展覧会

三島喜美代―未来への記憶

会場
練馬区立美術館
会期
5/19(日)~7/7(日)

チケットプレゼント

三島喜美代チラシ(表)
70年にわたる創作の軌跡を通して、
情報とゴミの問題をテーマとしてきた
三島喜美代の作品世界の全貌を明らかにする。

絵画を出発点に、現代美術家としての活動を1950年代にスタートさせた三島喜美代(1932〜)。60年代には新聞や雑誌などの印刷物をコラージュした作品やシルクスクリーンを用いた平面作品を制作していたが、70年代に入ると表現媒体は一転して、シルクスクリーンで印刷物を陶に転写して焼成する立体作品「割れる印刷物」を手掛け、大きな注目を集める。日々発行され、膨大な情報をあふれさせる印刷物と、硬く安定しているかに見えながら、割れやすくもろい陶という素材を組み合わせることで、氾濫する情報に埋没する恐怖感や不安感を表現したのだ。しかし、大量の新聞や雑誌がすぐに消費されてゴミとなるように、情報からゴミへと三島の問題意識も次第に移り、空き缶や段ボールなど身近なゴミを題材に陶で再現した作品、産業廃棄物を高温で処理した溶融スラグを素材とする作品を発表。近年は、自ら集めた鉄くずや廃材を取り込んだ作品制作もおこなっている
。

三島喜美代《Work 17-C》画像

三島喜美代《Work 17-C》 2017年 陶、転写、彩色 ポーラ美術館

写真撮影:中川忠明 写真提供:艸居

 

この展覧会では、70年にわたる三島の創作の軌跡が、主要作品を通して概観される。大量消費社会や情報化社会へ厳しい視線を投げかけつつも、情報やゴミを異化作用を通して造形表現へと転化させる三島。日々の暮らしの中から遊び心をもって自らの作品を生み出してきた。初期のコラージュ作品にはじまり、「割れる印刷物」のオブジェの数々、環境に配慮した素材による近作までが展示される会場のハイライトは、三島の代表作といえる、最大規模のインスタレーション作品《20世紀の記憶》。ぎっしりと床に敷き詰められた大量の耐火レンガ・ブロックから成るこの作品は、各レンガの表面に三島が20世紀の100年間から抜き出した新聞記事が転写され、文字通り20世紀の記憶の断片を視覚化するとともに、その時代に向き合った彼女自身の記憶が刻まれているようだ。三島が作品に刻印した20世紀の記憶を、来たるべき未来への記憶として改めて受け止める機会となるだろう。
三島作品は、国内外の多くの美術館に収蔵されている。また、特に2020年以降には受賞や展覧会が相次ぎ、国内はもとより海外からの評価も近年急上昇している。今回の展覧会は、そうした流れの中での、東京の美術館における初の個展。三島が社会の現実を見つめながら、情報とゴミの問題をテーマに一貫して追い求めてきた作品世界の全貌を明らかにし、その魅力と実像に迫るものだ。

三島喜美代《Untitled》《Untitled》画像

三島喜美代 (手前)《Untitled》 (奥)《Untitled》 1984年 陶、転写 個人蔵

展覧会の見どころ

1. 代表作《20世紀の記憶》をフルスケールで展示
《20世紀の記憶》(1984〜2013年)は、三島の代表作にして最大規模のインスタレーション作品。床に敷き詰められた中古の耐火レンガは1万個を数え、表面には20世紀の100年間の新聞記事が転写されている。その圧倒的なスケールと、戦災とも情報洪水の果てともとれる廃墟のような光景は、言葉を失うほどに衝撃的だ。1984年に制作が開始され、制作過程での部分的展示を経て、2014年にART FACTORY城南島(株式会社東横インが社会貢献活動の一環として提供する芸術・文化振興のための施設)において完成作が披露された。それ以降、同地で常設展示が続けられてきたが、今回、同社の協力によって城南島を初めて離れ、練馬区立美術館でフルスケールによる展観がおこなわれる。

三島喜美代《20世紀の記憶》画像

三島喜美代《20世紀の記憶》(部分) 1984〜2013年 耐火レンガに印刷 個人蔵

写真撮影:小川重雄 写真提供:美術資料センター株式会社


2. 平面から立体へ、「知られざる」絵画作品を一堂に

新聞やチラシ、コミック・ブックなどを陶を用いて立体化する作品を手掛ける作家としてのイメージが定着している三島だが、その出発点が絵画であったことはあまり知られていない。この展覧会では、1950年代の油彩画、1960年代以降の新聞や雑誌などをコラージュした作品、シルクスクリーンの技法を取り入れた作品など、創作活動の初期に取り組んだ平面作品が一堂に紹介される。三島は1970年ごろに陶を使った立体作品へと表現媒体の転換を図るが、初期の平面作品で試みた技法が立体作品のベースとなっており、両タイプの作品が基底においてつながっていることが分かるはずだ。

三島喜美代《覇》画像

三島喜美代《覇》 1960年 油彩、画布 個人蔵


3. 東京の美術館では初の個展

三島は現代美術家として70年にわたるキャリアを誇り、その作品は日本国内はもとより海外の美術館にも広く収蔵されている。しかし、意外なことに、昨年秋の岐阜県現代陶芸美術館における展覧会が美術館における最初の個展であった。今回の展覧会は、東京の美術館で開催される初の三島の個展。初期の油彩画や、新聞、雑誌等をコラージュした前衛的な絵画から、陶にシルクスクリーンで印刷物を転写した多様な立体作品、大型インスタレーション、産業廃棄物を素材に取り込んだ近作まで約90点の作品を通して、これまでの三島の創作活動を振り返るものだ。

三島喜美代《Work 17-POT》画像

三島喜美代《Work 17-POT》 2017年 陶、転写、彩色 個人蔵

関連イベント

「三島喜美代―未来への記憶」展 館長によるスライドトーク
練馬区立美術館の館長が、展覧会の見どころをスライドを使って解説
日時: 5月25日(土)15:00~、6月30日(日)15:00~(各回30分程度)
会場:練馬区立美術館 1階視聴覚室
定員:各回40名
費用:無料 ※観覧券(当日以外の半券でも可)と整理券(当日配布)が必要
整理券は当日14:00より美術館ロビーにて配布開始(1人につき1枚)
整理券はなくなり次第終了

講演会「三島喜美代―その人と作品を巡って」
日時:6月1日(土)15:00 ~(90分程度)
会場:サンライフ練馬研修室
講師:建畠晢(埼玉県立近代美術館館長、草間彌生美術館館長)
定員:70名(要事前申込・抽選)
料金:無料 ※観覧券の半券が必要
申込締切は5月17日(金)必着

美術講座「段ボールで財布を作ろう!」
日時:6月15日(土)【A】11:00~12:30 【B】14:00~15:30
会場:練馬区立美術館 創作室
講師:島津冬樹(段ボールアーティスト)
定員:各回8名(小学生以上/要事前申込・抽選) ※小学3年生以下は保護者同伴
当日は保護者の方に同席していただき、刃物等を扱う際などにはお手伝いをお願いします。
参加費:500円(別途当日の観覧券が必要)
練馬区立美術館公式サイトの申込フォームまたは往復ハガキでの申し込みが必要
申込締切は5月31日(金)必着

アートdeねりまち ワークショップ
「あなただけのさすらいきもの~樹脂粘土で作る小さなキャラクター」

日時:6月23日(日)10:30~15:00
会場:練馬区立美術館 創作室
講師:濱田有美(造形作家)
定員:12名(小学3年生以上/要事前申込・抽選)
参加費:500円(別途当日の観覧券が必要)
練馬区立美術館公式サイトの申込フォームまたは往復ハガキでの申し込みが必要
申込締切は6月7日(金)必着

※申し込み方法など、各イベントの詳細は下記ページを参照してください。
https://www.neribun.or.jp/event/event.cgi

三島喜美代《ヴィーナスの変貌Ⅴ》画像

三島喜美代《ヴィーナスの変貌Ⅴ》 1967年 アクリル絵具、コラージュ、シルクスクリーン、合板 個人蔵

 

[information]
三島喜美代―未来への記憶
・会期 5月19日(日)~7月7日(日)
・会場 練馬区立美術館
・住所 東京都練馬区貫井1-36-16
・時間 10:00~18:00(入館は17:30まで)
・休館日 月曜日
・入館料 一般1,000円、高校・大学生および65~74歳800円、中学生以下および75歳以上無料
障害者(一般)500円、障害者(高校・大学生)400円
※一般以外のチケット購入の際は、証明できるもの(健康保険証・運転免許証・障害者手帳など)を提示してください。
※障害がある方の付き添いでお越しの場合、1名までは障害者料金で観覧できます。
※事前予約制ではありませんので、当日、チケットカウンターでチケットを購入してください。
・TEL 03-3577-1821
・URL https://www.neribun.or.jp/museum.html

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