アートイベント

紀南アートウィーク2022 
みかんマンダラ展

会場:和歌山県紀南地域 田辺市内各所 日程:10/6(木)~ 10/16(日)

みかんマンダラ展キービジュアル

みかんとアートの関係性を探ってみよう

和歌山県南部の紀南地域で昨年初めて開催された芸術祭「紀南アートウィーク2021」。これまで日本各地で開催されてきた芸術祭と異なる点が二つある。一つは、行政の予算や補助金に頼らずに事業が民間主導で進められたこと。そしてもう一つが、展示作品の多くが既存のコレクションの中からセレクトされたものであり、紀南の歴史や風土、各会場のストーリーに合う、日本を含むアジアの刺激的なアーティストによる映像だったということだ。

「紀南アートウィーク2021」は成功裏に終わった。しかし、紀南アートウィークの中長期的目標は、芸術祭を起点として素晴らしい歴史文化を有する紀南地域の持続可能な経済の発展、および教育の発展を目指すというもの。そこで今年に入ると、紀南の特産品である「みかん」を主体としたアート・コレクティヴである「みかんコレクティヴ」が一年を通じて紀南にて、リサーチをおこない、展示やプロジェクトの構想を進めてきた。それは例えば、みかんを中心に据えながら、みかん農家、アーティスト、キュレーター、リサーチャー、地域住民といった、異なるバックグラウンドを持つ人々が緩やかに集まっておこなう、みかんに関する調査、ワークショップ、オンライントークセッション(みかんダイアローグ)などだ。

さらに10月6日からの11日間、アート領域の「みかんコレクティヴ」である「みかんマンダラ展」が和歌山県田辺市で開催される。この展覧会は、これまであまり語られてこなかったみかんと、アート・神話・哲学・⼈類学・植物学・デザインなどの他分野との接合点を探るもの。そして、和歌⼭を代表する博物学者である南⽅熊楠がこの熊野の地で⾒出したような宇宙的な広がりを持つ、新たな集合知=マンダラを、現代アーティストと共に表現しようとしているのだ。各展⽰会場には展⽰テーマが設けられ、様々なアーティストによる新作に加え、アウラ現代藝術振興財団のコレクションからアジアを代表する作家の作品が紹介される。

4つのテーマに合わせた展示

ここからは、田辺市内4か所でおこなわれる作品展示について、テーマごとに紹介しよう。

展示会場の写真

【展示会場】左:秋津野ゆい倉庫、中:SOUZOU(旧岩橋邸)、右:愛和荘

◎展示テーマ「実り / 果実を巡る旅」
アーティスト:廣瀬智央
展示場所:秋津野ゆい倉庫
地域の農家の共同出資により作られた農業法人「株式会社 秋津野ゆい」の倉庫が展示会場。みかんの生産や流通に関わる場所で、廣瀬智央による長期アートプロジェクトの提案と「みかんコレクティヴ」の展開を予感させる様々な展示がおこなわれる。

展示作品イメージスケッチ

展示作品イメージスケッチ

◎展示テーマ「菌と共生 / 菌根ネットワーク」
アーティスト:Be Takerng Pattanopas、Piyarat Piyapongwiwat、Tuan Mami、
Quynh Dong、狩野哲郎、廣瀬智央、AWAYA

展示場所:SOUZOU(旧岩橋邸)
南方熊楠が目を向けた菌や植物の生態、また自然と人の共生のあり方に目を向けた作品を、アウラ現代藝術振興財団のコレクションを中心に展示。

Be Takerng Pattanopas 作品画像

Be Takerng Pattanopas《within/without #3》

◎展示テーマ「土と根 / 見えない根を探る」
アーティスト:bacilli、廣瀬智央、Khvay Samnang
展示場所:愛和荘
人間国宝の芹沢銈介など文化人に愛された旅館を新たな文化交流の場へと誘うべく、熊野の自然に想像力を喚起された廣瀬の作品を展示。また、土を多角的に捉える活動を行うアートユニット bacilliによるワークショップの実施と作品展示もおこなわれる。

Bacilli 作品イメージ

Bacilli 作品イメージ

◎展示テーマ「みかん神話」
みかんと神話、根の世界と果実の世界を反転、などをキーワードにVR空間上に体感型のアート作品を制作。2022年6月に川久ミュージアムでおこなわれた展覧会で公開されたβ版の発展による新たなVR空間の体験に加え、展覧会期中の10月9日(日)には空間内でのVR音楽ライブも実施予定。

カンボジアのアートコレクティブ「Sa Sa Art Projects」のメンバーとして今年の「ドクメンタ15」に出展したKhvay Samnangや、現在ミラノと東京を拠点に活動する廣瀬智央など、国際的にも高く評価されているアーティストが多数参加する「みかんマンダラ展」。紀南地域ならではの「みかん」を入口に、多彩な現代アートの世界を体感してほしい。

「みかんマンダラ展」を深掘りするイベント

この展覧会の会期中には多彩な関連企画・イベントも実施される。その中のいくつかをここで紹介しよう。

「みかんマンダラ展 オープニングトーク」
日時:10月6日(木)19:00〜
スピーカー:藪本雄登(紀南アートウィーク実行委員長)
場所:tanabe en+
申し込み:https://peatix.com/event/3364532/

藪本雄登ポートレート

藪本雄登

特別トークセッション 「土と根の記憶 カンボジアと紀南/熊野から」
日時:10月7日(金)18:00〜
スピーカー:Khvay Samnang(現代アーティスト)、石倉敏明(秋田公立美術大学美術学部 准教授、芸術人類学者)
場所:愛和荘
定員:20名
参加費:無料
申し込み:https://peatix.com/event/3363446/

特別トークセッションのスピーカー写真

左:Khvay Samnang、右:石倉敏明

オープニングセレモニー「苗木の旅」(苗贈与式) & トークセッション
日時:10月8日(土)19:00〜
スピーカー:廣瀬智央(アーティスト)、原拓生(紀州原農園 園主)
場所:秋津野ゆい倉庫前
みかんコレクティヴ展のオープニングセレモニーとして、柑橘の苗の譲渡会を実施。みかんの苗木を参加者(=里親)と共に育て、将来的には「コモンズ農園(誰もが利用できるみんなの農園)」としての新しい農地のあり方を考える。

苗木の旅スピーカーの写真

左:廣瀬智央、右:原拓生

絵画ワークショップ 「みなかたる」
日時:10月9日(日)10:00~11:30
アーティスト:杵村直子
場所:SOUZOU(旧岩橋邸)
南方熊楠が残した細密な標本画を手本に、自然物のスケッチと(時には架空の)説明文や注釈を入れる絵画体験。柑橘の汁で濡らし炙った紙を使うことで、時の移ろいも超えたような独自の世界を描き出す。
申し込み:https://peatix.com/event/3361850/
絵画ワークショップ 「みなかたる」バナー
ふたかわ超学校 × 紀南アートウィーク コラボ企画 『太陽の塔』上映会+唐澤太輔氏 特別トーク
日時:10月14日(金)18:00~21:00
場所:tanabe en+
日本に住んでいれば何らかの形で見たことがあるであろう『太陽の塔』。圧倒的な異物感と存在感はいまだに人々の興味を引いて離さない芸術作品である。実は映画内で田辺の有名なあの偉人も岡本太郎と共通点の多い人物として登場。その偉人とは?!
今回は特別ゲストとして映画にも出演した秋田公立美術大学美術学部アーツ&ルーツ専攻ならびに大学院複合芸術研究科准教授である唐澤太輔氏を迎え、『太陽の塔』に関する特別トークも開催される。
申し込み:https://peatix.com/event/3371913/
映画「太陽の塔」ポスター
「紀南アートウィーク」の公式サイト(下記参照)にはさらに多くのイベントやアーティストのプロフィールなどが紹介されている。情報を収集し、じっくり計画を立てた上で、出かけてみてはいかがだろうか。

[information]
紀南アートウィーク2022 みかんマンダラ展
・日程 2022年10月6日(木)~ 10月16日(日) ※11日間
・時間 各展示会場による
 秋津野ゆい倉庫:和歌山県田辺市上秋津4558-8/開館時間8:30〜16:30
 SOUZOU(旧岩橋邸):和歌山県田辺市中屋敷町70/開館時間10:00〜17:00
 愛和荘:和歌山県田辺市古尾28-24/開館時間 10:00〜17:00
 tanabe en+:和歌山県田辺市湊41-1/オープン10:00〜19:00
・会場 和歌山県紀南地域 田辺市内各所 ※複数個所
・入場料 無料 ※一部のワークショップや体験などは有料
・主催 紀南アートウィーク実行委員会
・共催 株式会社南紀白浜エアポート
・構想 みかんコレクティブ
・キュレーション プロダクション・ゾミア
・公式サイト https://kinan-art.jp

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