきたのか、その道筋を辿ることで、より深く現在の山城を知ることができるだろう。

《I Like Okinawa Sweet》画像

《I Like Okinawa Sweet》2004年 山城知佳子 ©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

《日本への旅》画像

《日本への旅》2004年 山城知佳子 ©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates


2. 新しいインスタレーション

新作『ベラウの花』を中心に6点の映像作品と、8点の写真作品を、相互の結びつきを重視した構成で展示する。それぞれの作品の音も意図的に混ぜ合わせ、作品がもつ時間と空間を拡張させる。

3. 新作を発表
本展にあわせて制作された新作『ベラウの花』が発表される。制作にあたり山城は、パラオ共和国でリサーチを行ない、コロール島、バベルダオブ島、アンガウル島を訪れ、各所にある慰霊碑、戦車や司令部といった戦跡、学校や病院跡地などを調査・取材した。また、日本統治時代に教育を受けた高齢者へインタビューも行なったという。

主な出展作

《ベラウの花》2023年 シングルチャンネル・ヴィデオループ
新作で山城は、一人の老人が目の前の風景をどのように見ているのか、それを想像する糸口を得るために老人が幼少期を過ごしたパラオで撮影を行なった。カメラを携え老人の記憶を辿ってパラオの島々を撮影し、自身の新たな眼差しを重ね合わせた映像は、老人の記憶ではなく、山城が創り出した新しい記憶のフィクションなのだ。

《ベラウの花》画像

《ベラウの花》2023年 山城知佳子
©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates


《チンビン・ウェスタン 家族の表象》2019年 シングルチャンネル・ヴィデオ 32分

掘削され土が剥き出しになった山、土砂を運ぶトラックの列などの風景を背景に、老人と孫、両親と幼い子供の二組の家族の生活が描かれる。両親がそれぞれ、オペラと琉歌の旋律で掛け合いながら歌い上げるように、二項対立では説明し得ない現状がユーモアを交えた物語で説き起こされる。

《チンビン・ウェスタン 家族の表象》2019年 山城知佳子
©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 

《沈む声、紅い息》2010年 シングルチャンネル・ヴィデオ 5分55秒
初老の女性の聞き取れない呟き、海中に潜るダイバーや沈むマイクから吐き出される泡が印象的なこの作品は、言葉にならない声が可視化された作品だ。束ねられ海底で揺らぐマイクは先人に手向けられた花束のように、また泡はその人から返ってきた返答にも見える。現在を知るために、山城は過去を辿る。

《沈む声、紅い息》画像

《沈む声、紅い息》2010年 山城知佳子 ©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

関連プログラム 

親子でMIMOCAの日
4月22日(土)、23日(日)10:00〜18:00
子どもが芸術に触れる機会を増やすことを目的として2020年度より開始した「親子でMIMOCAの日」。この日は高校生以下または18歳未満の観覧者1名につき、同伴者2名まで観覧無料。

[profile]
山城知佳子 Chikako Yamashiro
1976年、沖縄生まれ、在住。映像と写真を中心に作品を制作している。2019年より東京藝術大学先端芸術表現科准教授。
近年の主な展覧会に「Tokyo Contemporary Art Award 2020-2022受賞記念展」(2022年、東京都現代美術館)、「Chinbin Western Chikako Yamashiro」(2021年、Dundee Contemporary Arts /イギリス)、「東日本大震災10年 あかし testaments」(2021年、青森県立美術館)、「One Escape at a Time | 11th Seoul Mediacity Biennnale」(2021 年、Seoul Museum of Art (SeMA)/韓国)、「山城知佳子 リフレーミング」(2021年、東京都写真美術館)などがある。 また「令和3年度(第72回)芸術選奨 美術部門 文部科学大臣新 人賞」(2022年)、「第31回(2020年度)タカシマヤ文化基金 タカシマヤ美術賞」(2021年)、「Tokyo Contemporary Art Award (TCAA) 2020-2022」(2020年)、「第64回オーバーハウゼン国際短編映画祭ゾンタ賞」(2018年)などを受賞。

[information]
山城知佳子 ベラウの花
・会期 3月21日(火・祝)〜6月4日(日)
・会場 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 3階展示室 C
・住所 香川県丸亀市浜町80-1
・電話 0877-24-7755
・時間 10:00〜18:00(入館は17:30まで)
・休館日 月曜日
・観覧料 一般950円、大学生650円(常設展の観覧料含む)、高校生以下または18歳未満・丸亀市在住の65歳以上・各種障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
※前売り:一般760円、大学生520円
・URL https://www.mimoca.org/ja/