ギャラリー

関西ギャラリーめぐり Vol.2 
CANDYBAR Gallery(京都)

会場
CANDYBAR Gallery
会期
4/29(金・祝)〜5/22(日)

 

〈関西ギャラリーめぐり〉の第2回目は、CANDYBAR Gallery(京都・祇園)を訪れた。
祇園という立地でありながら若い世代に人気の現代アートギャラリー、CANDYBAR Gallery。今、この場所が注目を集めているその理由に迫る。

CANDYBAR Gallery画像

アートを身近に感じてもらう

CANDYBAR Galleryは、2018年にスタートした。その特徴的な名前には、「アートを身近なものに感じてほしい」との想いがあるという。
全ての人にアートを楽しんでほしいとの想いを持つCANDYBAR Gallery。その一方で、高価な作品を販売している画廊やギャラリーには敷居の高さを感じてしまうという人も少なくないはずだ。
スニッカーズなどの栄養補助菓子を総称した「CANDYBAR」というギャラリー名は、アートに触れるきっかけの一つとして付けられたもの。気軽に作品を観てもらうことで味わえる感動は、心や生活を豊かにする。つまり「CANDYBAR」には、そのことを実感してもらい、アートに親しみを持ってもらえるようにという想いが込められているのだ。

アートは日常を豊かにする

「身近に感じる」というコンセプトについて、ディレクターの平丸陽子氏にお話を伺うと、
「見ていただけるだけでいいんです」と話した。平丸氏は「実際に作品を観て、体感して感動を味わうというリアルな経験値を高めるための場を作りたい」と語る。
そこにはオーナーの高岩氏が、アート作品を趣味で蒐集したことによって日常が豊かになったことに気が付いたのが大きかったという。

「SNSなどが発展して画像をどこでも見ることができるようになったし、いろいろなことが簡略化できる時代になった。でも、やはり実物を見ることで得られる感動に優る体験はないはず。アートに関しては実際に観るという感動がやはり必要で、そのことは今後も変わらないんじゃないか」と、平丸氏は話す。

そのようにアートを広めるための実践として、CANDYBAR Galleryでは様々な工夫を凝らしている。

ギャラリー空間画像

CANDYBAR Gallery 内装

 

──空間への意識

例えば内装。

「普通、ギャラリーって真っ白な壁だと思うんですけど、うちはややグレーみがかった色なんです」
と、平丸さんは言う。
白い壁は、特にギャラリーや美術館に多く、それらはホワイトキューブと呼ばれている。そうすることで作品をニュートラルな空間で鑑賞できるからだ。
しかしそれが、普段私たちが生活している居住空間とは一線を画した場所であると感じさせてしまう。そこでCANDYBAR Galleryでは、日常の延長線上にアートがあることを伝えるため、一般家庭の壁を意識し、シンプルながらもどこか馴染みのある空間を目指したのだそう。

さらに、ギャラリーのちょうど中心にあたる場所にはテーブルと椅子が配置されており、まるでリビングでくつろいでいるかのような感覚を覚える。
ギャラリーを訪れてから感じていた心地よさは、空間の細部にまで至る、そういった心遣いだったのだと気がつく。

──ギャラリーを飛び出す

日常の中にアートを活かすための取り組みが、「ギャラリーを飛び出す」ということ。
規模の大きい作品を発表したい場合や、ギャラリーよりもふさわしい発表の場がある場合に、CANDYBAR Galleryでは積極的に他の企業、団体などとの共催や特設展示をおこなっている。その中の取り組みの一つには、ホテルの客室に作品を展示し、アートに触れる生活を実際に体験してもらう企画などもあるそうだ。
そうした取り組みは、作品の発表にどの場所が適しているのかを、アーティスト側に立って親身に考えた結果でもある。また、普段はギャラリーを訪れない人もアートに触れるきっかけとなることを願っているという。

「そのほうがアーティストにとっても、お客様にとっても、より良いかたちだと思うんです」と平丸氏は言う。
一般的な概念に囚われることなく、アートを広めようとする柔軟な発想と挑戦を見ることができた。

 

藤本純輝個展「FLOWER GARDEN」

4月29日(金)からは藤本純輝ふじもとあつきの個展が開催される。

藤本純輝は昨年のARTISTS' FAIR KYOTO 2021で優秀賞を受賞するなど、今注目の若手アーティストだ。彼の作品は、支持体を破いたり布を重ねたりして画面を構成するという独特の方法で描かれる。そんな彼に個展への想いを尋ねてみた。

藤本純輝個展DM画像

藤本純輝

私は、普段から花や草木、太陽光や雨など自然の中にあるものをモチーフとした絵画を制作しています。絵具を使って花を描くのではなく、絵具そのものを花にしてしまおうと考え、創造することについて思考を繰り返しています。

絵具という物質を「光が当たれば影が落ちる物体」と捉え画面に配置し、「自然物と同等の気配を持つ存在」として表現しています。また、支持体となる布そのものを染めたり、二重にしたりして光や空気として背景を描いています。布、素材や色、絵具の配置を構成し、画面を構成する要素と向き合うことで、それらがやわらかい光に包まれ、あたたかくやさしい風が吹いてくるような情景を鑑賞者に体感させることを目指しています。今回の個展では「FLOWER GARDEN」と題して、私にとって新しい試みのシリーズを発表します。剥き出しにされた布や奥に重ねた質感の違う布によって画面を構成し、さらにそれらをギャラリー空間で群生することで、花が咲き誇る庭の情景を創出します。
画面内では様々な色味がちらつき、見え隠れすることによって物理的な奥行きが生まれ、素材とイメージの変容を起こしています。

庭の情景はそれら一枚一枚の作品が集まることで完成します。
個々の作品と空間全体とを往き来しながら、「FLOWER GARDEN」を楽しんでいただけたらと思います。

今後はヨーロッパの庭や森、草原など、どこか遠くの自然や文化に触れてみたいです。
近いところにある自然や文化にこれまでは親しんできましたが、新しい経験や感性がまた新たな作品を生み出してくれそうな予感がしています。

CANDYBAR Gallery エントランス画像

CANDYBAR Gallery エントランス

京都・祇園という情緒ある街にあるCANDYBAR Gallery。場所柄か、ここには古美術の愛好家も多く訪れるそうなので、ジャンルに関わらずアートが好きだという方はきっと楽しめる空間である。
現代アートが誰にとっても親しみが持てるものに変化する場所、CANDYBAR Galleryでぜひ素敵な展示を味わっていただきたい。
ふらりと行ってみるのはもちろん、いつかとっておきの逸品を求めにまた訪れたいと感じる場所であった。

■藤本純輝「FLOWER GARDEN」
・会場 CANDYBAR Gallery
・会期 2022年4月29日(金)〜5月22日(日)※5月3日(火・祝)は休廊
・入場料 無料

[information]
CANDYBAR Gallery
・住所 京都市東山区弁財天町19 ygion 2F
・電話 075-531-0617
・時間 水曜〜土曜14:00〜20:00、日曜12:00〜18:00
・定休日 月曜、火曜 ※詳細はCANDYBAR Galleryホームページをご覧ください
・URL https://www.candy-bar.jp