展覧会

こどもとおとなの自由研究
工芸の〇△□✕展

会場
国立工芸館
会期
7/5(火)~ 9/4(日)

ポスター

作品の中に隠れた○△☐✕を
あなたはいくつ発見できるのか?
その奥までたどることは可能か?

キュビスムなど20世紀の美術に大きな影響を与えたことから、「近代絵画の父」と呼ばれるポール・セザンヌ。彼は絵画制作に「多角的視点」と「構造的視点」を取り入れた。上から、下から、横から、斜めからなど、さまざまな角度から見た、つまり、「多角的視点」によってひとつの画面の中にいくつかの対象を描いたのだ。一方、「構造的視点」とは、自然の風景を三角、長方形などの図形、いわば基本構造に還元して捉え直そうというもの。そしてジョルジュ・ブラックやパブロ・ピカソらは、セザンヌのこのふたつの視点をキュビスムへと発展させた。

赤地友哉《曲輪造彩紅盛器》画像

赤地友哉《曲輪造彩紅盛器》 1960年  東京国立近代美術館蔵 撮影:斎城卓

さて、石川県金沢市にある国立工芸館では、セザンヌの「構造的視点」を思い起こさせるような展覧会「こどもとおとなの自由研究 工芸の〇△□✕展」が7月5日から開催される。セザンヌのように絵画ではなく、陶器や漆器、ガラス、染織、人形など工芸作品の中から自然の基本構造である図形を見つけ出し、その奥に隠された真実に迫ろうとするものだ。

関谷四郎《赤銅銀十字線花器》画像

関谷四郎《赤銅銀十字線花器》 1975年 東京国立近代美術館蔵 撮影:斎城卓

○に△、□に✕。それらはもっとも基本的な図形や記号として、日頃から見慣れ、使い慣れたイメージではなかろうか。工芸を観察すると、実にさまざまな○や△、□や✕に出合える。たとえば曲輪造りの盛器。ガラスピッチャーのシャープな注ぎ口。サイズ、用途も豊富な箱。素材のしなやかさを頼みに、たわめ、ギリギリの力加減で組み合った状況が並ぶ籠目……。いずれも使い手と作り手双方が描く「こうしたい」と願うイメージを実現するために、それもより善く、さらなる格好よさを目指した結果、浮かび上がった〇△□✕だ。

北村武資《経錦帯「春苑」》画像

北村武資《経錦帯「春苑」》(部分) 2012年  東京国立近代美術館蔵  撮影:斎城卓

工芸をめぐる数々の秘密を○△□✕のフレームを通して読み解くこと。それがこの夏、国立工芸館から美術ファンに与えられたミッションのようだ。こどもとおとながそれぞれのペースで、あるいは力を合わせて挑戦すれば、きっとその課題も解決できるだろう。

生野祥雲斎《虎圏》画像

生野祥雲斎《虎圏》(部分) 1959年  東京国立近代美術館蔵 撮影:斎城卓

「難しい」「堅苦しい」と思われがちの美術鑑賞だが、○△□✕という身近なかたちを見つけ、それを楽しめるこの展覧会なら、こどももからおとなまで、どんな人もがリラックスして鑑賞体験ができるはず。小学生以下の来場者(先着1,000名)には、国立工芸館オリジナル「ジロメガネ」がプレゼントされるので、希望する場合はできるだけ早く足を運ぼう。

四谷シモン《解剖学の少年》画像

四谷シモン《解剖学の少年》 1983年 東京国立近代美術館蔵 撮影:斎城卓

国立工芸館について

国立工芸館 外観写真

国立工芸館 外観 写真 太田拓実

東京の皇居に隣接していた東京国立近代美術館工芸館が、2020年10月に金沢に移転、開館。さらに2021年、その名称を「国立工芸館」と正式に改めた。
同館は兼六園南側、本多の森公園内にある。建物は、国の登録有形文化財である木造の「旧陸軍第九師団司令部庁舎」(1898年築)と「旧陸軍金沢偕行社」(1909年築)を移築したもの。展示室部分はRC造で復元され、外観は建築当時の色が再現された。館内には陶磁、ガラス、漆工、木工、竹工、染織、金工、人形、デザインなど全国各地・近現代の様々な工芸分野の秀作がコレクションされている。

[information]
こどもとおとなの自由研究 工芸の〇△□✕展
・会期 2022年7月5日(火)~ 9月4日(日)
・会場 国立工芸館
・住所 石川県金沢市出羽町3-2
・時間 9:30〜17:30 ※入館は閉館30分前まで
※夜間開館:7月8日(金)~ 8月13日(土)の毎週金・土曜は20:00まで開館
・休館日 月曜日(ただし7月18日は開館)、7月19日(火)
・観覧料 一般300円、大学生150円
※オンラインによる事前予約もあり
※高校生以下および18歳未満、65歳以上は無料
※障害者手帳をお持ちの方と付添者(1名)は無料
※その他無料対象者、割引対象者については公式サイト(下記)を参照
・URL https://www.momat.go.jp/cg/
・TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル 9:00~20:00)