アーティスト

アーティストインタビュー・西村欣魚
Gates Art Competition – 猫部門 -グランプリ受賞作家

西村 欣魚 《紅梅黒猫》

《紅梅黒猫》 水干絵具、墨/画仙紙 「Gates Art Competition - 猫部門 -」グランプリ受賞作品

 

1月25日(火)から開催されている、「Gates」初の公募入選作品展「第一回 Gates Art Competition」。人物部門と猫部門に分け公募された展覧会だ。
猫部門応募総数285点の中から、見事グランプリに輝いた画家・西村欣魚。今回は、画家を志したきっかけやグランプリを受賞した時の想い、そして実際の展覧会とWeb展覧会の違いなどについて話を聞いた。長く描き続けてきた西村が感じるそれぞれの魅力とは、どのようなものなのだろうか。

《山葡萄》 2020年 水干絵具、墨/画仙紙(色紙) 27.3×24.2cm


──画家を志したきっかけを教えてください。

幼い頃から何かをつくることが大好きな子供でした。小学校の図工大好き少年の一人です。その頃「絵」はあまり好きではなかったのですが、中学・高校の美術部で絵を褒められることが多くなり、芸術系大学に進むことにしました。

──日本画を描く魅力や、楽しいと感じるのはどのような点ですか?
私が描いているのは日本画の中でも、岩絵具を使わない墨彩画と呼ばれるものです。本来私は「飽き性でやりたがり」なたちで、一枚の絵をじっくり仕上げるより短時間で何枚も描く方が向いているのです。ですから私にとって、広く浅く気軽に色々な“もの”を描ける墨彩画は楽しいものです。

また、日本画は自然の美しさや魅力をそのまま画面に表しても許される絵画ジャンルだと思っています。例えば油彩画で雀一匹を描いたとすると「あなたは何を表現したくて雀一匹にしたのか?」と問われそうな気がするのですが、日本画なら「雀が美しくて好きだから」で済むでしょうし、おそらく問われることもないでしょう。風景も同じで「美しいから」で終わり。

元々私自身は、絵を見て感動するということが少なく、代わりに実際の風景や鳥、虫を見て「すごいなぁ~!」と感動することが多いのです。なので日本画のそのままの表現でいい、という点はとても魅力的です。

西村欣魚《小さな橋梁》

《小さな橋梁》 2015年 透明水彩/水彩紙FABRIANO、パネル 91.0×65.2cm


──今回、応募も展示もWebという「Gates Art Competition」に、どんなきっかけで応募されたのでしょうか。

Instagramの広告・公募情報で『猫会議』を見て、「これなら何とかなるかも」と思いました。といいますのも、私は絵を生業にしているため、描いた絵の極々一部しか手元に残っていないのです。今回のWeb上での展示では実物がなくても写真(データ)さえあれば応募できたということが一番のきっかけです。

──グランプリを受賞された感想をお聞かせください。
3点入選の通知が来たときは安心感があり正直「やっぱり」という思いもあったのですが、その後でグランプリ受賞の知らせを受けて「え、こんなあっさりした絵が……?」と驚きました。公募展に出品するのは10年以上ぶり、それでいきなりグランプリを受賞したことは、画家としての面目が立ち嬉しいです。

西村欣魚《花見猫》

《花見猫》 2020年 水干絵具、墨/画仙紙(色紙) 27.3×24.2cm


──西村さんが感じる、実際に足を運んで観る展覧会と、Web上の展覧会それぞれの魅力をお聞かせください。

実際の展覧会では、絵にとって重要な要素である大きさが分かるのが魅力です。また、美術館やギャラリーの音や匂い、雰囲気は行ってみなければ味わえません。出品者としては、額や表装など絵以外の要素や、絵具の厚み、紙の質感を感じてもらえるのが嬉しいです。デメリットは、遠方であるなどの地理的な面や、スケジュールが合わないなどが挙げられるのではないでしょうか。

Webでは、いつでも見られるので「今日はここまで」と区切ることができますし、他の観覧者を気にする必要もなく、好きな絵をいつまでも見続けることができます。先ほどもお話しした通り、実物がなくても展示できるので、人の手に渡った作品も出品できるのは魅力的です。そして何より、世界中どこからでも見られるのはWeb展示ならではだと思います。

しかしながら、絵の大きさを感じにくい点や、ディスプレイによって色が左右されるという点はデメリットと言えます。また実物とWebを比べた場合に受ける印象の差をどれだけ許容してもらえるのか。Webで展示されている「デジタルの画像」は実物の「アナログ作品」とは別のものとして認識されてしまうかもしれません。

Webはカタログ代わりとして出来るだけ多くの人に私の絵と名前を知ってもらい、そこからファンになってくださった方々に実際の展示に足を運んでもらう、というのが現実的な使い方ではないかと思っています。

西村欣魚《鯰》

《鯰》 2011年 墨/和紙 45.5×53.0cm


──今後作品制作や発表をするにあたり、Webに期待することなどはありますか?

“絵を描く人”と“絵を観る人・買う人”との距離を近くすること、接点を多くすることに期待しています。「こんな絵を描く画家がいる!」「こういう絵が好きな人がいる!」という風に、描く人と見る人が大勢集まることのできる場ができれば最高!! 今まで個人の力では全く無理なことでしたから。

──今後の展望をお聞かせください。
これをきっかけに貧乏画家から脱出したいですね。

[Profile]
西村欣魚《猫武者》
西村 欣魚(ニシムラ キンギョ)
1964年 奈良県生まれ
1987年 京都市立芸術大学日本画専攻卒業
1988年 グループ展、春季創画展入選
1989年 グループ展、春季創画展入選
1990年 秋季創画展入選
1995年 大島画廊 個展
2001年 大島画廊 個展
2005年 名鉄アートギャラリー 個展
2008年 大島画廊 個展
2009年 名鉄アートギャラリー 個展
2012年 名鉄クローバーサロンⅠ 個展
2014年 大島画廊 個展
2013年 4月~15年3月 読売新聞関西版 夕刊『味の私記』イラスト担当
2016年 名鉄アートギャラリー 個展
[展示予定]
『Gates Art Competition グランプリ作家 西村欣魚個展(仮)』
会期 2022年4月15日〜5月末
会場 Gates Museum「Art in White」