展覧会

飯川雄大 デコレータークラブ  
同時に起きる、もしくは遅れて気づく

会場:彫刻の森美術館 会期:2022/7/30(土)〜 2023/4/2(日)

飯川雄大《デコレータークラブ メイクスペース、ユーズスペース》2022 年展示風景:兵庫県立美術館 撮影:飯川雄大

飯川雄大《デコレータークラブ メイクスペース、ユーズスペース》2022年
展示風景:兵庫県立美術館 撮影:飯川雄大

彫刻の森美術館では2022年7月30日(土)から2023年4月2日(日)までの約8ヶ月間、「飯川雄大たけひろ デコレータークラブ 同時に起きる、もしくは遅れて気づく」を開催する。現代の新しい創作表現を紹介するシリーズの、第8回目となるこの展覧会。コロナ禍を経て4年ぶりに開催される。

飯川雄大《デコレータークラブ ―新しい観客》2022 年展示風景:兵庫県立美術館 撮影:飯川雄大

飯川雄大《デコレータークラブ ―新しい観客》2022年
展示風景:兵庫県立美術館 撮影:飯川雄大

兵庫県神戸市出身の飯川は、人の認識の不確かさや、日常のなかで見過ごされてしまう事象に着目し、鑑賞者に何かを見つけたときの「衝動」を感じさせたり、能動的な反応を促したりするようなインスタレーション作品を発表している。全国各地の美術館やアートフェスティバルで作品を発表する、近年活躍が目覚ましいアーティストの一人だ。

飯川雄大《デコレータークラブ ―0 人もしくは 1 人以上の観客に向けて》2022 年 展示風景:「感覚の領域 今、『経験する』ということ」国立国際美術館 撮影:飯川雄大

飯川雄大《デコレータークラブ ―0 人もしくは 1 人以上の観客に向けて》2022年
展示風景:「感覚の領域 今、『経験する』ということ」国立国際美術館 撮影:飯川雄大

飯川雄大《デコレータークラブ ─ 0 人 もしくは1 人以上の観客に向けて》2021 年展示風景:千葉市美術館 撮影:飯川雄大

飯川雄大《デコレータークラブ ─ 0人もしくは1人以上の観客に向けて》2021年
展示風景:千葉市美術館 撮影:飯川雄大

本展では、飯川が2007年から展開している〈デコレータークラブ〉シリーズの新作インスタレーションを中心に紹介。鑑賞者が能動的に関わることで変容していく空間や物質を、身体的・感覚的に捉えさせるインスタレーション作品《デコレータークラブ ─ 0人もしくは1人以上の観客に向けて》、誰かの忘れ物であるかのような《デコレータークラブ ─ベリーヘビーバッグ》のほか、最新作の大型インスタレーション2点が美術館の屋内外に展示される。

飯川雄大《デコレータークラブ ―ピンクの猫の小林さん―》2020 年 展示風景:横浜市金沢区並木団地、並木クリニック中庭 撮影 : 阪中隆⽂

飯川雄大《デコレータークラブ ―ピンクの猫の小林さん―》2020年
展示風景:横浜市金沢区並木団地、並木クリニック中庭 撮影 : 阪中隆⽂

屋外の環境を活かした《デコレータークラブ ─ピンクの猫の小林さん─》は、迫力ある大きさであるにも関わらず、一目では全貌をとらえることができない彫刻作品が木々の中に潜むというもの。ヘンリー・ムーアやアントニー・ゴームリー、ニキ・ド・サン・ファールといった近現代を代表する彫刻家の作品が展示され、館内でも人気スポットである緑陰広場。その緑深い森林エリアに、新しい魅力的な景色を生み出す試みだ。また、過去に発表した映像作品もあわせて公開し、作品に通底する飯川の着眼点にも迫る。

飯川雄大《デコレータークラブ 配置・調整・周遊》2020 年 展示風景:ヨコハマトリエンナーレ 2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」 撮影:飯川雄大

飯川雄大《デコレータークラブ 配置・調整・周遊》2020年
展示風景:ヨコハマトリエンナーレ 2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」 撮影:飯川雄大

展覧会に向けて、飯川自身は次のようなメッセージを寄せている。

〈デコレータークラブ〉シリーズは 2007 年から始まりました。飾りつけをするクラブ活動みたいですが、世界中の海に生息し擬態する性質を持った蟹の名前(Decorator Crab)に由来しています。昔、この蟹を紹介するドキュメンタリー番組を見た時、ダイバーが海の中で何だかわからないモノ(実は蟹)を見つけたときの驚きが全く伝わってこなくて。たくさんの⾔葉や映像を使っても、どうしても伝えることができない部分があるということが⾯⽩かったんです。蟹は天敵から身を守るため、誰にも見つからないように行動しているだけ。でも、人は勝⼿に特別な状況だと感じたり、別の価値をつけたり、一⽅通行のコミュニケーションから新しい要素を生み出している。

この展覧会には、鑑賞者が展示空間で試行錯誤して起こした行為が、別の場所で新たな事象として現れる作品があります。けれどそれを同時に把握することはできなくて、両⽅を確認するためには、物理的距離が生む時間の差や遅れ、そして鑑賞者が作品を認識する、気がつくまでの距離が生まれます。鑑賞者がふたつの距離を捉えて、その情報を得た時にようやく作品が始まる。彫刻の森美術館は広いから、会場では見ることはできずに、インターネット上にある記事や口コミ、展覧会のカタログで見たり、もしくは全く気づかないかもしれない。そのタイミングはすぐかもしれないし、1 日、数年後かもしれない。極端に⾔うと、次の展覧会もそのタイミングを作れたり、補完できたりするといいなと思います。デコレータークラブはいろんな場所で作れるんです。

飯川雄大《デコレータークラブ 配置・調整・周遊》2022 年 展示風景:「感覚の領域 今、『経験する』ということ」国立国際美術館 撮影:麥生田兵吾

飯川雄大《デコレータークラブ 配置・調整・周遊》2022年
展示風景:「感覚の領域 今、『経験する』ということ」国立国際美術館 撮影:麥生田兵吾

飯川の作品は、幅広い来館者層へもアプローチする、可愛らしく接しやすい表層を持ちつつも、人間のコミュニケーションの不完全さや、時には遅れてやってくる“気づき”そのものへの興味に焦点を当てている。鑑賞者の行為によって起きる偶然をポジティブに捉え、時間や距離が離れた場所にも出来事を送り届けることを試みているのだ。彼の代表シリーズ〈デコレータークラブ〉は、観る者に行動と思考を誘発しながら展開していく。

約8ヶ月という長期にわたって開催されるこの展覧会。彫刻の森美術館の、野外美術館としての地形や特性を生かして展開していく作品は、季節の移ろいとともに様々な表情を見せてくれることだろう。

飯川雄大《デコレータークラブ ―ピンクの猫の小林さん―》2019 年 展示風景:「六本木クロッシング 2019 展:つないでみる」森美術館 撮影 : うつわ

飯川雄大《デコレータークラブ ―ピンクの猫の小林さん―》2019年
展示風景:「六本木クロッシング 2019 展:つないでみる」森美術館 撮影 : うつわ

さらに、小田急沿線や箱根町内に《ピンクの猫の小林さん》の “猫探しポスター”と“足跡” が登場。足跡を辿り、彫刻の森美術館の緑陰広場に隠れてしまった《ピンクの猫の小林さん》を探しに行くというストーリーだ。美術館に行くまでの道のりにも、心を弾ませる美術体験が待っている。

 

【猫探しポスター】
期間:2022年7月25日(月)〜8月7日(日)
場所:小田急線全駅

【猫探しポスター・足跡】
期間:2022年7月25日(月)~8月23日(火)
場所:箱根町(根登山鉄道 箱根湯本駅、彫刻の森駅、強羅駅、早雲山駅、大涌谷駅、桃源台駅)

【関連イベント】
■アーティストトーク
7月30日(土)、7月31日(日)13:00~

■ワークショップ
10月8日(土)、10月9日(日)
※最新情報は、美術館オフィシャルサイトおよびSNSなどで告知

[information]
飯川雄大 デコレータークラブ
同時に起きる、もしくは遅れて気づく
・会期 2022年7月30日(土)~2023年4月2日(日)
・会場 彫刻の森美術館 緑陰広場・アートホール
・住所 神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平1121
・時間 9:00~17:00(⼊館は閉館の30分前まで)
・休館日 なし(年中無休)
・入館料 大人1,600円、大・⾼校生1,200円、中・小学生800円
※毎週土曜日はファミリー優待日のため保護者1名につき小・中学生5名まで無料
・TEL 0460-82-1161
・URL https://www.hakone-oam.or.jp

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