展覧会

大阪中之島美術館 国立国際美術館 共同企画
すべての未知へ ー GUTAI 分化と統合

会場:大阪中之島美術館、国立国際美術館 会期:2022年10月22日(土)
     〜2023年1月9日(月・祝)

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1954年に結成され、1972年にリーダーの吉原治良(1905~1972)の死によって幕を閉じた、実験的な美術家集団、具体美術協会。
単に「具体」とも呼ばれ、「もの派」と並んで日本の現代美術を代表するこの団体は、戦後日本の前衛的な美術運動を深化させた“伝説”として、今なお、強い存在感を放っている。その解散から50年を迎えた今年、大阪中之島美術館と国立国際美術館で、彼らの軌跡を辿る展覧会が開催されることとなった。

吉原治良《作品》1962年 油彩/キャンバス 東京都現代美術館蔵
出品会場:大阪中之島美術館

 

「われわれの精神が自由であるという証を具体・・的に提示」する

画家の吉原治良を中心に兵庫県芦屋市で結成されたこの集団が掲げたのは、絵画をはじめとする多様な造形実践を通して「われわれの精神が自由であるという証を具体的に提示」すること。吉原による指導のもと、会員たちがそれぞれの独創を模索した18年間は、美術史に色濃く刻まれることとなった。
初期の作品では、パフォーマンスや大掛かりなインスタレーションに重きが置かれた。
紙を引き裂く村上三郎、足で泥を捏ねる白髪一雄、絵の具を詰めたボトルを投げつける嶋本昭三、電球や管球によるドレスを纏う田中敦子……。
彼らは誰の真似もせず、互いに異質であろうとしながら、あくまで一集団としてまとまろうとした。その姿勢は、吉原が「具体美術宣言」の中で述べた美術のあるべき姿、つまり「人間精神と物質とが対立したまま、握手している」状態とも重なりあうものだと言えるだろう。

村上三郎《作品》画像

村上三郎《作品》1957年 ミクストメディア/板
芦屋市立美術博物館蔵 ©MURAKAMI Tomohiko
出品会場:国立国際美術館

田中敦子《電気服》画像

田中敦子《電気服》1956/86年 管球、電球、合成樹脂エナメル塗料、コード、制御盤 高松市美術館蔵
撮影:加藤成文 ©Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association
出品会場:大阪中之島美術館

「分化」と「統合」──その二つの視点から

今回開催される展覧会は、具体の活動拠点である「グタイピナコテカ」が建設された地、大阪の中之島でその歩みを「分化」と「統合」という二つの視点から捉え直す試み。この地では初となる具体の大規模な展覧会だ。
大阪中之島美術館で具体を「分化」させ、それぞれの独創の内実に迫りつつ、国立国際美術館では具体を「統合」し、集団全体の、うねりを伴う模索の軌跡を追う。それによって目指すのは、新しい具体の姿を提示することだ。

松谷武判《繁殖 65-24》画像

松谷武判《繁殖 65-24》 1965年
ビニール接着剤によるレリーフ、油彩、アクリル/キャンバス、合板
国立国際美術館蔵
出品会場:大阪中之島美術館


──具体を「分化」する/大阪中之島美術館

「人のまねをするな、今までにないものをつくれ」という、吉原治良の言葉は、具体が先駆的かつ独創的であることを端的に表すものとして語り継がれている。しかし、実際の彼らのその内実は明らかにされていない。
「分化」をテーマとする大阪中之島美術館では、具体の制作からいくつかの要素を抽出し、個々の制作のありようを子細に検証。ここでは「具体は多様である」という結論に帰着することなく、「多様であることを前提」に、「どのような表現が受け容れられてきたのか最大限可視化する」ことで、「具体というグループの本質に迫ろう」という試みだ。

名坂千吉郎《作品》画像

名坂千吉郎《作品》1970年頃 ステンレス 宮城県美術館蔵
出品会場:大阪中之島美術館

⽩髪⼀雄《ミスター ステラ》画像

⽩髪⼀雄《ミスター ステラ》1958年 油彩、和紙/キャンバス 大阪中之島美術館蔵
出品会場:大阪中之島美術館

 

──具体を「統合」する/国立国際美術館
具体、その出発点は少なくとも「画家」集団だった。時代が下るにつれ多様化していく造形実践の数々も、絵画という規範からの自由をめざした結果と言えるだろう。
絵画らしさをいかに解体し再構築するか、絵画「らしさ」をどう捉えているのか、また、それを解体してなお絵を描こうとするのか否か……。国立国際美術館では、マクロな視点に立って具体の歩みを眺め、さまざまに展開される問いなおしの作業に、いくつかの傾向を見出そうと試みる。
必ずしも一枚岩でないこの集団の、内なる差異をあぶりだし、そのうえで「統合」してみせることが主な目的だ。

ヨシダミノル《JUSTCURVE '67 Cosmoplastic》画像

ヨシダミノル《JUSTCURVE '67 Cosmoplastic》1967年 ステンレス、プラスティック、蛍光灯、センサーほか  高松市美術館蔵
出品会場:国立国際美術館

金山明《作品》画像

金山明《作品》1954年 油彩/合板 東京都現代美術館蔵
©Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association
出品会場:国立国際美術館

 

戦後日本美術のひとつの原点として、神話的に語られる具体美術協会。彼らの18年間の軌跡を会場で辿っていただきたい。

■出品作家:今井祝雄いまいのりお、今中クミ子、上前智祐うえまえちゆう、浮田要三、大原紀美子、小野田實おのだみのる、金山明、菅野聖子、聴濤襄治きくなみじょうじ喜谷繁暉きたにしげき、木梨アイネ、坂本昌也、嶋本昭三、白髪一雄、白髪富士子、鷲見康夫、田井智、高﨑元尚、田中敦子、田中竜児、坪内晃幸、猶原通正なおはらみちまさ、名坂千吉郎、名坂有子、堀尾昭子、堀尾貞治、前川強、正延正俊まさのぶまさとし、松田豊、松谷武判まつたにたけさだ、向井修二、村上三郎、元永定正、森内敬子、山崎つる子、吉田稔郎、ヨシダミノル、吉原治良、吉原通雄

正延正俊《作品》画像

正延正俊《作品》1960年 油彩/キャンバス 国立国際美術館蔵
出品会場:国立国際美術館

「インターナショナル スカイ フェスティバル」の再現

大阪中之島美術館では2022年11月15日(火)〜20日(日)の期間中、具体の空中展覧会「インターナショナル スカイ フェスティバル」の再現がおこなわれる。
1960年に大阪・なんば髙島屋の屋上で具体が実施した「インターナショナル スカイ フェスティバル」は、具体の会員や海外の作家による下絵を拡大して描き、アドバルーンに吊って空中に展示した。
今回の展示は、当時の発表内容とは異なるが、大空での展覧会を体感できる内容となっている。
同館の屋上より、7球のアドバルーンが掲揚される予定だ。
※荒天時、日程変更の可能性あり。同館公式ホームページを参照。

[information]
大阪中之島美術館 国立国際美術館 共同企画 すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合
・会期 2022年10月22日(土)〜2023年1月9日(月・祝)
・観覧料 2館共通券2,500円

◎大阪中之島美術館
・会場 5階展示室
・住所 大阪市北区中之島4-3-1
・電話 06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
・時間 10:00〜17:00 ※入場は閉場の30分前まで
・休館日 月曜日(ただし、1月9日[月・祝]、1月2日[月・祝]は開館)、12月31日(土)、1月1日(日・祝)

・観覧料 
一般1,400円、大学生1,100円
※高校生以下、18歳未満無料(要証明)
※心身に障がいのある方とその付添者1名は半額(要証明)
・URL https://nakka-art.jp/exhibition-post/gutai-2022/

◎国立国際美術館
・会場 地下2階展示室
・住所 大阪市北区中之島4-2-55
電話 06-6447-4680(代)
・時間 10:00〜17:00 (金・土曜日20:00 まで)※入場は閉場の30分前まで
・休館日 月曜日(ただし、1月9日[月・祝]は開館)、12月28日(水)〜 1月3日(火)
・観覧料 一般1,200(1,000)円、大学生700(600)円
※高校生以下、18歳未満無料(要証明)
※カッコ内は夜間割引料金(対象時間:金・土曜日の17:00〜20:00)
※心身に障がいのある方とその付添者1名は無料(要証明)
・URL https://www.nmao.go.jp/events/event/gutai_2022_nakanoshima/