展覧会

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田部光子展「希望を捨てるわけにはいかない」

会場
福岡市美術館
会期
1/5(水)〜3/21(月・祝)

田部光子(1933年生まれ)は日本統治下の台湾に生まれ、1946年福岡に引き揚げ、絵画を独学し、「九州派」の主要メンバーとして活動した美術家。九州派解散後も福岡の美術界だけでなく、女性たちをも牽引してきた。

「第3回九州・現代美術の動向展」パレードでの田部光子

「第3回九州・現代美術の動向展」パレードでの田部光子、福岡市内、1969年2月25日

「九州派」とは、1957(昭和32)年、桜井孝身やオチオサムらを中心に福岡の若い画家たちが集い、「地方」と「生活」をよりどころに、東京中心の既存の美術システムから独立した活動を展開した前衛美術集団。三井三池争議を中心とした労働争議の盛り上がりを背景に、生活者の視点から「前衛」を標榜した彼らは、当時数多くあった前衛グループの中でも異彩を放っていた。

田部光子《プラカード》

田部光子《プラカード》1961年、東京都現代美術館蔵

田部光子《人工胎盤》

田部光子《人工胎盤》1961年(2004年再制作)、熊本市現代美術館蔵

田部は当時、実体験と日々の思考から制作に取り組んだ。同時代の社会の動きに敏感に反応し制作した《プラカード》や非常に早い時期に発表されたフェミニズム・アートとして近年注目を集める《人工胎盤》をはじめとする当時の作品は、今も観る者に強く訴えかける。

田部光子《たった一つの実在を求めて》

田部光子《たった一つの実在を求めて》
1963年、福岡市美術館蔵

この展覧会では、1974年に主宰した「九州女流画家展」などこれまでほとんど紹介されることのなかった1970-80年代を含む、「九州派」時代から現在までの田部光子の活動を、作品と資料によって明らかにしていく。それは、ひとりの表現者が社会のさまざまな障壁に立ち向かい、不平等に抗い、人々の背中を押し、なにより楽しみながら美術によって世の中を変革しようと走りつづける軌跡でもあるのだ。

田部光子《Hana》

田部光子《Hana》1990年、作家蔵

田部光子《Sign Language》

田部光子《Sign Language》1996/2010年、福岡市美術館蔵

展覧会サブタイトルの「希望を捨てるわけにはいかない」― 田部の座右の銘だというこの言葉は、彼女の美術家としての姿勢を表している。

[information]
田部光子展「希望を捨てるわけにはいかない」
・会期 2022年1月5日(水)〜3月21日(月・祝)
・会場 福岡市美術館
・住所 福岡市中央区大濠公園1-6
・電話 092-714-6051(代表)
・時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
・休館日 月曜日(ただし1月10日[月・祝]は開館し、翌11日[火]は休館)
・観覧料 一般200円、高大生100円
・URL https://www.fukuoka-art-museum.jp
関連プログラムとして、田部光子の活動との背景をより深く理解するための記念講演会などが予定されている。いずれも聴講無料/定員180名/先着順/13:30開場。
■記念講演会1「ジェンダーの視点からみる近代の女性アーティストたち」
講師:吉良智子(日本女子大学学術研究員)
日時:2月5日[土]14:00-15:30
■記念講演会2「戦後美術と女性作家」
講師:中嶋泉(大阪大学大学院准教授)
日時:2月12日[土]14:00-15:30
■つきなみ講座特別編「美術家・田部光子の挑戦」
講師:正路佐知子(福岡市美術館学芸員、本展企画担当)
日時:2月26日[土]14:00-15:30

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