展覧会

生誕100年記念 
ソール・ライターの原点 ニューヨークの色

会場
ヒカリエホール ホールA
会期
7/8(土)〜8/23(水)

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ソール・ライター《無題》 撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation

ソール・ライター《無題》 撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation

“写真は物の見方を教えてくれる、すべてのものが美しいということも。”
──ソール・ライター

50代でキャリアの表舞台から姿を消し、富にも名声にも一切の関心を示さず、淡々と自らの美意識に忠実に生きたソール・ライター(1923-2013)。2006年、世界中の写真ファンを魅了し続けるドイツのシュタイデル社から刊行された初の写真集『Early Color』によって、80代になった彼は再び脚光を浴びる。
2013年にソール・ライターがこの世を去った時点で、その作品の大半は未整理のままだったが、翌年に創設されたソール・ライター財団によって、アーカイブをデータベース化する「スライド・プロジェクト」が着手された。未整理の作品はカラースライドだけでも数万点にのぼり、業績の全貌が明らかになるには、さらに十数年の歳月が必要とも言われている。没後にも関わらず、ソール・ライターは常に新たな発見が続く“発展途上” の作家なのだ。

ソール・ライター《無題》撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation

ソール・ライター《無題》撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation

彼の展覧会を過去2回にわたり開催したBunkamura ザ・ミュージアムは、2023 年4月10日からの休館*に伴い、渋谷ヒカリエ9F・ヒカリエホールで「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」を開催する。
ソール・ライター生誕100年を記念する本展では、新たに発掘された作品による大規模なカラースライド・プロジェクションをはじめ、未公開のモノクロ写真や絵画など最新作品群を含む400点以上の作品が展示される。それらを通して、知られざるソール・ライターの素顔と、「カラー写真のパイオニア」と称され、世界中を魅了し続ける色彩感覚の源泉に迫る。
*オーチャードホールは営業中

NEW YORK 1950s-'60s ニューヨーク 1950ー60年代

ソール・ライター《アンディ・ウォーホル》1952年頃 ©Saul Leiter Foundation

ソール・ライター《アンディ・ウォーホル》1952年頃 ©Saul Leiter Foundation

画家を志したソール・ライターは1946年に、当時、芸術の新たな中心地として抽象表現主義などの芸術の新潮流が次々と生まれたニューヨークへと向かった。彼はこの地で、意欲的な若い芸術家たちと交流し、表現メディアとしての写真の可能性に目覚め、絵筆とともにカメラで自分の世界を追求していくようになる。

本展では、ソール・ライターが写真に取り組みはじめた1950から60年代頃の、モノクロによる未発表のスナップ写真作品群と、当時交流のあったアーティストたちのポートレートを2部構成で紹介する。

SAUL LEITER IN FASHION ソール・ライターとファッション写真

ソール・ライター『ハーパーズ・バザー』1963年2月号のための撮影カット ©Saul Leiter Foundation

ソール・ライター『ハーパーズ・バザー』1963年2月号のための撮影カット
©Saul Leiter Foundation

経済的な問題に直面し、写真の技術を活かして生活の糧を得ることにしたソール・ライター。『ライフ』『エスクァイア』といった雑誌に写真が掲載され、ヘンリー・ウルフが1958年からアートディレクターを務める『ハーパーズ・バザー』誌のカメラマンとしてファッション写真を任されるようになる。

「カラー写真は、宣伝広告やいわゆる深刻ではないもの用・・・・・・・・・である」という当時の偏見を微塵も持つことなく、「仕事」においても自らの美意識を存分に発揮したソール・ライターの世界観とともに、1950年代から60年代にかけての豊穣なアメリカ文化の芳香を感じることができる。

DISCOVERIES IN COLOR カラースライド・プロジェクション

ソール・ライター《無題》撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation

ソール・ライター《無題》撮影年不詳
©Saul Leiter Foundation

20世紀の写真史において、美術作品として扱われたのはもっぱらモノクロ写真で、カラー写真は長らく注目されなかった。その理由は、主に広告や雑誌の撮影に使用されていたこと、プリントの工程が技術的に複雑で経費がかかったこと、プリントの耐久性が脆弱だったことなどが挙げられる。しかしソール・ライターは「なぜ色を軽視するのか、私には理解できない。色は人生における大切な要素であり、その存在は写真においても尊重されるべきだ」と語っている。そして、カメラで日常のスケッチをカラーで描くことに、一片の疑問も抱かなかった。
生前のソール・ライターがプリントの状態で確認したカラー作品はわずか200点余りのみであり、彼にとって、カラー写真はライトボックスの上に置いたり、アトリエ壁面に投影するなど、光を通した状態で見るカラースライドだった。
本展は、カラースライドの複製を多数展示するほか、会場2カ所でのプロジェクションによって、彼のカラー写真を紹介。ソール・ライターの創り出した色彩豊かな世界に鑑賞者を誘い出し、カラー写真の魅力の新たな扉を開く。

COLOR INSPIRATIONS カラーの源泉──画家ソール・ライター 

ソール・ライター《無題》1960年頃 ©Saul Leiter Foundation

ソール・ライター《無題》1960年頃 ©Saul Leiter Foundation

ソール・ライターは「画家の眼を持つ写真家」である。写真家として成功したのちも、彼は生涯絵筆を折ることはなく、隠遁後も日記を綴るように絵を描き続けた。「絵画は創造であり、写真は発見だ」と語った彼にとって、絵画は自らの生きる原動力でもあった。その絵画には、印象派や日本の浮世絵、特にピエール・ボナール、エドゥアール・ヴュイヤールといったナビ派の影響が見られるが、特筆すべきはその色彩感覚。縦横無尽に色と一体化し、遊ぶように描かれた絵画作品は、ソール・ライターが唯一無二のカラー写真の世界を創り上げることが出来た秘密を解き明かす鍵となるだろう。

EAST 10TH STREET つい棲家すみか

2015年に日本で公開されたドキュメンタリー映画「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」でも、その様子がつぶさに紹介されたアパート。ニューヨークのイースト・ヴィレッジにあるこの場所は、ソール・ライターが60年間住み続け、現在ではソール・ライター財団の事務所として使用されている。膨大な作品と資料が現在も息づくアトリエの一部が、ヒカリエホールの空間に再現される。

《ライトボックスを見るソール・ライター》2013年 ©Margit Erb

《ライトボックスを見るソール・ライター》2013年 ©Margit Erb

 

Saul Leiter ソール・ライター
1923年12月3日、ペンシルバニア州ピッツバーグに生まれる。父親はユダヤ教の聖職者。1946年、画家を志し、神学校を中退してニューヨークへ移住。1958年、ヘンリー・ウルフがアートディレクターに就任した『ハーパーズ・バザー』誌でカメラマンとして仕事をはじめる。その後、80年代にかけて『ハーパーズ・バザー』をはじめ多くの雑誌でファッション写真を撮影。1981年、ニューヨーク5番街にあった商業写真用の自分のスタジオを閉鎖。1993年、カラー写真制作のためイルフォードから資金提供を受ける。2006年、ドイツの出版社シュタイデルが初の写真集『Early Color』出版。2008年、パリのアンリ・カルティエ=ブレッソン財団でヨーロッパ初の大規模回顧展開催。2012年、トーマス・リーチ監督によるドキュメンタリー映画「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」製作。2013年11月26日、ニューヨークにて死去。享年89歳。2014年、ソール・ライターの作品を管理する目的でソール・ライター財団創設。2017年「ニューヨークが生んだ伝説 写真家ソール・ライター」展、2020年「永遠のソール・ライター」展をBunkamura ザ・ミュージアムにて開催。

 

「DIG A PICTUREBOOK写真集を掘れ! Vol.005」
高橋周平連載コラムでもソール・ライターについて紹介しています。

[information]
生誕100年記念 ソール・ライターの原点 ニューヨークの色
・会期 2023年7月8日(土)〜8月23日(水)
・会場 渋谷ヒカリエ9階 ヒカリエホール ホールA
・住所 東京都渋谷区渋谷2-21-1
・時間 11:00〜20:00(入場は19:30まで)
・休館日 会期中無休
・入場料 一般1,800円、大学・高校生1,000円、中学・小学生700円
・TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
・URL https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_saulleiter/