
正面外観 撮影:佐々木香輔
久しぶりに迎える美術ファンに、新たな姿を披露する展覧会
大規模改修工事のため休館していた大阪市立美術館が、3月1日に再始動する。リニューアルオープン記念特別展として開催されるのは、「What’s New! 大阪市立美術館 名品珍品大公開!!」だ。
「What’s new」という言葉には、久しぶりに会った相手に「お変わりはありませんか」と軽く近況を尋ねる挨拶と、「最新情報/新着情報」という二つの意味がある。この展覧会名には、約2年半に及ぶ休館期間を経て久しぶりに再開する同館から人々に向けた、親しみを込めた挨拶と、リニューアルした最新の姿を披露するという二つの意味が込められている。
日本・東洋美術を中心とする大阪市立美術館の館蔵品は、1936(昭和11)年5月1日の開館から現在に至るまで充実の一途をたどり、その数は約8700件。この展覧会では、館内の全フロアを特別展会場とし、絵画や書蹟、彫刻、漆工、金工、陶磁など分野ごとに選りすぐりの作品約250件が一堂に展観される。同館を代表する名品に加え、これまであまり紹介される機会のなかった「珍品」と呼べるような作品も加わり、いわば大阪市立美術館の「変わらぬ魅力と新たな魅力」を伝える展覧会だ。大阪市立美術館、そしてその館蔵品との再会と新たな出会いを、ぜひ楽しんでほしい。

佐伯祐三《教会》 大正13年(1924) 大阪市立美術館蔵
展覧会の見どころ
1. 大阪市立美術館の全貌が分かる
全フロアが特別展会場となり、重要文化財6件を含む絵画や書蹟、彫刻、漆工、金工、陶磁など分野ごとに、選りすぐりの作品約250件が出品される。この展覧会を観れば、大阪市立美術館がどんな美術館なのか、どのような作品を所蔵しているのかが分かるはずだ。

勝部如春斎《小袖屏風虫干図巻》(部分) 江戸時代・18世紀 大阪市立美術館蔵
2. ため息が出るほど美しい展示
国内外の美術品をより良い環境で鑑賞できるよう、展示ケース、照明もリニューアルし、作品の魅力を最大限に引き出せるようになった。
また、国の登録有形文化財である建物外観を保全する一方、無料ゾーンや公園のグラウンドレベルから入館可能な新エントランスの新設、カフェやミュージアムショップの開設など、天王寺・ 阿倍野エリアの新たな都市魅力となる「ひらかれたミュージアム」としての活動が進められている。

展示室 撮影:佐々木香輔
3. 新たな出会いと、新たな魅力の発見
日本で3番目に誕生した公立美術館である大阪市立美術館では、関西で活躍した先人による寄贈を受けるなど収蔵品の充実を進め、現在では約8700件を所蔵している。
その中から、同館を代表する名品に加え、いわゆる「珍品」とされる館蔵品も多数展示される。珍品の珍品たるゆえんを知れば、観覧者はその魅力のとりこになるのではなかろうか。

1階中央ホール 撮影:佐々木香輔
展覧会の構成
【金工】
大阪市立美術館所蔵の金工品は、古代の青銅器や仏教の儀式に用いられた仏具、実用品としても機能した銅鏡や水滴など、中国・日本の紀元前から近代までバラエティーに富んだ作品群である。その中から、重要文化財4点をはじめとする名品と「珍品の」数々が、勇壮、典雅、愛らしさ、コミカルなど、作品の醸し出す表情に着目して紹介される。

《青銅鍍金銀 羽人》 中国・後漢時代・1~2世紀
大阪市立美術館蔵(山口コレクション)
【彫刻】
我が国屈指の質と量を誇る中国の仏像を所蔵している大阪市立美術館。その中には、北魏(386〜535年)を中心とする造像年が記された作例や、「白玉像」と呼ばれる白大理石を材料とした貴重な作例、雲岡石窟や天龍山石窟、龍門石窟といった中国を代表する石窟からもたらされた仏像などがあり、 世界的なコレクションとして知られている。
【日本の絵画】
大阪市立美術館が所蔵する日本の絵画によって、中近世の色鮮やかな金地屏風から、掛軸、絵巻、そして色刷版画までの、日本絵画のメインストリームを追うことができる。さらに、同館の特色となっている近代の日本画や洋画などを含めた日本の絵画の全体像を示すべく、この展覧会では選りすぐりのコレクションが四つの展示室にわたって展観される。

上村松園《晩秋》 昭和18年(1943)
大阪市立美術館蔵(住友コレクション)
【中国書画】
東洋紡績株式会社の社長を務めた阿部房次郎氏(1868〜1937年)が蒐集し、子息である孝次郎氏から寄贈された「阿部コレクション」。ここには、中国絵画史を語るに欠かせない名品が多く含まれており、大阪市立美術館の名を世界に知らしめた名コレクションといわれている。しかし、同館の中国書画の館蔵品はこれだけではない。この展覧会では、これまで展示の機会があまりなかった作品も加え、同館ならではの中国書画の世界へと観覧者を導いてくれるだろう。
【書蹟(拓本)】
同館の中国書蹟(拓本)の分野の所蔵品には、商周代から唐代に至る金文・墓碑・墓誌・造像銘など多彩な内容の拓本が収蔵されており、漢の碑や摩崖、六朝の墓誌などは特に豊富だ。大阪出身で師古斎の斎号(書斎の名)をもつ岡村蓉二郎氏(1910〜1991年)が蒐集した中国金石拓本400件からなる「師古斎コレクション」が、その中心となっている。
【仏教絵画・経典】
仏像や仏画、仏具として制作された金工作品など仏教美術が豊富なことも同館の所蔵品の特徴の一つ。特に大阪で衆議院議員・弁護士として活躍した田万清臣氏(1892〜1979年)が、明子夫人とともに蒐集した「田万コレクション」には、仏画や経典をはじめとする仏教美術の貴重な作品が多く含まれている。

重要美術品《大般若経(薬師寺経)》(部分) 奈良時代・8世紀 大阪市立美術館蔵(田万コレクション)
【考古】
現在ではあまり知られていないが、かつて同館では考古隊を組織して大阪府下の遺跡の発掘調査等をおこなっていた。1959(昭和34)年に当時の高石町と共同で実施した、富木車塚古墳の発掘調査もその一例。このような活動を基礎とし、寄贈などを通して土器や石器、金属器等の考古遺物の収集が続けられてきた。1960(昭和35)年に大阪市立博物館(現・大阪歴史博物館)が開館したことにより、考古分野の調査活動の中心はそちらへ移ったが、現在でも貴重な考古資料を多く所蔵している。
【漆工】
漆工分野の所蔵品の中核を形成する「カザールコレクション」は、実業家であったスイス人U.A.カザール氏(Ugo Alfonso Casal, 1888〜1964年)が、明治末から昭和中頃にかけて蒐集した、日本、中国および東南アジアの漆工品およそ4000件からなる一大コレクション。近年、江戸後期から明治期における工芸人気の上昇に伴い、カザールコレクションにも熱い視線が注がれている。現在では国内でも希少となった作例も含め、根付や印籠などの装身具は国内外コレクター垂涎の的であり、豪華な蒔絵が施された調度の一群は、見ごたえ十分だ。
【陶磁】
大阪市立美術館は、中国や日本を中心として、朝鮮半島、東南アジアからヨーロッパまでの古今東西の陶磁器を所蔵している。その中でも、ともに2011(平成23)年に受贈した鍋島焼118件からなる「田原コレクション」と、富本憲吉作品100件からなる「辻本コレクション」は同館の日本陶磁の二枚看板となっている。この展覧会では、前述した二つのコレクションの作品を中心に紹介される。

《青磁染付 青海波宝尽くし文皿》 鍋島焼 江戸時代・18世紀 大阪市立美術館蔵(田原コレクション)
[information]
リニューアルオープン記念特別展
What’s New! 大阪市立美術館 名品珍品大公開!!
・会期 3月1日(土)〜3月30日(日)
※初日3月1日(土)は10:00開館
※会期中展示替えあり
・会場 大阪市立美術館(天王寺公園内)
・住所 大阪市天王寺区茶臼山町1-82
・時間 9:30〜17:00(入館は16:30まで)
・休館日 月曜日
・観覧料 一般1,800円、高大生1,200円
※中学生以下、障がい者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料(要証明)
※本展は、大阪市内在住の65歳以上の方も一般料金が必要
※本展は予約制ではありません
⚫︎あべのハルカス美術館との相互割引
本展観覧券(半券可)の提示で、あべのハルカス美術館「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」[1月18日(土)〜3月16日(日)]の当日券を100円引きで購入可能(観覧券1枚につき1名、1回限り有効/他の割引券との併用不可)
・TEL 06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
・URL https://www.osaka-art-museum.jp/