コラム

わたしの気になる作家たち
No.10

紙媒体として発行していた雑誌「美術屋・百兵衛」No.50(2019年7月発行)から連載中の若手アーティストについてのコラム。
好評につきWeb版の「美術屋・百兵衛ONLINE」でも連載を継続します(3ヶ月ごとに更新予定)。
サラリーマンコレクターとして知られる「アートソムリエ」の山本冬彦氏が、気になるアーティストを毎回3〜4名ほど紹介します。(編集部)

ー2022年早春、気になる4人のアーティストー

今回は不思議な経歴やちょっとしたきっかけで注目した作家さんを紹介します。

成田淑恵さんは1983年岐阜県生まれ。中学1年の時に絵を描きたくなり、選択授業で油絵を学び始める。その後近くの恵那農業高校に進学・卒業してからも地元の行動美術協会の先生のもとに10年ほど通い行動展に出品。その先生が上野の森美術館大賞展に入賞したこともあり、それを目標に頑張り2016年に上野の森美術館大賞展の優秀賞・ニッポン放送賞を受賞。その後、昭和会展で優秀賞を受賞し尊敬する稲垣孝二さんのいる国画会に参加し、2021年国画賞を受賞。私が彼女の作品を初めて見たのは最近のギャラリーQの個展。「田舎に住んでいるということもあり、テーマは一貫して動物。自然界にたくましくも伸び伸びと生きる動物たちの姿に魅了され、その生命の輝きや温もりを表現してきました。人に感動を与え、死後も輝き続ける作品を描きたいと思っています。」

成田淑恵《彩雲》画像

成田淑恵《彩雲》

 

三谷佳典さんは1987年北海道深川市生れで2011年大阪芸術大学大学院修士課程修了。その前後から毎年日展に出品し、2017年には第1回新日春展・奨励賞受賞、現在は会友。2012年上野の森美術館大賞展・賞候補、2021年第10回菅楯彦大賞展・佳作第三席受賞し各地のデパートでも発表しているなど既にかなりの実績もある作家だ。東京で見る機会がなかったので彼を知ったのは最近見た日展で彼の人物画に強く興味を持ったからだ。「鉱物からつくられる岩絵具を顕微鏡で見ると肉眼では見えない絵具の粒が見える。一つとして同じ形のない粒子、それぞれの形状の美しさは、何か宝石にも似た輝きを放ちその粒の集合体で絵具ができている。そんな自然からの贈物を大切に支持体に乗せる日本画の深い世界に魅了されている。」という彼の小品もぜひ見てみたいと思っている。

三谷佳典《夜の隙間》画像

三谷佳典《夜の隙間》

 

片塩広子さんは東京都出身。早稲田大学出身というのには驚いたが、「美大志望だったのだがまわりの賛同が得られず、早稲田に推薦で入ってしまいましたがやっぱり美術系に行きたくて大学の後半2年間ダブルスクールで通い桑沢デザイン研究所卒。」普段はイラストの仕事をしていて、最近では岩波ジュニア新書「ヨーロッパ史入門」の表紙絵などを手掛けている。そんな彼女は日本画が以前から好きで院展の作家を中心に展示を見ていて自分でも描いてみたくなりカルチャーで習い院展に出品し2020年、2021年と春の院展入選。その作品に注目していたが、ぎゃらりぃ朋さんから声がかかり2021年初個展。「自分が見てみたい景色を描いています。静謐を湛えながらも少し不穏な気配もある作品を描いていきたいです。」という。

片塩広子《蝶々の展翅》画像

片塩広子《蝶々の展翅》

 

岩野雅代さんは1984年大阪府出身。2009年女子美術大学 大学院日本画領域修了。2013年個展(SANBANCHO CAFE/九段下)。2021年個展(栗原画廊/池袋)。この間かなりブランクがあるが、出産・子育てで発表の場が持てず子供向け造形教室アトリエSpicaを主宰していたようだ。実は2013年の九段下での彼女の個展のDMの女性像を記憶していて交信し久しぶりに栗原画廊の個展を見に行った。「学生時代より、女性をモチーフに日本画の技法で制作を行なってきました。私は何かを得ること、そこに存ることよりも、失うこと、そこに無いことに惹かれます。何かを得た時ではなく、失ってしまった時、根源的な記憶が断片として呼び起こされ、存在の美しさや愛おしさに気づくことがあります。女性像や身近な存在を通して、喪失感の先にある美しさを表現することを目指しています。」とのことで、今回は女性像の他にお子さんの絵もあった。

岩野雅代《小さな呪文》画像

岩野雅代《小さな呪文》

 

山本 冬彦
保険会社勤務などのサラリーマン生活を40余年続けた間、趣味として毎週末銀座・京橋界隈のギャラリー巡りをし、その時々の若手作家を購入し続けたサラリーマンコレクター。2012年放送大学学園・理事を最後に退官し現在は銀座に隠居。2010年佐藤美術館で「山本冬彦コレクション展:サラリーマンコレクター30年の軌跡」を開催。著書『週末はギャラリーめぐり』(筑摩新書)。