若くして命を落とした優れた画家たちを
残された作品と言葉から振り返る。
1931(昭和6)年、数寄屋橋に近い銀座の日本動産火災保険ビル1階に一軒の画廊がオープンした。開業当初は「東京画廊」と名乗っていたが、7ヶ月後には「日動画廊」の看板が掲げられた。日本初の洋画商として知られ、現在では国内外に複数の拠点を構える同画廊の歴史が、こうして始まったのである。
1972(昭和47)年、日動画廊創業者の長谷川仁は、私財を投じて郷里の茨城県笠間市に笠間日動美術館を設立した。それから50年、多くの画家の自画像やパレットなどを収集し、特色ある展覧会を開催してきた同館は、多くの美術ファンに親しまれている。
笠間日動美術館では、開館50年を記念して「夭折の画家たち -青春群像-」が10月1日より開催される。日本近代美術を振り返ると、将来を嘱望されながらも、若くして亡くなった「夭折の画家たち」は少なくない。この展覧会は、そんな彼らの優れた作品を紹介するものだ。
青木繁や関根正二、中村彝、村山槐多、佐伯祐三、岸田劉生、松本竣介ら夭折の画家たちは、その短い生涯に、権威や形式に囚われない新たな表現を発表し、日本近代美術史にその名を刻んだ。自身の内面と向き合い、ほとばしる若さから生まれた作品は、時代を超えて現代に生きる私たちを魅了し続けている。
夭折の画家たちが活躍した明治から大正にかけては個性の尊重や自己の肯定、生命が讃美された時代であった。彼ら以外にも藤島武二など同時代を牽引した画家たちをあわせて紹介し、当時の時代背景を探るこの展覧会。村山槐多の遺書にある「自分は、自分の心と、肉体の傾向が著しくデカダンスの色を帯びて居ることを十五、六歳の頃から感付いて居ました。私は落ちゆく事がその命でありました」など、夭折の画家たちの魂の叫びとも呼ぶべき残された言葉が作品とともに展示されることも、見どころのひとつだ。また、今年で生誕135年を迎える水戸市出身の画家 中村彝らが集った相馬愛蔵・黒光夫妻による「中村屋サロン」や、彝がアトリエを構えた「池袋モンパルナス」に関する内容もあわせて紹介される。
■出品予定作家
青木繁(1882-1911)、荻原碌山(1879-1910)、萬鉄五郎(1885-1927) 、中村彝(1887-1924)、長谷川利行(1891-1940)、岸田劉生(1891-1929) 、佐伯祐三(1898-1928)、村山槐多(1896-1919)、関根正二(1899-1919)、 三岸好太郎(1903-1934)、松本竣介(1912-1948)、靉光(1907-1946)他
関連イベント
◎開館50年記念対談会 館長 長谷川徳七×副館長 長谷川智恵子
「夭折の画家たちの絵との出会い」
日時:10月8日(土) 14:00〜
参加費:無料(要入館料、予約不要)
場所:企画展示館2階 中央展示室
◎学芸員によるギャラリートーク
日時:10月1日(土)、11月5日(土)、12月3日(土) 各回14:00〜(30分程度)
参加費:無料(要入館料)
場所:企画展示館
◎特別講演会「魅了される大正・昭和洋画 ―天才たちの異色、波乱の生涯と芸術」
講師:岡部昌幸(帝京大学文学部史学科教授・群馬県立近代美術館特別館長)
日時:11月13日(日) 14:00〜
参加費:無料(要入館料)
場所:企画展示館2階 中央展示室
※各イベントは、新型コロナウイルス感染拡大等に伴い予定が変更になる可能性があります。
同時開催
北大路魯山人所蔵名品展
会期:2022年9月17日(土)~ 12月20日(火)
会場:笠間日動美術館 フランス館1階 長谷川仁・林子記念室および分館 春風萬里荘
[information]
開館50年記念 夭折の画家たち -青春群像-
・会期 2022年10月1日(土)~ 12月18日(日)
・会場 笠間日動美術館 企画展示館
・住所 茨城県笠間市笠間978-4
・時間 9:30〜17:00(入館受付は16:30まで)
・休館日 毎週月曜日(但し10月10日は開館)、10月11日(火)
・入館料 大人1,000円、65歳以上800円、大学・高校生700円、中学生500円、小学生以下無料
・割引 20名以上の団体は各200円割引、障害者手帳をお持ちの方とその同伴者1名は各半額割引
・TEL 0296-72-2160
・URL http://www.nichido-museum.or.jp