アーティスト

川邊りえ インタビュー 
-少女と猫のミステリアスな魅力-

川邊りえ《ファミリー》

《ファミリー》2022年 油彩、アルキド樹脂絵具/キャンバス 27.3×22.0cm

山形県出身の洋画家・川邊りえ。彼女の描く少女たちは、どこか秘密めいた雰囲気をかもし出している。人形のように繊細で、血色の良い頬は林檎のように赤く、自然と視線が吸い寄せられるのだ。少女とともに描かれるモチーフも幻想的で、観る者に様々な物語を想像させる。中でも度々登場するのが猫たちだ。
書店街として有名な東京神田神保町にあるシェア型書店「猫の本棚」。そのオーナーから、愛猫をモデルにしたメインキャラクターの作画を依頼されるなど、猫好きの間でも彼女の作品の人気は高まっている。
REIJINSHA GALLERYで7月15日から開催される展覧会「猫会議 2022」に参加予定の川邊に、猫との関係や「猫会議 2022」出展作について尋ねた。

猫の本棚のオリジナル・キャラクター画像

川邊りえが手掛けた、「猫の本棚」のメインキャラクター

 「猫の本棚」についての記事はこちら

 

──絵画の道に進んだ理由をお聞かせください。

子供の頃から絵を描く事が好きで、映画の看板を描く仕事や絵を教える仕事、画材屋さんなど、絵の近くに居られる仕事なら何にでも憧れていました。

──制作するときに、大切にされていることは何でしょうか?

息をするように当たり前の事として、絵を描きたいと思っています。
また、私にとって絵を描く事は、「鶴の恩返し」で「おつう」が自分の羽根を抜いて「鶴の千羽織り」を織るように、自分の一部を抜き取ってはキャンバスに置いていく作業ですので、自分が空っぽにならないように、インプットしていく事も大切にしています。
※木下順二の戯曲『夕鶴』には、鶴の化身である「つう」という名前の女性が登場する。

──作品に物語性を感じますが、どのようなものがインスピレーションの源になっているのでしょうか?

生活の中で見聞きした事の他に、映画や歌詞などに感じた「ひっかかり」が頭の中にたまり、熟成されて、ある日ふとしたきっかけで降りて来て、絵になる事が多いです。
それぞれの作品は、私の中の物語を形にしたものです。それが、ご覧になった方ご自身の物語の一部になれば嬉しいです。

川邊りえ《気分上々》

《気分上々》 2022年 油彩、アルキド樹脂絵具、箔/キャンバス 22.0×27.3cm

──「猫会議2022」で出展予定の作品は、どのようなことを意識して制作されましたか?

日がな一日、猫とくっついていたいという私の「もふもふ願望」をストレートに描いています。今回は特に、猫だけの絵にも挑戦しました。

──川邊さんにとって猫はどのような存在ですか?

猫は、鋭い爪も牙も持っているのに、(大抵は)友好的でいてくれる美しい友人です。

──猫との思い出についてお話しください。また、猫が制作に与えた変化などはありますか?

母猫に置き去りにされた生後2、3日の野良猫を保護して育てた経験から、猫に魅了されました。
子猫ははじめ鳥の雛にしか見えませんでしたが、やがて目が開きフワフワの毛が生えそろい、猫用ミルクから離乳食を経て、体重8㎏の立派な猫に成長しました。
今は別の保護猫と暮らしていますが、猫と暮らす生活を始めてから、描く絵が“猫まみれ”です。

川邊りえ《絶対安全猫》

《絶対安全猫》 2022年 油彩、アルキド樹脂絵具、箔/キャンバス 18.0×24.0cm

──作品を通して表現したいことや、これから挑戦したいことについてお聞かせください。

私が好きなもの、気持ちが良いものを描きたい。それを私らしく表現したいです。
まだ構想中ですが、近日中にF130号(194×162cm)の人物画の中に、猫の大家族を描こうと目論んでいます。

 

「猫会議 2022」出展作の中にも、複数の人物と猫が描かれた《ファミリー》という作品がある。大作に向けての取り組みだろうか。夢のように甘美な川邊の作品世界から、今後も目が離せない。

 

川邊 りえ Rie Kawabe

山形県生まれ
筑波大学卒業

2004年 個展(あかね画廊/東京)
2012年 第80回独立展新人賞受賞(国立新美術館/東京)※以降毎年出展
2013年 第81回独立展奨励賞受賞(国立新美術館/東京)
2015年 3人のアトリエ(REIJINSHA GALLERY/東京)
個展(Gallery Forgotten Dreams/東京)
2017年 個展(銀座かわうそ画廊/東京)
2019年 アルテミス展(Gallery ARK/神奈川)
少女たちの領域(みうらじろうギャラリー/東京)
猫会議2019(REIJINSHA GALLERY/東京)
2020年 猫会議2020(REIJINSHA GALLERY/東京)
鏡と窓(みうらじろうギャラリー/東京)
2021年 猫会議2021(REIJINSHA GALLERY/東京)
第88回独立展TJ賞受賞(国立新美術館/東京)
2022年 猫会議2022(REIJINSHA GALLERY/東京)
他、グループ展多数出展

現在、神奈川県にて制作
独立美術協会準会員

・Facebook https://www.facebook.com/people/川邊-りえ/100004218910531/

展覧会予定
■2022年7月15日(金)〜8月5日(金) 猫会議 2022(REIJINSHA GALLERY/東京)
■2022年10月19日(水)〜10月31日(月) 第89回独立展(国立新美術館/東京)
■2022年10月8日(土)〜10月23日(日) 川邊りえ個展(みうらじろうギャラリー/東京)

・川邊りえの作品ページはこちら(REIJINSHA GALLERY公式サイト)
https://www.reijinshagallery.com/product-category/rie-kawabe/