展覧会

民藝 MINGEI─美は暮らしのなかにある

会場:大阪中之島美術館 会期:7/8(土)〜9/18(月・祝)

チケットプレゼント

(上から)緑黒釉掛分皿 因幡牛ノ戸 1931年頃/流描皿 河井寛次郎 京都 1927-28年頃/藍鉄絵紅茶器 濱田庄司 栃木 1935年頃 いずれも日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa

(上から)緑黒釉掛分皿 因幡牛ノ戸 1931年頃
/流描皿 河井寛次郎 京都 1927-28年頃
/藍鉄絵紅茶器 濱田庄司 栃木 1935年頃 
いずれも日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa

「民衆的工藝」を略した「民藝」という言葉は、約100年前に生まれた。思想家・柳宗悦が説いた、日々の生活のなかある美を慈しみ、素材や作り手に思いを寄せる「民藝」のコンセプトは、今改めて必要とされている。
大阪中之島美術館で開催される「民藝 MINGEI─美は暮らしのなかにある」では、民藝について「衣・食・住」をテーマに紐解き、暮らしで用いられてきた美しい民藝の品々約150件を展示。また、現代に続く民藝の産地を訪ね、そこで働く作り手と、受け継がれている手仕事も紹介される。
さらに、昨夏までセレクトショップBEAMSのディレクターとして長く活躍し、現在の民藝ブームに大きな役割を果たしてきたテリー・エリスと北村恵子(MOGI Folk Art ディレクター)による、現代のライフスタイルと民藝を融合させたインスタレーションも見どころのひとつだ。
この展覧会は、柳が説いた民藝とは何か、“いま”とこれからの“ひろがり”を展望する機会となるだろう。

第Ⅰ章
1941生活展──柳宗悦によるライフスタイル提案

日本民藝館「生活展」会場写真 1941年

日本民藝館「生活展」会場写真 1941年

柳宗悦は自身が東京・目黒に設立した日本民藝館で、1941(昭和16)年に「生活展」を展開。民藝の品々で室内を装飾し、今で言うテーブルコーディネートを展示した。当時、暮らしのなかで民藝を活かす手法を提示したモデルルームのような展示は珍しく、画期的だった。
第Ⅰ章では、実際に出品された作品を中心に「生活展」の再現を試み、柳が説いた暮らしの美が紹介される。

スクロールバック・チャイルズアームチェア イギリス 19世紀 日本民藝館蔵

スクロールバック・チャイルズアームチェア イギリス 19世紀 日本民藝館蔵

1929年に柳宗悦と濱田庄司がイギリスから持ち帰ったウィンザーチェアのひとつ。テーブルと椅子を使う暮らしの伝統がない日本において、柳が優れた椅子として観たのは、イギリスの椅子であった。ウィンザーチェア(Windsor chair)は、18世紀前半までにイギリスで製作され始め、当初は地方の地主階級民の邸宅や食堂などで主に使用されていたが、やがて旅館やオフィス、中流階級の一般家庭にも浸透。日本でも民藝運動の中で高い評価を得、西洋家具の代表として認知されていった。

第Ⅱ章
暮らしのなかの民藝──美しいデザイン

陶磁、染織、木工などあらゆる工芸品のほか、絵画や家具調度など多岐にわたる品々の収集を重ねた柳宗悦。彼はその活動のために、国内のみならず朝鮮半島の各所、中国や欧米などへ旅した。収集品が作られた時代も、古くは縄文時代から、柳らが民藝運動を活発化させた昭和に至るまでと幅広い。とりわけ、同時代に国内各地で作られた手仕事の日常品に着目し、それらを積極的に紹介した。第Ⅱ章では民藝の品々を「衣・食・住」に分類し、それぞれに民藝美を見出した柳の視点を紐解く。

⑩木綿切伏衣 北海道アイヌ 19世紀 静岡市立芹沢銈介美術館蔵

木綿切伏衣 北海道アイヌ 19世紀 静岡市立芹沢銈介美術館蔵

大胆な模様をあしらったアイヌの衣服。模様に不思議な生動感があり、紺、橙、白の配色も鮮やかで、芹沢銈介が収集したアイヌの衣装の中でも、特に印象的である。

スリップウェア角皿 イギリス 18世紀後半‐19世紀後半 日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa

スリップウェア角皿 イギリス 18世紀後半‐19世紀後半 日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa

現代でも人気が高いイギリスのスリップウェアも、民藝同人らが日本に広めたやきもののひとつ。本作は柳旧蔵のスリップウェアの優品で、数多く作られたパイ皿であった。

第Ⅲ章
ひろがる民藝──これまでとこれから

(左から)角酒瓶 小谷眞三 倉敷 1979年/酒瓶 小谷眞三 倉敷 1985年頃/栓付瓶 メキシコ 20世紀中頃 いずれも日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa

(左から)角酒瓶 小谷眞三 倉敷 1979年
/酒瓶 小谷眞三 倉敷 1985年頃
/栓付瓶 メキシコ 20世紀中頃 
いずれも日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa

柳宗悦の没後も民藝運動は広がりを見せた。濱田庄司、芹沢銈介、外村吉之介が1972(昭和47)年に刊行した書籍『世界の民芸』では、欧州各国、南米、アフリカなど世界各国の品々を紹介。各地の気候風土、生活に育まれたプリミティブなデザインは民藝の新たな扉を開いた。

昭和戦後期以降の日本のものづくりは機械での生産が主流となるが、民藝運動により注目を集めた日本各地でも、伝統を失わずに手仕事を続ける産地、失われた手わざの復活を試みる職人、新たな民藝を創作する人々が現れる。

この章では国内5つの産地から、現在まで作られている民藝の品々や、そこで働く人々の“いま”を紹介。さらに、現在の民藝ブームの先駆者ともいえるテリー・エリス/北村恵子MOGI Folk Art ディレクター)の愛蔵品や、世界各地で見つけたフォークアートが“いま”の暮らしに融合した「これからの民藝スタイル」が、インスタレーションによって提案される。

柳宗悦と民藝運動

「民藝運動の父」と呼ばれる思想家・柳宗悦(1889-1961)。東京、麻布生まれ。1910年、雑誌『白樺』の創刊に参加。宗教哲学や西洋美術などに深い関心を持ち、1913年に東京帝国大学哲学科を卒業。その後、朝鮮陶磁、木喰仏の調査研究、収集を進めるなか、無名の職人が作る民衆の日用雑器の美に関心を抱いた。1925年には、その価値を人々に紹介しようと「民藝」という新語を作り、濱田庄司や河井寛次郎ら共鳴する仲間たちと民藝運動を創始する。1936年、日本民藝館を開設し、初代館長に就任。以後ここを拠点に、国内外各地への調査収集の旅、文筆活動や展覧会活動と、活発な運動を展開した。

(上から)竹行李 陸中鳥越 1930年代/刺子足袋 羽前庄内 1940年頃 いずれも日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa

(左上)竹行李 陸中鳥越 1930年代
/(中央)刺子足袋 羽前庄内 1940年頃 
いずれも日本民藝館蔵 Photo: Yuki Ogawa

[information]
民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある
・会期 2023年7月8日(土)〜9月18日(月・祝)
・会場 大阪中之島美術館 4階展示室
・住所 大阪市北区中之島4-3-1
・時間 10:00〜17:00(入場は16:30まで)
・休館日 月曜日 ※ただし7月17日、9月18日は開館
・観覧料 一般1,700円、高大生1,300円、中学生以下無料
※大阪中之島美術館メンバーシップ会員の無料鑑賞/会員割引 対象
※障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)は当日料金の半額(要証明)
・TEL 06-4301-7285 大阪市総合コールセンター(なにわコール) 受付時間 8:00〜21:00(年中無休)
・URL https://mingei-kurashi.exhibit.jp/

【巡回情報】
本展覧会は大阪中之島美術館に続いて福島広島東京富山愛知福岡に巡回予定