アーティスト

第2回 Gates Art Competition グランプリ作家
白 インタビュー

白《夏を運ぶ絵》 2021年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

《夏を運ぶ絵》 2021年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

 

インターネット上で気軽にアート観賞や購入が楽しめる「Gates The Virtual Art City」。ここでは9月15日(木)から、公募展「第2回 Gates Art Competition」グランプリ作家である、アーティスト・はくの個展がスタートする。
受賞作品である『夏を運ぶ絵』は瑞々しいスイカと、どこかコミカルで可愛らしい宇宙飛行士が描かれたデジタルアート。緻密に描き込まれた作品からは、光や影、質感に対する強いこだわりを感じる。

白は現在武蔵野美術大学に在籍する学生でありながら、個人でデジタルイラストのオンラインレッスンを開講する実力派イラストレーター。「絵を上手に描くことは誰にでも可能だと伝えたかった」という白の講座は、初心者から中級者向けのもので、デッサンに始まり、光や色の仕組み、魅力的な画面構成など、“説得力のある絵を描くための基礎的な力”を養うことができる。

白の作品は、写真などの素材を使わず、すべて自らの手で描き込まれたものだという。今回はその制作意図や作品に込めた思いについて話を聞いた。

白《Winter》 2022年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

《Winter》 2022年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

 

──絵を描き始めたきっかけを教えて下さい。

幼い頃から描いていたので覚えていないのですが、小学校低学年の頃、担任の先生が褒めてくださったことは当時のモチベーションになっていたので、今でも感謝しています。

──デジタルで作品をつくり始めたのはいつ頃からですか?

2年前の夏です。コロナ禍で外出ができない中、自粛期間がチャンスだと感じ作品づくりを始めました。

──アナログで培った画力はデジタルにも応用できるのでしょうか?

デッサン力や画面構成力は可能だと思います。しかし、画材の特性を利用した表現をデジタルで再現することは難しいと思います。

ドーナツのイラストのメイキング

およそ3時間で描き上げたという、チョコレートドーナツ。

白《old-fashioned adventure》 2021年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

《old-fashioned adventure》 2021年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

 

──イラストとアートに境界線はあると思いますか?

私個人としては分けて考えてはいません。お互いの領域はどんどん混ざり合っているように感じます。その一方で世の中の一般認識ではイラストという言葉は少しチープなイメージで使われているような気がします。

──作品のモチーフやアイデアはどのようなところから得ているのでしょうか?

落描きをしているときや日常を観察しながら過ごしている時に自然と思いつくことが多いです。あまり考えすぎるとアイデアが降りてこないので、そういう時は基礎的な練習をしています。

──今回の個展の作品には、宇宙飛行士がモチーフとしてよく登場しています。白さんは宇宙飛行士という存在を、どのようなキャラクターとして捉えているのでしょうか?

上手く言い表せないのですが、とても独特で絶妙な存在です。高度な技術が使われているにもかかわらず、可愛らしい形をしているところや、実際に存在するのにどこかファンタジーな要素を感じさせるところが好きです。

白《個性派宇宙飛行士》 2021年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

《個性派宇宙飛行士》 2021年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

 

──描く上で特に心がけていることはありますか?

技術を見せつけるだけで終わらないように心がけています。リアルに描くことがゴールではなく、あくまでそれは手段であり、その先でどのような世界を表現したいかを明確にするように意識しています。

球体をマット、ガラス、プラスチック、大理石、金属、タオル地、木、パール、土、半透明、牛革、ジーンズ地をデジタルで描いた作品。

球体を質感ごとに描き分けたもの。光の反射や影の表現に目を奪われる。

 

──現在はデジタルで描く際、ソフトなどに収録されているトレース用の素材を使用する方も多いと思います。白さんがあえてそういったものを使わず、すべてご自身で描かれるのにはどういった理由があるのでしょうか?

主に2つあります。まず1つは、自分の世界の純度を高めたいからです。あまり共感されないかもしれませんが、線を自分で決めないと、どうしても他人が描いたように感じてしまいます。可能な限りトレースや複雑な機能を使わずに自分で色や線を決めていくことで自分の作品になっているような気がします。
もう1つは、作品制作を通して自分のスキルを高めていくことも大切にしているからです。ソフトの機能に頼らず、可能な限り自分の実力で描いていくことが上達につながると考えています。

白《未知と戦う絵》 2021年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

《未知と戦う絵》 2021年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

 

──武蔵野美術大学の工芸工業デザイン学科に在籍していらっしゃるとのことですが、デザイン系の学科を選ばれたのは、どのような理由があったのでしょうか?

デザインは他の学科に比べ、わかりやすい美術だと感じたからです。ファインアートよりも、制作における一つ一つの選択に理由があることが多く、論理的思考で美術ができる点が面白いと感じました。また、元々は平面で制作する方が得意でしたが、多視点からデザインを学びたいと考え、プロダクトデザインを学べる工芸工業デザイン学科を選びました。

──大学で日々学ぶ知識や技術は、制作活動にどう影響していますか?

大学ではインテリアデザインを専攻し日々様々な素材を扱っており、世の中の色々なプロダクトが人の手によって作られていることを実感しています。その影響で細部の質感や、描く際に設定した構造の説得力が上がっているのではないかなと思っています。

──白さんにとってどのようなことがモチベーションに繋がっているのでしょうか?

とにかく上手くなることです。私は良い作品を作るのと同等かそれ以上に上達することを大切にしています。そういった絵に対する向き合い方が今の自分のスタイルを形成しているのだと思います。

白《大粒の雨》 2021年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

《大粒の雨》 2021年 デジタル(CLIP STUDIO PAINT)

 

──今回グランプリを受賞された率直なお気持ちをお聞かせください。

とても光栄に思います。大きな実績の無かった私にとって、こうして評価していただけることはとても心の支えとなり、励みとなりました。この喜びを胸に、より一層日々の制作に情熱を注いでいきたいと思います。

──今後の展望についてお聞かせください。

絵で人々の生活を豊かにするクリエイターになりたいです。そのためにも、今後は挑戦したことのない絵柄のイラストを描き、自分の表現の幅を広げていけたらと考えています。

 

白 Haku

1998年 千葉県生まれ
2020年 武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科入学
2022年 Gates Art Competition – food部門 – グランプリ受賞

SNS・Website
・Twitter https://twitter.com/ololol__ololo
・Instagram https://www.instagram.com/hololol_ololo/
・オンラインレッスン「CLASS 101」 https://101.inc/haku-twt
・オリジナルグッズ販売サイト「SUZURI」 https://suzuri.jp/hakushiro

Exhibition
・2022年9月15日(木)~10月31日(月)
Gates Art Competition グランプリ作家 白個展
Gates Museum「Art in White」

・2022年10月28日(金)~10月30日(日)
『ばぶ展』
武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス4号館 201
※武蔵野美術大学芸術祭にて個展開催予定