展覧会

マティス展

会期
4/27(木)〜8/20(日)
会場
東京都美術館

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20世紀を代表するフランスの巨匠、アンリ・マティス(1869‒1954年)。東京都美術館で開催しているのは、日本では約20年ぶりとなる彼の大規模な回顧展だ。

アンリ・マティス《赤の大きな室内》画像

アンリ・マティス 《赤の大きな室内》1948年 油彩/キャンバス
ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle

マティスは、純粋な色彩による絵画様式であるフォーヴィスム(野獣派)を生み出し、モダン・アートの誕生に決定的な役割を果たした。84歳で亡くなるまでの生涯を、感覚に直接訴えかけるような鮮やかな色彩と光の探求に捧げ、今日に至るまで多くの芸術家たちに大きな影響を与え続けている。

本展は世界最大規模のマティス・コレクションを所蔵するポンピドゥー・センター*の全面的な協力を得て開催するもの。絵画に加えて、彫刻、ドローイング、版画、切り紙絵など、各時代の代表的な作品によって多角的にその仕事が紹介される。また、晩年の最大の傑作であり、マティス自身がその生涯の創作の集大成とみなした南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂に関する資料にも注目してほしい。豊かな光と色に満ちた、巨匠の造形的な冒険を辿ろう。

*ポンピドゥー・センター
1977年の開館以来、世界に開かれた芸術創造の場としてパリの街に深く根をおろしている総合文化施設。その象徴的な建物には、ヨーロッパ随一かつ世界最大規模の近現代美術のコレクションが収蔵されており、なかでもマティスは、質量ともに世界有数のコレクションとしても知られている。同センターは、展覧会、シンポジウム、フェスティバル、ショー、上映会、若者向けのワークショップなどを開催しており、毎年350万人以上が訪れる。文化や作品に触れる機会をより多くの人々に提供することを目指して、国内外でも活動の幅を広げている。

展覧会構成
1章 フォーヴィスムに向かって(1895‒1909)
法律家になる道を捨て、画家になることを決心し修行をはじめたマティスは、パリ国立美術学校で象徴主義の画家ギュスターヴ・モローのアトリエに入り、伝統的な画法から離れ、新しい絵画の探求を始める。
本章では、画家としてのアイデンティティを確立していく最初期から、大胆な色彩と筆致による「フォーヴィスム(野獣派)」の立役者としてスキャンダルを巻き起こしながら注目を集めたのち、平面的で装飾的な画面構成を始めるまでの、マティスの20世紀初頭の活動を紹介する。特に、ここで紹介されるマティス初期の傑作と名高い『豪奢、静寂、逸楽』は、日本で初めて公開されるもの。ぜひ会場で観てほしい。

アンリ・マティス《豪奢、静寂、逸楽》画像

アンリ・マティス 《豪奢、静寂、逸楽》 1904年 油彩/キャンバス
ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle

2章 ラディカルな探求の時代(1914‒1918)
第一次世界大戦中、息子ふたりを含む周りの人間が徴兵されるなか、ひとり残されたマティスは、この状況に抵抗するかのように、画家の転機となるような革新的な造形上の実験を推し進める。
本章では、マティスがアトリエと開放的な窓というモチーフによって、内と外を融合させながらひとつの絵画空間を成立させようとする試みを紹介。また、キュビスムの影響のもと、抽象化という造形的な実験のモチーフとして扱った肖像画の数々も展示される。
ここで紹介される『コリウールのフランス窓』は、第一次世界大戦勃発直後に描かれた謎めいた作品。西洋絵画における視覚のメタファーである窓が、黒く塗りつぶされて、視線の侵入を拒み鑑賞者に向かって跳ね返す、内部であり外部であるような両義的な色面として出現している。

アンリ・マティス《コリウールのフランス窓》画像

アンリ・マティス《コリウールのフランス窓》1914年 油彩/キャンバス
ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle

3章 並行する探求 ──彫刻と絵画(1913‒1930)
彫刻はマティスにとって、その造形活動全体にリズムを与えるもの。絵画のアイデアが素材との接触のなかで模索されている転換期に、彫刻が顕れるのだ。
本章では、女性の頭部の再現ではなく、それを作る「過程」を主題にした1910年代の「ジャネット」シリーズから、1925年前後に集中的に制作された、彼にとっては絵画と彫刻の両面で重要なモデルであった「アンリエット」の頭部のシリーズ、そして20年にわたって探求されたモチーフである「背中」シリーズまで、その主要な彫刻作品を紹介しながら、絵画と彫刻の往還によって紡がれる彼の造形的な実験を辿る。

アンリ・マティス《背中Ⅰ‒IV》画像

アンリ・マティス《背中I‒IV》1909‒1930年 ブロンズ
ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle

4章 人物画と室内画(1918‒1929)
1920年代、ニースに居を構えたマティスは、以前よりも小さいキャンバスを用いて、肖像画や室内画、風景画を描き、伝統的な絵画概念に向き合うようになる。
本章では、人物画と室内画を中心に、マティスがこれまでの造形的な実験を再検証した10年間の試みを紹介。この頃からマティスにとって重要なモチーフとなる、イスラムのスルタンに仕える女性「オダリスク」は、先人たちが描いてきた異国趣味の歴史に連なると同時に、人物と空間を絵画的緊張のなかに配する探求に欠かせないものだった。また、この時期に描かれた、生き生きとした画家のまなざしを感じさせるドローイング群も多数紹介される。

5章 広がりと実験(1930‒1937)
1930年代のマティスは、アメリカやオセアニアを旅し、新しい光と空間に触れながら、再び豊かな造形上の探求に戻ることになる。
本章では、『座るバラ色の裸婦』(1935‒1936)や『夢』(1935)など、最晩年までマティスの特別なモデルとなるリディア・デレクトルスカヤを描いた作品を中心に、絵画のフォーマットに人物の形態を挿入する方法について、無数のバリエーションを伴いながら追求したこの時期の試みなどを紹介する。

アンリ・マティス《夢》画像

アンリ・マティス《夢》1935年 油彩/キャンバス
ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle

6章 ニースからヴァンスへ(1938‒1948)
再び戦争がはじまり、高齢と病気のためにフランスを離れることをあきらめたマティスは、療養を続けながらニースからヴァンスへと居を移す。彼は、寝たきりの時期であってもドローイングや本の挿絵の制作などに没頭し、ドローイング集『主題と変奏』をはじめとする重要な仕事を残している。
本章では、色彩に満ちた画家のアトリエという彼の長年の探求の集大成といえる大画面のキャンバス作品群から、マティスが装丁を手がけた美術文芸誌『ヴェルヴ』など、この時期の多彩な仕事を紹介する。

7章 切り紙絵と最晩年の作品(1930‒1954)
1930年代より習作のための手段として用いてきた切り紙絵が、40年代になると、マティスにとって長年の懸案事項であった色彩とドローイングの対立を解消する手段として、重要なものとなっていく。
本章では、「ハサミで描く」というこの画期的な手法によって生み出された、巨匠の最晩年の豊かな作品群を紹介する。グワッシュで彩色された鮮やかな切り紙絵による書籍『ジャズ』、絵画空間に人物の形態をいかに挿入するかという、マティスの長年の探求の終着点とも言える大画面の切り紙絵、さらには、建築的なスケールで展開するようになったこの時期の代表的な作例として、切り紙絵を原画にして制作され、アトリエの壁に設置された2枚組の大作『オセアニア』などが展示される。

アンリ・マティス《イカロス(版画シリーズ〈ジャズ〉より)》画像

アンリ・マティス《イカロス(版画シリーズ〈ジャズ〉より)》1947年 ポショワール/アルシュ・ヴェラン紙
ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle

8章 ヴァンス・ロザリオ礼拝堂(1948‒1951)
最晩年にあたる1948年から1951年にかけて、マティスはヴァンスのロザリオ礼拝堂のためのプロジェクトに没頭する。建築、装飾、家具、オブジェ、典礼用の衣装などを含むこの総合芸術のために、彼はドローイング、彫刻、切り紙絵など、これまで探求してきた技法を駆使して、光と色と線が融合する空間の創出を目指した。
本章では、ヴァンスの内部や制作中のマティスの様子を伝える豊富な資料とともに、装飾や典礼用の衣装のデザインのために彼が残したドローイング類などを展示。さらに本展のために撮りおろした映像とあわせて、このマティスの最高傑作と言われる色と光にあふれた空間が、多角的に紹介される。

アンリ・マティス《ヴァンス礼拝堂、ファサード円形装飾〈聖母子〉(デッサン)》画像

アンリ・マティス《ヴァンス礼拝堂、ファサード円形装飾〈聖母子〉(デッサン)》
1951年 墨/キャンバスで裏打ちした紙
カトー゠カンブレジ・マティス美術館
Photo musée départemental Matisse (DR)

 

この展覧会では、若き日の挑戦から晩年の大作まで、巨匠・マティスの芸術を辿ることができる。ぜひその目で鑑賞し、色彩の旅を楽しんでほしい。

アンリ・マティス(1922年、マン・レイ撮影)画像

アンリ・マティス
(1922年、マン・レイ撮影)
© Man Ray Trust / Adagp, Paris Photo © Centre Pompidou, MNAMCCI/Dist.RMN-GP

アンリ・マティス
1869年、北フランス、ノール県のル・カトー=カンブレジに生まれる。パリ国立美術学校でギュスターヴ・モローに師事したのち、伝統的な絵画から脱するべく模索を続け、1905年のサロン・ドートンヌ展ではからずも「フォーヴィスム(野獣派)」のリーダーとして脚光を浴びる。後には南仏ニースに移住し、独特の光に触れがら新たな調和と均衡を求めて絵画の革新を進め、集大成といわれる最晩年の南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂まで、生涯色と形による造形的な探究を続けた。1954年ニースで没。

[information]
マティス展
・会期 4月27日(木)〜8月20日(日)
・会場 東京都美術館 企画展示室
・住所 東京都台東区上野公園8-36
・電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
・時間 9:30~17:30、金曜日は20:00まで ※入室は閉室の30分前まで
・休室日 月曜日、7月18日(火)
※ただし、5月1日(月)、7月17日(月・祝)、8月14日(月)は開室
・観覧料 一般2,200円、大学生・専門学校生1,300円、65歳以上1,500円
※日時指定予約制。詳細はチケット予約サイトを参照。
・URL https://matisse2023.exhibit.jp