展覧会

デイヴィッド・ホックニー展

会期
7/15(土)~11/5(日)
会場
東京都現代美術館

イヴィッド・ホックニー《クラーク夫妻とパーシー》画像

デイヴィッド・ホックニー《クラーク夫妻とパーシー》
1970-71年 テート © David Hockney

世界を魅了し続けるアーティストの27年ぶり大規模個展。
世界初公開の新作も!
東京都現代美術館では7月15日から11月5日まで、「デイヴィッド・ホックニー展」(主催:東京都現代術館、読売新聞社)が開催されている。現代で最も革新的な画家のひとり、デイヴィッド・ホックニー(1937年イギリス生まれ)の日本では27年ぶりとなる大規模個展だ。

この展覧会は全8章で構成される。1959年、デイヴィッド・ホックニーはロンドンの王立美術学校に入学。抽象表現主義やポップ・アートが欧米の美術を席巻していた当時、様々な様式や作家たちに学び 、 その影響を作品に反映させる一方で、特定の動向に与することなく自らの表現を切り拓こうとした若き画学生は『イリュージョニズム風のティー・ペインティング』などの意欲作を発表し、時代の寵児として一躍注目を集めた。

1964年、ロサンゼルスに移住したホックニーは、南カリフォルニアの開放的な空気の下、明るい日差しが降り注ぐプールの水面やスプリンクラーの水しぶきを描いた。刻々と変化する光の反射や水の動きをいかにとらえるかという、こうした造形上の試みは、長年ホックニーの関心をかき立て、新たな画材や描写の探究につながったと言える。

デイヴィッド・ホックニー《スプリンクラー》画像

デイヴィッド・ホックニー《スプリンクラー》
1967年 東京都現代美術館 © David Hockney

ホックニーはまた、実に多くの肖像画を手がけている。代表作『クラーク夫妻とパーシー』のように、 「ダブル・ポートレート」 と呼ばれる二人の人物が描かれた構図は、その代名詞の一つと言えるだろう。 ホックニーが目を向けるのは、家族や恋人、友人たちといった近しい関係の人々。こうした肖像画からは、目の前にいる相手をじっと見つめ、その人の内面までとらえようとする画家の静謐な眼差しがうかがえる。

「同じことを反復するのではなく新しいなにかを発見したい」と語るホックニーにとって、自らの芸術を次々と変貌させた20世紀の巨匠ピカソは最も敬愛すべき画家であった。 1980年代、ピカソのキュビスムや中国の画巻を参照しながら生み出された「フォト・コラージュ」や〈ムーヴィング・フォーカス〉シリーズは、「見る」という現実の経験をそのまま平面上に再現した画期的な作例。こうした複数の視点の統合というアプローチは、近年の「フォト・ドローイング」やマルチチャンネルの映像作品にも引き継がれている。

展覧会の後半部分で展示される作品は、すべて日本初公開となるもの。 1997年からおよそ15年間、ホックニーは幼少期に慣れ親しんだヨークシャー東部の自然や風物を抒情豊かに描いた。例えば、破格の大きさを誇る2007年作の『ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作』と題する油彩画は、タイトルが示すように複数のキャンバスを戸外に持ち出し、自然光の下でモチーフとなる木々を前にして制作された風景画だ。

デイヴィッド・ホックニー《春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》画像

デイヴィッド・ホックニー《春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》
2011年 ポンピドゥー・センター © David Hockney Photo: Richard Schmidt

また、2010年4月の発売と同時にホックニーが入手したタブレット型端末iPadは、その創作に新境地を開いた。大型の油彩画とiPadドローイングで構成される『春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年』シリーズは、日ごとに劇的な変化を遂げる世界と向き合い、克明に描き切ったホックニーの卓越した力量を物語っている。

2019年、ホックニーはフランス北西部のノルマンディーに拠点を移した。その後まもなくして、未知の感染症の予期せぬ拡大によって世界中が一時停止。しかし、辺境の地でその影響をほとんど受けることがなく、周辺の自然や季節の移ろいを真摯に見つめ続けた画家は、ついに全長90メートルの大作『ノルマンディーの12か月 2020-2021年』に挑んだのだ。

デイヴィッド・ホックニー《ノルマンディーの12か月 2020-2021年》画像

デイヴィッド・ホックニー《ノルマンディーの12か月 2020-2021年》(部分)
2020-21年 作家蔵 © David Hockney

2023年に86歳を迎えてなお一層制作に打ち込み、自らの芸術を刷新し続けるホックニー。今回の「デイヴィッド・ホックニー展」では、60年以上にわたり現代美術の第一線で活躍し、新作を発表し続ける彼の「今」を見ることができる。

デイヴィッド・ホックニー《ノルマンディーの12か月 2020-2021年》画像

デイヴィッド・ホックニー《ノルマンディーの12か月 2020-2021年》(部分)
2020-21年 作家蔵 © David Hockney

ホックニーの作品を150点所蔵する東京都現代美術館では、開館まもない1996年に「デイヴィッド・ホックニー版画展」が開催された。今回の展覧会では、こうした作家と美術館の継続的な関係性をもとに構想され、作家からの全面的な協力を受けて実現された待望の個展。視線の先に広がる身近な日常をひたむきに描きとめ、それらを他者と惜しみなく分かち合おうとしてきたホックニーの創作の歩みをたどるものだ。

コロナ禍で制作された作品には、国や文化、世代の違いを越えて、同じ時代を生きている者にしか感じ取ることができないメッセージがあるはず。2023年だからこそ出会える作品の数々を、ぜひ直接会場で体感してほしい。

デイヴィッド・ホックニー写真

デイヴィッド・ホックニー ノルマンディーにて 2021年4月1日
© David Hockney Photo: Jean-Pierre Gonçalves de Lima

デイヴィッド・ホックニー
David Hockney

1937年イングランド北部のブラッドフォードに生まれ、同地の美術学校とロンドンの王立美術学校で学ぶ。 1964年ロサンゼルスに移住し、アメリカ西海岸の陽光あふれる情景を描いた絵画で一躍脚光を浴びた。 60年以上にわたり美術表現の可能性を探る試みを続け、現在はフランスのノルマンディーを拠点に、精力的に新作を発表している。2017年には生誕80年を記念した回顧展がテート・ブリテン(ロンドン)、ポンピドゥー・センター(パリ)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)を巡回し、テート・ブリテンでは同館の記録となる約50万人が来場するなど、ホックニーは現代を代表する最も多才なアーティストのひとりとしてその名を確立している。

[information]
デイヴィッド・ホックニー展
・会期 2023年7月15日(土)~11月5日(日)
・会場 東京都現代美術館 企画展示室1F/3F
・住所 東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
・時間 10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
・休館 月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
・観覧料 一般2,300円、大学生・専門学校生・65歳以上1,600円、中高生1,000円、小学生以下無料
【オンライン限定】平日限定ペアチケット4,000円/グッズ付チケット4,400円(限定各200)
オンラインチケット(前期分7/15~9/15)販売ページ https://www.e-tix.jp/mot/
【2展セット券】「デイヴィッド・ホックニー展」+「あ、共感とかじゃなくて。」
一般3,200円、大学生・専門学校生・65歳以上2,100円、中高生1,250円
※「MOTコレクション」も観覧可能
※小学生以下は保護者の同伴が必要
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料
・TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル/9:00~20:00 年中無休)
・URL https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/hockney/