アーティスト

目黒礼子インタビュー
─「幸せの予兆」を「骸骨」に託して ─

会場
REIJINSHA GALLERY
会期
3/17(金)〜3/31(金)

《CARNIVAL》画像

《CARNIVAL》2021年 油彩/キャンバス 259.0×193.9cm

東京・日本橋のREIJINSHA GALLERYでは、目黒礼子個展「CARNIVAL」が3月17日(金)から開催される。

目黒礼子は、主なモチーフとして実験室と骸骨を描く作家だ。これら二つの言葉からは、不穏なイメージを思い起こす人が多いのではないだろうか。しかし、個展に際した今回のインタビューで目黒は、柔らかい優しさをもって作品への思いを語った。

目黒礼子の作品世界

──目黒さんの描く骸骨は、何かのメタファーなのでしょうか。

例えば『聖域』という作品では、永遠に一緒、死後も一緒という「家族愛」をテーマにしています。死後、生命としては終わりを迎えますが、生きていた時間よりもずっと長くの「もの」として存在していける幸せな場所(=聖域)を表現しています。
作品を観る人それぞれの思いで骸骨に人物像を当てはめて観てほしいです。大切な誰かや、亡くなった家族や友人などをイメージしてもらえたら、と思います。

《聖域》画像

《聖域》2022年 油彩/キャンバス 259.0×193.9cm

 

──今回の個展のメインビジュアルでもある作品『CARNIVAL』も、そのようなコンセプトで制作されたのでしょうか。

『CARNIVAL』は、2020年、日本で最初のコロナ患者が出始めた頃にテーマを決めた作品です。
ニュースで見たヨーロッパのコロナウイルス除染風景が、映画「ベニスに死す」で観たペストの除染風景のシーンを彷彿とさせました。
そこで、「ペスト医師(Medico Della Peste)」の仮面を被せた骸骨をメインにして描くことにしました。このペストマスクの嘴の先端には薬草が入っており、その薬草の香りで街中の悪臭を防いだそうです。ペストマスクに付いているボトルは虹色で、「幸運の前触れ」を象徴しています。

──以前の個展ではフランスのカタコンベを訪れてインスピレーションを得たのだとか。
具体的にどんなことを吸収されたのでしょうか。

骨格が大好きなのですが、日本でも骨格を観ることができる場所があれば訪れていましたが、ガラス越しだったり、混雑していたりと、あまりじっくり観ることができず残念に思っていました。
しかし、パリを訪れて、カタコンベもそうですが、人間やその他のいきものなどたくさんの骨格を観て触れることができる場所がたくさんありました。また、その展示方法は本当に美しく、美意識を感じました。
死んだら終わりではなく、死後に「もの」となり、生きていた時よりもずっと長く、半永久的にそこに存在し、たくさんの人に愛でられるのだと、感動しました。

《玉蟲》2023年 油彩/キャンバス 22.7×15.8cm

 

──目黒さんの作品は鮮やかな色彩も特徴的ですが、意識していることはありますか。

油絵具のもつ独特の光沢感と深い色彩に強く惹かれ油絵を始めました。
特に何かから影響を受けたと感じたことはありませんが、自分の好きな色や組み合わせ、混色などは絵画を始めた頃からほとんど変わってないような気がします。良くも悪くも影響を受けにくいタイプのような気がしますので、映画や本や音楽、色々な場所を訪れるようにしています。

──好きな色彩とは、どういったものでしょうか。

映画なら、スタンリー・キューブリックや寺山修司の作品の色彩が好きです。
最近観たものでは、1977年の映画「サスペリア」の色彩に感動しました。

 

個展「CARNIVAL」について

──今回の個展のタイトルは、先ほどお話しいただいた作品『CARNIVAL』と同名ですが、作品からインスピレーションを受けたのでしょうか。

「ベニスに死す」から描き始めた作品ですが、ベニスといえばカーニバル。たくさんの人が集まる祝祭のような展覧会になったらいいな、という思いで個展のタイトルにも採用しました。
後から分かったことなのですが、「CARNIVAL」の語源は俗ラテン語 carnem(肉を)levare(取り除く)に由来しているそうです。肉に別れを告げる宴のことを指していて、肉を失った骸骨がメインの展覧会にはぴったりだと思いました。

──特にどのような点を大切にして制作されたのでしょうか。

毎回、小作品では何か新しい技法や画材を試した作品を多数、制作しようと思っています。
今回は数年前に訪れたカタコンベで取材した時の写真を加工し、ヴィトラーユという画材で彩色した作品を多数制作しました。写真をもとに制作したのは、今回初めての事です。

《Catacombes de Paris》画像

《Catacombes de Paris》2022年 72.7×91.0cm
油彩、アクリル、ヴィトラーユ/シナベニヤパネル

 

──作品を鑑賞する人にはどのように感じてもらいたいですか。

私が美しいと感じる世界観に共感してもらいたいです。
特に、人間の肉や皮の奥にある、骨格の美しさや色彩の複雑さなどを観て感じてもらいたいと思っています。

 

骸骨というシンボリックなモチーフに、繊細な感覚を託す目黒礼子。彼女の作品世界に触れることで、より一層、個展への期待が高まる。


■目黒礼子 CARNIVAL
・会期 2023年3月17日(金)~3月31日(金)
・会場 REIJINSHA GALLERY
・住所 東京都中央区日本橋本町3-4-6 ニューカワイビル 1F
・電話 03-5255-3030
・時間 12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
・休廊日 日曜、月曜、祝日
・URL https://www.reijinshagallery.com

[Profile]
目黒礼子 Reiko Meguro
1972年
東京都生まれ
1995年
第65回独立展初出展(東京都美術館)
1997年
女子美術大学大学院修了
2006年
トーキョーワンダーウォール公募2006トーキョーワンダーウォール賞受賞(東京都現代美術館)
2007年
第75回独立展新人賞受賞(国立新美術館/東京)
2008年
第17回青木繁記念大賞展入賞(郡山市立美術館/福島)
第76回独立展佳作賞受賞(国立新美術館/東京)
2009年
第77回独立展損保ジャパン美術財団奨励賞受賞(国立新美術館/東京)
2010年
第78回独立展奨励賞受賞(国立新美術館/東京)
2011年
第79回独立展独立賞受賞(国立新美術館/東京)
LIONCEAUX PLUS Vol.4(日本橋三越本店/東京)
2012年
独立展会員推挙
2013年
錨をあげて独立美術の新しい潮流(神田日勝記念美術館/北海道)
2014年
第9回前田寛治大賞展推薦(倉吉博物館/鳥取)
Sensations17絹谷幸二と17人の仲間たち(日本橋三越本店/東京)
2016年
50の顔 Vol.2(REIJINSHA GALLERY/東京)
2017年
個展「実験室」(REIJINSHA GALLERY/東京)※’15年開催
2019年
個展「party」(REIJINSHA GALLERY/東京)
2021年
個展(GALLERY33 SOUTH/東京)
個展「骸骨と花」(REIJINSHA GALLERY/東京)
現在、東京都にて制作
独立美術協会会員/日本美術家連盟会員
・URL https://www.reijinshagallery.com/product-category/reiko-meguro/

 

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