アートイベント

第8回横浜トリエンナーレ 
「野草:いま、ここで⽣きてる」

会場:横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路 会期:3/15(金)〜6/9(日)

3月15日から第8回横浜トリエンナーレが開催される。横浜トリエンナーレは2001年にスタートした、3年に一度開催される現代アートの祭典。本芸術祭の特徴は、国際的に活躍するアーティスティック・ディレクター(AD)を招き、世界のアーティストたちが今何を考え、どんな作品を作っているのかを広く紹介することだ。今回は全93組のアーティストが出展し、その内日本初出展は31組、新作発表は20組となる。またメイン会場となる横浜美術館は、改修に伴う3年間の長期休館を経て、本展に合わせてリニューアルオープン。コロナ禍明け初の横浜トリエンナーレが、同館にとっては再始動の機会となる。

横浜美術館 撮影:新津保建秀

「野草:いま、ここで生きてる」

テーマは、「野草:いま、ここで生きてる」。「野草」というタイトルは、日本にゆかりの深い中国の小説家、魯迅ろじんの詩集『野草』に由来する。本芸術祭には、野の草のようにもろく無防備で、しかしこうした状況をたくましく生き抜こうとするひとりひとりの姿に目を向けるというメッセージが込められている。環境破壊や戦争、経済格差や不寛容など、多くの問題を抱える私たちの世界。展覧会では、『野草』が刊行された1924年を始点に、今日の息苦しさを生む元となったこの100年のできごとをたどると同時に、今この時代に向き合い、変化をもたらそうとするさまざまな作品が紹介される。世界中から集まったアーティストたちの作品を通して、私たちの生き方を振り返り、制度やシステムの限界を超えて未来を生きる希望を見出すきっかけとなるだろう。

ルンギスワ・グンタ《Ntabamanzi》 2022 Courtesy of the artist and Henry Moore Foundation 
Photo: Rob Harris

「野草」のように生い茂る

北京を拠点として国際的に活躍するアーティストとキュレーターのチーム、リウ・ディン(劉鼎)とキャロル・インホワ・ルー(盧迎華)をADに迎える本年。リニューアルされた横浜美術館など、全5会場で展開される国際展「野草:いま、ここで生きてる」には、93組の多様な国・地域のアーティストが参加する。北極圏の遊牧民、サーミ族の血を引き、人と自然の新たな共生の形を示すヨアル・ナンゴ。トランスジェンダーとして既成概念にとらわれない多様性のあり方を社会に問うピッパ・ガーナー。南アフリカ社会に潜む家父長制や植民地主義と、そこから生まれる不平等をテーマに立体作品を制作するルンギスワ・グンタ。ウクライナのリヴィウで結成され、戦時下の市民生活をリアルに伝えるオープングループ。いずれも日本初出展の注目のアーティストたちだ。展覧会では同時に、横浜美術館の吹き抜けの大空間「グランドギャラリー」に、アーティストや思想家、社会活動家たちがそれぞれの時代、歴史、生活について考えたテキストが収められた『日々を生きるための手引書(Dictionary of Life)』が設置される。多彩なアーティストの作品や、思想家たちのテキストに触れ、視野を広げる機会になることだろう。

オープングループ《Repeat After Me》 2022 (video still) Courtesy of the artists

「野草」のように街で生きる

横浜駅から山手地区におよぶ広いエリアでは、「アートもりもり!」の名称で、「野草」の統一テーマのもと、地域の文化・芸術拠点による多彩な展示やプログラムが展開される。「野草」展とともに、本芸術祭の中心となるイベントだ。
横浜市が推進する、歴史的建造物や倉庫などを文化芸術に活用しながら街を再生していく「創造都市構想」のリーディングプロジェクトであるBankART1929のプログラム、BankART Life7「UrbanNesting:再び都市に棲む」。今回は、「BankART Station」の会場を起点として、みなとみらい21地区、関内地区、ヨコハマポートサイド地区の三つのエリアの日常空間に作品を展開する。さらに多様なガイドによる「ツアー」で、さまざまな視点から都市を再び訪れ直す試みをおこなう。
アートとコミュニティの関係、アジアとの交流をテーマに2008年より開催しているアートフェスティバル、黄金町バザールの「黄金町バザール2024—世界のすべてがアートでできているわけではない」も、「アートもりもり!」の主要プログラム。黄金町に関わりのあるアーティストをはじめ、アジアや横浜、他都市よりアーティストを紹介するだけでなく、黄金町のまちづくりの歴史も振り返る。また、みなとみらい線馬車道コンコースで開催される石内都「絹の夢-silk threaded memories」などのアートプログラムは無料で鑑賞可能だ。(プログラムの内容は公式サイトを確認のこと。)
その他、横浜トリエンナーレを盛り上げる61の「応援プログラム」が横浜市内各所で多彩に展開。乳幼児など参加者全員が会話をしながら楽しく鑑賞できる「おしゃべり鑑賞デー」など、年齢、性別、障がいの有無に関係なく誰もが「野草」のテーマを楽しめるパブリックプログラムも数多く開催される。海と山、新しい街並みと歴史ある街並みなど、さまざまな顔を持つ横浜。この国際都市ならではの散策を楽しみながらアートと対話していただきたい。

SIDE CORE/EVERYDAY HOLIDAY SQUAD 《rode work ver. under city》2023 Courtesy of CCBT

「野草」のようにアートを見る

総合ディレクターの横浜美術館館長、蔵屋美香は、「このたび第8回展を迎えるにあたり、私たちは、強みであるこの『国際性』を大切にしながら、次の10年に横浜トリエンナーレがどうあるべきかを考えました。その結果、当初から掲げる『現代アートの良質の入門編になる』という目標に、いま一度ていねいに立ち返ることにしました」と語っている。街中のさまざまな場所に展示を広げると同時に、リニューアルオープンしてバリアフリーの向上がされた横浜美術館の会場のメリットも生かされる第8回横浜トリエンナーレ。誰にでも開かれたアート作品の鑑賞が、不安な時代を生きる私たちが共に明日を生きる道しるべとなり、「いま、ここで生きていく」支えになることだろう。

ジャオ・イエンニエン/趙延年 《野草》 1978 Photo: Liu Ying, Courtesy of Zhao Yannian's Family

 

[information]
第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」
・会期 3月15日(金)〜6月9日(日)
・休場日 毎週木曜日(4月4日、5月2日、6月6日を除く)
・会場 横浜美術館/旧第一銀行横浜支店/BankART KAIKO/クイーンズスクエア横浜/元町・中華街駅連絡通路
・時間 10:00〜18:00(入場は閉場の30分前まで) ※6月6日(木)〜9日(日)は20:00まで開場
・チケット
①「野草:いま、ここで生きてる」鑑賞券(横浜美術館/旧第一銀行横浜支店/BankART KAIKOの3会場に入場可能)
一般2,300円、横浜市民2,100円、学生(19歳以上)1,200円
②セット券(鑑賞券と「BankART Life7」「黄金町バザール2024」のパスポートのセット)
一般3,300円、横浜市民3,100円、学生(19歳以上)2,000円
③フリーパス(すべての会場に何度でも入場可)
一般5,300円、横浜市民5,100円、学生(19歳以上)3,000円
※18歳以下または高校生以下は無料
※障害者手帳等をお持ちの方とその付添者1名は無料
※フリーパスは横浜美術館で販売。
・TEL 050-5541-8600 (ハローダイヤル9:00〜20:00)
・公式サイト https://www.yokohamatriennale.jp/