展覧会

光と陰のアンソロジー
この世界にただ独り立つ

会場
つなぎ美術館
会期
9/10(土)〜11/13(日)

社会での出来事を独自の視点で捉え、
異なる手法で人々に伝える
平川恒太、山本草介、外山恒一の
新作や関連資料などを展示する。

熊本県南部に位置する葦北郡津奈木町。ここには「つなぎ美術館」と名付けられた文化施設がある。2001年に生まれたこの館は、規模は小さいながらもユニークな展示やプロジェクトをおこなうことで知られている。そんなつなぎ美術館で9月10日から開催されているのが、「光と陰のアンソロジー この世界にただ独り立つ」という展覧会だ。同館が発表した開催趣旨を以下に引用する。

平川恒太 Grey シリーズ習作

平川恒太 Grey シリーズ習作 2022年 作家蔵 参考作品


【開催趣旨】

社会には光が当たり人々の注目を集める出来事がある一方で、光を遮られ陰となりほとんどの人が知り得ない出来事もあります。多くの場合、両者は表裏一体の関係にあり、ここに一石を投じる行為はときには孤独をもたらします。社会問題を扱った近代劇の創始者とされるヘンリック・イプセンの代表作のひとつでもある『民衆の敵』の主人公は、人々から非難を受けながらも地域の未来を見据えて自分が正しいと信じる行動をとり続け、心配する家族に自信を持って「世界で一番強い人間はただ独り立つ人間だ」と伝えました。この言葉をサブタイトルに据えた本展では、社会での出来事を独自の視点で捉え、それぞれ異なる手法で人々に伝える三人の表現者の新作や関連資料などを展示します。なお、山本草介の展示については山本の旧友であり個性的な活動でも知られる天草在郷美術館を主宰した美術家の加藤笑平、外山恒一の展示については熊本市現代美術館の佐々木玄太郎学芸員と所属館の協力により実現しました。
また、近年は ICOM(国際博物館会議)でも美術館や博物館も現代社会が抱える様々な課題(多文化共生・ジェンダー・ LGBTQ・貧困・紛争・環境破壊など)に積極的に関与すべきだとの考えが広がっています。本展の開催は、三者三様の主義主張につなぎ美術館が全面的に賛同することを意味するものではありません。しかし、歴史や社会に対する様々な考えを含むこれらの作品や関連資料を同時に展示する本展が、弁証法における高度な発展的統合を目指した思考を導き、より良い社会を築くための新たな方策の創出につながることを期待しています。

平川恒太は、津奈木町と水俣市でリサーチを重ね、以前から温めていた絵画と音楽を組み合わせた実験的な作品を公開するとともに、水俣の滝を描いた「森の茶会」シリーズの新作を館内喫茶室にて展示する。山本草介は、2004年から撮りためていた津奈木町の海を隔てた向かいにある離島、天草市御所浦(旧御所浦町)で電気屋を営む家族の映像に、今年になって新たに撮った映像を加えて編集した短編映画などを公開。外山恒一は 2021年春に熊本市現代美術館で企画されていたものの実現しなかった展示を再現する。
なお、熊本市現代美術館で外山の展示が実現しなかった経緯については、同館が公開している “「段々降りてゆく」展における外山恒一展示検討の記録(https://www.camk.jp/about/book/artgamadas/journal/)” を参照。

山本草介 島の電気屋家族の記録(映像部分)

山本草介 島の電気屋家族の記録(映像部分) 2014年 作家蔵 参考作品


■アーティストプロフィール

平川ひらかわ 恒太こうた 現代美術家
1987年高知県生まれ。東京藝術大学修士課程修了。「自然と闘争」という一見すると相反するイメージを物事の両義性を描くことで追求している。また、「記憶のケイショウ」をテーマに作品による記憶の継承、警鐘、形象を試みている。主な展覧会に「平川恒太−Cemetery 祈りのケイショウ」(2022年・高知県立美術館)、「カタストロフと美術のちから展」(2018年・森美術館)、「VOCA展2014」(2014年・上野の森美術館)などがある。「アートアワードトーキョー丸の内 2013」にて三菱地所賞を受賞。

山本やまもと 草介そうすけ 映像作家
1976年東京都生まれ。早稲田大学在学中から、井口奈己、佐藤真、東陽一、ペドロ・コスタ監督の演出助手を経て、2006 年劇映画「もんしぇん」で監督デビュー。第6回天草映画祭「風の賞」受賞。2021年、ザ・ノンフィクション特別編「塙山キャバレー物語」が第59回ギャラクシー賞奨励賞。同年、B級ボクサーを描いた初の著書「一八〇秒の熱量」が第52回大宅壮一ノンフィクション賞、第20回新潮ドキュメント賞候補作となる。

外山とやま 恒一こういち 革命家
1970年鹿児島県生まれ。高校入学時に管理教育への抵抗運動を始め、左翼活動家として20代を過ごす。服役を機に左翼活動家からファシストへと転向した現在は、ファシスト政党「我々団」を結成して政治的な活動をおこなっている。ユーモアとアイロニーを交えた特有な表現は主義主張を超えて多くの人々の関心を引いている。近年の主な著書に『政治活動入門』(2021年・百万年書房)、『全共闘以後』(2018 年・イーストプレス)、『良いテロリストのための教科書』(2017 年・青林堂)がある。

外山恒一 活動風景

外山恒一 活動風景 2017年 写真:織田曜一郎

会期中のイベント

◎水俣湯出七滝森の茶会
日時:11月13日(日)15:00〜16:00
ゲスト:平川恒太、大塚佳寿子(ティーソムリエ)
会場:つなぎ美術館喫茶室
定員:6名(要予約・先着順)
参加費:1,000 円(お茶とお菓子代を含む)

◎トークセッション
日時:10月15日(土)14:00〜16:00
ゲスト:第一部 外山恒一、佐々木玄太郎(熊本市現代美術館学芸員)、加藤笑平(美術家)
    第二部 外山恒一、佐々木敦(思考家)
モデレーター:楠本智郎(つなぎ美術館学芸員・本展企画者)
会場:つなぎ文化センター
定員:50名(申込不要・当日先着順)
参加費:無料

※新型コロナウイルス感染症感染拡大防止等のためイベント内容は変更の場合あり

[information]
光と陰のアンソロジー この世界にただ独り立つ
・会期 2022年9月10日(土)〜 11月13日(日)
・会場 つなぎ美術館 1・3階展示室
・住所 熊本県葦北郡津奈木町岩城494
・時間 10:00〜17:00(入館は16:30まで)
・休館日 水曜日(祝日の場合は翌平日)
・観覧料 一般300円、高校・大学生200円、小・中学生100円
 ※水俣市・葦北郡内の学校による利用は申請により無料
 ※津奈木町在住または津奈木町の学校に在籍する小・中学生は無料
・TEL 0966-61-2222
・URL https://www.tsunagi-art.jp