レビュー

パリで開催された日本美術のショーケース
サロン・ド・アール・ジャポネ 2023

展覧会風景1

この5月8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へと引き下げられた日本。一方、フランスでは感染対策の大幅な緩和が早くから進められており、パリの街などはすでに感染拡大前の状態に戻っているようだ。そんな芸術の都にあるリンダ・ファレル・ギャルリーを舞台に、3月1日から20日までの日程で、今回で6回目となる、現在の日本美術を紹介する展覧会「サロン・ド・アール・ジャポネ」が開催された。

会期前半はちょうどフランスの冬休み(バカンス)にあたり、また政府の年金改正法案に反対するデモが会期中何度もおこなわれたため、スト参加者を除けば街に出る人の数も少なかったようだ。それにもかかわらず、日本美術を愛する多くのファンやコレクターが会場を訪れた。

展覧会風景2

渡航制限等も大幅に緩和されたことから、今回は日本から現地へ渡った出展者も多く、会期ごとに催されたヴェルニサージュで自作の解説がおこなわれるなど、来場者と楽しそうに交流する姿が印象的だった。
六度目の開催ということもあって、来場者からは「過去に見た作家の新作を鑑賞できたのが何よりの収穫だった」「日本の繊細な作品には毎回圧倒される」などの声が上がっていたようだ。

展覧会風景3

この展覧会の総合監修を務めたアラン・バザール氏(画家、世界最古の公募展「ル・サロン」絵画部門代表)は、「作品や技法の多様性、伝統と現代との間を繋ぐ独創性によって、日本のアーティストたちはインスピレーションの源が無尽蔵であることを示した」と述べている。

展覧会風景4

今回も3つの会期それぞれで最優秀賞が選ばれ、さらにそこからグランプリが決定した。以下に受賞作3点を掲載する。
グランプリ受賞作家である佐井章重のインタビューは、5月28日に公開予定。特に注目度の高かったグランプリ作品に関する話などに期待していただきたい。

 

【第1会期最優秀賞・グランプリ受賞作品】
佐井章重 《記憶の畏怖》

佐井章重 《記憶の畏怖》画像

デジタル版画:顔料インク/和紙

【第2会期最優秀賞作品】
髙戸章 《夕焼けに何想う》

髙戸章 《夕焼けに何想う》画像

水彩/紙

【第3会期最優秀賞作品】
sho8nota 《鯨12号-いのちのいろ-》

sho8nota 《鯨12号-いのちのいろ-》画像

岩絵具、顔料、アクリル、油彩、墨、金箔、銀箔、アクリルメディウム、ジェッソ/キャンバス、寒冷紗

今年9月13日から10月2日にかけて、7回目となる「サロン・ド・アール・ジャポネ」が開催される。この展覧会は年に2回、定期的に開催されおり、今後も続いていく予定だ。

日本の今のアートシーンを知ることができると、パリ16区界隈ではその認知度が高まりつつある「サロン・ド・アール・ジャポネ」。この展覧会をきっかけに、日本の多くのアーティストが活躍の場を広げている。次にどのようなアーティストがここから羽ばたいていくのか、非常に興味深いことだ。

[information 今後の開催予定]
■サロン・ド・アール・ジャポネ 2023(秋)
・会期 2023年9月13日(水)〜10月2日(月)
・会場 リンダ・ファレル・ギャルリー(フランス・パリ)
■URL https://www.reijinsha.com/exhibition/2020/03/26/salonlinda-2/