アーティスト

山本有彩 インタビュー
──個展「水は此処にある」にむけて

《水の記憶を辿る》画像

《水の記憶を辿る》 岩絵の具、墨、金属泥/絹 40.9×40.9cm

 

REIJINSHA GALLERYでは、11月18日(金)から「山本有彩 水は此処にある」が開催される。
松本隆の作詞活動50周年を記念したトリビュートアルバム『風街に連れてって!』でカバーアートを制作したことも記憶に新しい。その後も彼女は多くの展覧会に出展するなど、目覚ましい活躍を見せている。
百兵衛ONLINE編集部では、そんな山本にインタビューをおこない、個展開催を目前に控えた想いについて尋ねた。

《春の雨》画像

《春の雨》 岩絵の具、墨、金属泥/絹 40.9×31.8cm

個展「水は此処にある」について

展覧会のタイトルに水という言葉を用いた山本。そこにはどんな理由があるのだろうか。

私たち人間や動植物が生きるなかで切っても切り離せない存在である「水」ですが、
当たり前になりがちなその存在について、今一度見つめなおしてみたいと考えました。
私の生まれ育った石川県は海と接する地域が多く、雨の良く降る湿度の高い地域です。
幼いころから雨や川、海の美しさに触れる機会もあれば、
時に見せる、恐ろしい一面も目の当たりにしてきました。

水はさまざまな形で私たちの前に姿を表します。流れ、反射し、渦巻き、循環します。
風に煽られ、熱に触れ蒸気になり、雨となり滴り、冷えれば霜となります。
まるで水そのものにこころがあるかのように感じることがありますが、
それは人間の受け取り方次第であり、いかなる時も水はただそこに在るだけでした。
その淡々とした在り方や、環境に順応し自由に形を変えていく姿に強く惹かれます。
自分のいのちもそのように瑞々しくありたいと思わせてくれる存在です。

そんな「水」といのちの共存する風景などをテーマにした作品を10点程度、展示する予定です。

 

「水」という展覧会のコンセプトが彼女の作風と心地よく共鳴する空間となることが、今から目に浮かぶ。
展示する作品はどのような想いで描いたのだろうか。

水というモチーフを描くにあたって、その透明感やゆらめきなどの描写を大切にしました。
人物と組み合わせて描いているものがほとんどなので、
画面の中で違和感なく共存させるのに苦労しました。

 

そんな作品群を、展示空間ではどのように構成するのだろうか、構想を聞いた。


今回は、「おう」という表装スタイルの横長作品や、縦長で60号程の作品も展示する予定です。
個展でしか出来ない、バリエーション豊かな展示にしたいと考えております。

 

横被とは、本来縦長である掛軸を横に広げたような形状の表装。中国発祥の様式で、壁に直接打ち付けて飾るものだ。独特な表装スタイルであるこの横被を、若手作家である山本が個展という場で選んだことが興味深い。
この作品が展示されている様子をぜひ会場で観ていただきたい。

山本有彩の作品世界

山本作品の魅力といえば、透明感の中に凛とした気品を讃える女性像。
どのようなものから影響を受けているのだろうか。


近代日本画の作家に多く影響を受けています。
特に尊敬しているのは、上村松園や鏑木清方、竹内栖鳳などです。
また、現代のイラストレーターさんやアニメーターさんの作品もよく拝見しており、学ぶことが多いです。

 

日本画の伝統を重んじながらも、同時代の異なる作品ジャンルからも新しい発想を得ること。それが、彼女の作品が多くの人に愛される理由だろう。
さらに山本は、これまで以上に自身の内面にも目を向けているという。心境や描き方の変化についても語った。


もっと、自分が本当にしたい表現や作りたい作品の理想像を見つめなおしたいと考えるようになりました。
一点一点を大切に制作していかなくてはと、強く思います。

《磨りガラス越しの白昼夢》画像

《磨りガラス越しの白昼夢》 岩絵の具、墨、金属泥/絹 33.4×33.4cm
※参考作品

今後の展望について聞くと、山本は次のように答えた。


大きな作品をもっと制作していきたいです。
また、掛軸や和額装などの表装スタイルにも興味があるので挑戦したいと思います。

自身の作風を活かしながら、古典的なスタイルにも着目しているという山本。今後も、彼女の活躍に注目したい。

《ねぐせ》画像

《ねぐせ》 岩絵の具、墨、金属泥/ 絹 22.7×15.8cm

過去の山本有彩インタビュー記事はこちら

[Profile]

山本有彩 Yamamoto Arisa
1992年
石川県生まれ
2015年
金沢美術工芸大学日本画専攻卒業
2017年
金沢美術工芸大学院修士課程絵画専攻日本画コース修了
(中略)
2019年
L’espoirDecad展(銀座スルガ台画廊/東京)
山本冬彦が選ぶ若手作家小品展Ⅴ(枝香庵ギャラリー/東京)
開廊45周年記念展(飯田美術/東京)
むつぼし(アートギャラリー北野/京都)
八丁堀・涼風会展(美岳画廊/東京)
八月に囁く。(KIYOSHI ART SPACE/東京)
個展(Gallery ARK/神奈川)
招き猫作品展(枝香庵ギャラリー/東京)
2020年
個展「薄膜と均衡」(KIYOSHI ART SPACE/東京)
GINZA入札販売会(美岳画廊/東京)
個展「愛のけもの」(REIJINSHA GALLERY/東京)
2人展「金魚空間8周年記念展 星野有紀×山本有彩」(Art Space 金魚空間/台北)
日本画&工芸グループ展(枝香庵ギャラリー/東京)
2021年
2021 New Year愛知県立芸術大学 金沢美術工芸大学 東京藝術大学 出身作家展(香林坊大和/石川)
島﨑良平・山本有彩・堀としかず三人展(枝香庵ギャラリー/東京)
「美人画づくし参」刊行記念展(ぎゃらりい秋華洞/東京)
琳-1990年代生まれの作家たち(東急百貨店渋谷本店/東京)
万華 新世代が描く美人画(KIYOSHI ART SPACE/東京)
30の顔2021(REIJINSHA GALLERY/東京)
個展(Gallery ARK/神奈川)
Fantasy Art Show(Art Space 金魚空間/台北)※‘20年出展
2022年
美の饗宴展(Gallery ARK/神奈川)※‘18年~‘21年出展
個展「山本有彩 台灣首個展〖LIFE〗」(Art Space金魚空間/台北)
フラワー&フィメイル-咲き誇る美-(東武百貨店池袋店/東京)
百美人画展(Bunkamura Box Gallery/東京)※‘20年出展
2人展「心の窓」(銀座スルガ台画廊/東京)
日本のヌード(ぎゃらりい秋華洞/東京)
ART TAICHUNG 2022台中藝術博覽會(台中日月千禧酒店)※‘21年出展
煌きの会-絹に甦る美人画の世界-(東武百貨店池袋店/東京)
花園HANAZONO~麗しの美少女たち~(東武百貨店船橋店/千葉)
アウラ展(Gallery ARK/神奈川)※‘18、‘20年出展
祝-ことほぎ-展(東武百貨店池袋店/東京)※‘20、‘21年出展
個展「水は此処にある」(REIJINSHA GALLERY/東京)
〈受賞歴〉
2014年 第6回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞展審査員推奨(豊橋市美術博物館/愛知)
〈出版物〉
芸術新聞社「美人画づくし参」
松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム「風街に連れてって!」カバー作画
〈奨学生〉
公益財団法人佐藤国際文化育英財団第25回奨学生
公益財団法人芳泉文化財団平成27年度助成研

■山本有彩
オフィシャルサイト https://arisa-yamamoto.com
instagram https://www.instagram.com/ymmt.ars
Twitter https://twitter.com/ymmtarsdoumo
REIJINSHA GALLERY アーティストページ 山本有彩  https://www.reijinshagallery.com/product-category/arisa-yamamoto

山本有彩 水は此処にある

[information]
山本有彩 水は此処にある
・会期 2022年11月18日(金)~12月2日(金)
・会場 REIJINSHA GALLERY
・住所 東京都中央区日本橋本町3-4-6 ニューカワイビル 1F
・電話 03-5255-3030
・時間 12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
・休廊日 日曜、月曜、祝日
・URL https://www.reijinshagallery.com

■展覧会予定
山本有彩・高資婷 二人展
・2022年12月9日(金)〜12月17日(土)
・ぎゃらりい 秋華洞/東京
・TEL 03-3569-3620
・URL https://www.syukado.jp
※詳細は上記URLよりご確認ください。

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