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「第一回 Gates Art Competition」が1月25日から開催!

インターネット上に構築されたアートの複合施設「Gates」。パソコンやスマートフォンから様々な絵画が鑑賞できる美術館「Gates Museum」を中心に、アート作品を購入したり、アーティストは出品したりできる「Art Store」、大規模な展示にも対応可能な「Convention Center」、アート情報を文字、画像、動画など様々な形態で紹介する「Media Center」という4つの顔を持つ施設だ。(「Convention Center」「Media Center」は2022年中にオープン予定)2021年4月にオープンした「Gates Museum」では、ゴッホ、ルノワール、セザンヌ、北斎などの名だたる巨匠から、日本美術界の未来を担う若手作家までの様々な展覧会を企画、運営してきた。

Gates Museum

1月25日(火)より、「Gates」初の公募入選作品展「第一回 Gates Art Competition」が開催される。ジャンルは「人物部門」と「猫部門」の2部門。入選し展示された作品からは、各部門グランプリ1名、クリエイティブ賞1名、審査員特別賞3名が選ばれた。さらに展覧会期中に行なわれるTwitterでの投票により、SNSオーディエンス賞も選出される。また、グランプリ受賞者には副賞として「Gates Museum」での個展開催の権利が贈られるのも、応募者には魅力的なポイントだと言えるだろう。

展覧会『猫会議』の様子

応募総数726点(人物部門441点、猫部門285点)。その中から人物部門62点、猫部門60点の作品が入選し展示される。6.5倍の狭き門だ。応募作品には油彩画、日本画などはもちろん、Web上で応募が完結するためか、デジタル作品も多かったのが印象的だったようだ。
今回は第一回「Gates Art Competition」の受賞者と受賞作品を、審査員のコメントと共に紹介しよう。

 

『人物部門』

・グランプリ 萩原亜美/Hagiwara Ami

《散髪》 油彩/木製パネル

【審査員コメント】
人物描写の殻を軽く破った「散髪」。時系列ではない28分割の描写が面白い作用を生む。女性の動き、目の配り、周囲の状況が交錯して観る側を知らず知らず鏡面の女性と同化させる。ショートムービーのような錯覚にさせる手法に脱帽。(審査員O)

画面を28分割するという、意外にない発想と確かなデッサン力。モデルの女性の日常を垣間見た気分になり、一種独特の愛情が注がれる。日常と日常の隙間に、あなたは何を望むのだろう。世界はありふれた一コマ、一コマで溢れているのだ。(審査員K)

 

・クリエイティブ賞 廣田昌司/Hirota Shoji

《贖罪》 油彩/キャンバス

【審査員コメント】
「やってしまった」という表情が描かれた人物の目線は何かを訴求しており、口を覆った手は言葉にできない何かを表している。「贖罪」というタイトルからは、いったい何を犯してそれを贖おうとしているのか、または酌量を求めているのかという興味が湧く。ナイフの荒々しいタッチは、その心理や緊迫感の描写に効果を発揮し、この人物の状況を探りながらしばらく見つめていたくなる作品だ。青を差した配色も素晴らしい。(審査員N)

作者は内なる世界を彷徨いながら、その本質に迫ろうとする表現力を持つ。洗練された技術によりデジタルの中でも鑑賞者にマチエールを感じさせる。「贖罪」というタイトルのつけ方も、この作品の物語を広げる事に成功している。(審査員S)

 

・審査員特別賞 カタナシウミ/Katanashi Umi

《反芻》 コーヒー、ミリペン、モデリングペースト、アクリルガッシュ/イラストボード

【審査員コメント】
画材にコーヒーを使用しているのが面白い。箇所によって滲み方が違っていて、とても味わい深い作品。胸元に配置された果実、服やカーテンのグラデーションなどがペンで緻密に描かれており、作者の確かな描写力がうかがえる。(審査員M)

 

・審査員特別賞 古田木綿子/Koda Yuko

《ONE 01》 写真

【審査員コメント】
きっと、我々の存在は、不確かで、限りなく、真っくろで、それでいて、薄い。今日、表出された未来は、明日、暗闇の中に埋没し、全ては、裏返っているに、違いない。嗚呼、良い意味においても、悪い意味においても。(審査員K)

 

・審査員特別賞 今泉明音/Imaizumi Akane

《彼方から聴こえたもの》 油彩/キャンバス

【審査員コメント】
画面一杯に配された人物は、語りかけるように薄く口を開き、視線からも強い意思を感じる。画面の中に踏み込もうとするあと一歩のところで、油絵具の流動性が時空の歪みのようになってその先への浸入を阻む。透明感も併せ持つ佳品である。(審査員O)

 

『猫部門』

・グランプリ 西村欣魚/Nishimura Kingyo

《紅梅黒猫》 水干絵具、墨/画仙紙

【審査員コメント】
濃墨で描かれた黒猫の尻尾が梅の枝になり、折れ曲がるところで渇筆になり、先で再び濃墨が現れる。この手練れた水墨の技法は完璧といえる。若い猫は時々自分の尻尾を自分のものと気づかず追いかけたりするが、ここでは早春の梅の木に変容し、花を咲かせた我が尻尾を不思議気に凝視する様子が描かれている。瞳の描き方、構図、金のあしらいも秀逸で画家のキャリアを感じさせる作品である。(審査員N)

猫の尻尾を梅の枝に見立て、咲く梅を見上げる猫は菱川師宣の「見返り美人図」ならぬ美猫。縦長の2色(白、黒)の色面構成だが、点在する深紅の梅、輝く瞳と伸びゆく枝に配した黄色(金色)のバランスは見事である。醸しだす気高さに猫好きは堪らないだろう。(審査員O)

 

・クリエイティブ賞 三宅由希子/Miyake Yukiko

《浮遊》 アクリル、油彩 キャンバス、パネル

【審査員コメント】
「面白い!」。精緻な描写もさることながら、暗闇で足音を立てずに背後に佇む猫の一幕を、ユニークに僅かなホラーを加味した作品である。こちらの驚きなど我関せず、無表情を決め込む猫の表情はまるで仮面のようだ。(審査員O)

 

・審査員特別賞 MOTOKI

《浮世絵キャット(不死鳥)》 鶏卵紙(土佐表面雁皮紙 未晒)

【審査員コメント】
東洋のフェニックス(不死鳥)とされる霊鳥の鳳凰が、畳の上で眠る猫の背中に転写されるという不思議な世界観をモノクロームのデジタル画像で表現。ベースに使用されているのは1835年、葛飾北斎が74歳頃の「鳳凰図屏風」と思われるが、ここから猫のタトゥへと拡げた発想が素晴らしい。安心して寛ぐ猫は我々をも平和な気持ちにさせてくれる。平和な世にのみ姿を現すという鳳凰と結びつけたのだろうか。(審査員N)

 

・審査員特別賞 谷地元麗子/Yachimoto Reiko

《風鈴猫》 岩絵具、金箔、典具帖紙、楮紙、雲肌麻紙/和紙、パネル

【審査員コメント】
四季の風物詩「風鈴」の音色か、風で揺れる短冊か、ガラスに映る陽光か。猫の無表情さは余計に、猫に思惟的な感情を持って欲しいという我々の思いが込められているとも言える。夏の一瞬を捉えた猫の表情には無限の想像ができる。(審査員O)

 

・審査員特別賞 N

《シャム猫》 デジタル(ibisPaintⅩ)

【審査員コメント】
シャム猫と人間、空間の中で幻想とリアル描写とが、無理なく一つに溶け込み、精神性の深い作者の世界観を見事に表現できている。常に自由な発想で未知の領域にトライしていくとも見える前向きな姿勢がとても興味深い。(審査員S)

 

「美術屋・百兵衛 Online」では、グランプリ受賞者へのインタビューを今後公開する予定だ。引き続き注目してほしい。

Information
「第一回 Gates Art Competition」
会期 2022年1月25日〜2022年3月31日
URL https://gates-art.com

 

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