アーティスト

絹谷幸二文化勲章受章 
永遠に新しい!! 人類最古の壁画技法 アフレスコ

会場
絹谷幸二 天空美術館
会期
開催中〜2022/6/27(月)

絹谷幸二_図録画像

色彩豊かでエネルギッシュな絵画や立体作品で知られる芸術家・絹谷幸二。彼が2021年11月3日に文化勲章を受章したことは、美術ファンの記憶にも新しいだろう。

絹谷幸二天空美術館では、2021年度文化勲章受章と開館5周年を記念した特別展「永遠に新しい!! 人類最古の壁画技法 アフレスコ」が2022年6月27日まで開催中だ。本展では、絹谷芸術の代名詞でもあるアフレスコに焦点を当て、イタリア留学中に制作された作品7点『リンダと2つのピラミッド』『りんごのある風景』『トルソーの涙 Ⅱ』『LA MELA XVIII りんご回り舞台』『回り舞台』『ナイルの少年』『月に想う』が初出品される。

『リンダと2つのピラミッド』1972年

『リンダと2つのピラミッド』1972年

会期初日に開催されたオープニングセレモニーでは、堀内容介館長(積水ハウス株式会社代表取締役 副会長執行役員)の挨拶に続き、絹谷名誉館長が登壇。同館の開館5周年と文化勲章受章の喜びを伝えたあと、アフレスコという特殊な技法などについて語った。

アフレスコ(affresco)とはイタリア語の「fresco(新鮮な)」を語源とする、日本で言うフレスコ画のこと。絹谷が用いるのは、漆喰を壁面に塗り、その漆喰が完全に乾くまでの約24時間のうちに、水で溶いた顔料で壁に直接絵を描くというブオン・フレスコ(湿式)技法だ。漆喰が乾燥する過程で顔料が石灰層の中に吸収され、乾燥後は表面にガラス膜のような固く透明の結晶が生じ、それが保護層となって長期間色褪せないという特徴がある。ラスコーやアルタミラの洞窟壁画も天然のアフレスコ画と言えるだろう。

『りんごのある風景』1972年制作

『りんごのある風景』1972年制作

1970年代にはあまり知られていなかった、古代に続くこの画法を一人で探求した絹谷は、今回初出展となる当時の貴重な作品に対し「私の原点であり、初心」「アフレスコ画には人類の初心もあると確信していた」と留学時代を振り返り、絵画の起源についても次のように触れた。

野外で活動する動物は動体視力の点で優れている。一方、洞窟で暮らした人間の場合は絵画を生み出し、この静止するものを観る目を持つことによって、目の後ろ側にある柔らかな脳や心が動きはじめるという、動物にはない世界を築いた。絵画や芸術は古来より存在し、人間を創り上げてきた。この美術館は動くもの(3D)と静止しているもの(絵画)という、相反する概念を同時に持っている。その両方を観ることが非常に大切です。

『ナイルの少年』1973年制作

『ナイルの少年』1973年制作

 

──平和と幸せにあふれる世界を願う、色彩豊かな絵画。

絵画は単なる飾り物で、上手く描ければ良いという瑣末な話ではなく、絵を描くということはものを考える作業であり、それは科学の最初の動機なのだと絹谷は語る。

彼がアフレスコに魅了されたのは、絵が時間や時空を超越することに感動を覚えたからではないだろうか。それは先人の足跡をたどって時代をさかのぼる喜びだけでなく、絵が後世に残ることで、自分がいなくなったあとも未来の人々がそれを観て語り合い、「脳みそと脳みそを震撼」させてくれるという希望だ。現実と空想の狭間を飛行できるような絵画の世界を、絹谷幸二のアートから感じてほしい。

『トルソーの涙Ⅱ』と絹谷

『トルソーの涙 Ⅱ』(1972年)と絹谷

 

「子供 夢・アート・アカデミー」など、子どもたちに絵の楽しさを伝える取り組みを精力的におこなってきた絹谷。館内の紹介で、アフレスコ20面の傑作『アラベスク』を背にしながら次のように語った。

「『何か変だなぁ』と思ったときに脳みそが動きます」「だから私は特にこういう絵を描いています。私自身も何だろうなぁ、と思って描いてます。みんな変だなと思うでしょ」という優しい口調が取材陣の笑いを誘った。

『アラベスク』と絹谷

『アラベスク』(1985年)と絹谷

観る者を様々な情景に誘う『アラベスク』は、かつて東京にあった国立総合児童センター「こどもの城」のため1985年に制作されたもの。不思議な作品を目にしたときに、特に子どもは色々なことを考える。そして鮮やかな色彩は、人間の感情や身体感覚までも呼び起こすのだ。「色彩がたくさんあるところは平和で幸せなところ。だから私は色彩豊かな絵を描いています」と絹谷。教育についての質問には「未来は子どもたちの手にある。子どもたちが絵を描くのが楽しいと思うことによって、いじめや息苦しい時間を解消してもらえればこんなに嬉しいことはない」と答えた。

現在、絹谷幸二天空美術館では「第1回 絹谷幸二 天空美術館 キッズ絵画コンクール」の作品を募集している(作品出品受付期間は1月5日〜3月31日)。これは、同館で催されてきたワークショップ「アフレスコを描く」(2019年にキッズデザイン賞を受賞)に続き、全国の子どもたちに創造の歓び、楽しみを感じてもらう取り組みだ。

絹谷幸二インタビュー写真2

[information]
■永遠にあたらしい!! 人類最古の壁画技法アフレスコ 文化勲章受章・開館5周年記念特別展
・会場 絹谷幸二 天空美術館
・会期 2021年12月17日(金)〜2022年6月27日(月)
・住所 大阪市北区大淀中1-1-30 梅田スカイビル タワーウエスト27階
・電話 06-6440-3760(開館時間内)
・時間 10:00〜18:00、金・土・祝前日は〜20:00(入館は閉館30分前まで)
・休館日 火曜日(祝日の場合は開館し、翌平日が休館)
・入館料 一般1,000円、大学・高校・中学生600円、小学生以下無料、団体・障がい者割引あり
※入館の際に証明書をご提示ください
・URL  https://www.kinutani-tenku.jp

■第1回 絹谷幸二 天空美術館 キッズ絵画コンクール
・テーマ 「あなたの大切な人たち、自然、まち並み」
・主催 絹谷幸二 天空美術館
・応募資格 小学生〜中学生以下(全国より応募可)
・応募条件 一人につき一点まで、新作に限る
・出品料 無料
・表彰式 2022年4月29日(金・祝)11:00〜
・受賞・入選作品展示 2022年4月29日(金・祝)〜6月27日(月)
※詳細は絹谷幸二 天空美術館公式ホームページをご確認ください